2016 Fiscal Year Research-status Report
緑内障患者の視覚的QOL維持のための形態・機能解析と個別化治療
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15K10835
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福地 健郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90240770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷部 日 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30535167)
栂野 哲哉 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70568550)
松岡 尚気 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70646265)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 緑内障性視神経症 / 光干渉断層計(OCT) / 緑内障性黄斑部障害 / 緑内障性視野障害 / 網膜神経節細胞 / Quality of Life (QOL) / 読書能力・運転能力 / 視線解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
広義原発開放隅角緑内障(原発開放隅角緑内障:POAG、正常眼圧緑内障:NTG)症例を対象として、以下の研究を行い、知見を得た. 1)黄斑部障害の病態・形態と機能の連携、(1)中心10°内視野のクラスタ分類:ハンフリー視野10-2測定点を中心窩閾値との相関によって5つのクラスタに分類.クラスタ1は中心窩閾値と最も相関し、広義POAG眼で矯正視力が維持される症例と低下する症例の視野障害パターンの違いを明らかにした.(2)視力に関連する網膜領域決定と進行判定方法の提案:矯正視力に関連した視野クラスタに相当する網膜の領域を特定し、光干渉断層計(OCT)による網膜内層厚測定を行い、矯正視力低下に先行してこの領域の網膜内層厚が菲薄化することを明らかにした.(3)OCTによる網膜神経線維束像による視野推定:残存網膜神経線維束を検出し、中心10°内視野の推定に有用である可能性について明らかにした.(4)視力低下、中心10°内視野感度低下例に対する治療効果:視野所見(機能)、OCT所見(形態)から視力低下のリスクが高いと考えられる症例に積極的に薬物治療、手術治療の強化を行い、症例によって中心窩閾値、矯正視力を維持、時には改善する症例がみられることを明らかにした. 2)QOL悪化の限界値、QOLスコア化と重症度評価の方法:QOLが維持される視野インデックス(MD値、VFI値など)の限界値を明らかにした.QOLとより関連する視野スコアの方法について高細密両眼重ね会わせ視野とそのスコアを考案し、QOLスコアときわめて良く相関することを明らかにした. 3)読書能力の視線解析による検討:以前、私たちは緑内障症例の読書能力について、読書速度が低下し、視野障害の程度と関連することを報告した.さらにこの研究では視線解析装置を用いることで、緑内障症例では正常被検者に比較して視線停留が生ずることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緑内障眼の黄斑部障害、それと関連した視力、中心10°内視野障害の病態について、形態(網膜、視神経)と機能(視野)の両面から様々な観察研究を進め、いくつかの貴重な研究データを得ることができた.また緑内障治療の目的であるQOL維持という観点からも、重要な意味を持つデータを得ることができた.いずれも今後の緑内障治療と管理を考えていく上で、きわめて重要な問題を提起している.以上のように観察研究としての成果は順調に進展している.ただし、データ整理と論文化がやや遅れている.一方で、治療による進行抑制効果、視力・視野、さらにQOLの維持といったいわゆる治療研究という面でやや遅れている. QOLに関しては、高細密両眼重ね会わせ視野によるスコア化というこれまでにない新しい提案はできたが、それを実用的に経過観察の方法として実践していくのは今後の課題である.また、読書能力に関して、読書速度、視線停留等の問題点を明らかにした一方で、読書能力が低下した症例に対する対策等の研究が遅れている.つまりQOLに関連しても問題点の抽出という観察研究の点で順調なのに対して、その対策といった治療研究の点でやや遅れている.運転能力に関する視線解析は現在準備中である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づいて、以下の研究が進行中、準備中である. 1)緑内障による黄斑部障害について、横断的な病態を理解したのに続いて経時的変化について理解する.緑内障における10°内視野障害について経時的変化について検討する.クラスタ別の進行速度、進行パターン解析は重要である.視野、OCT所見と中心窩閾値、矯正視力の経時的変化に関しての検討も重要である.以上に基づいて、緑内障の重症化を予測する所見、方法を確立する. 2)QOLスコア化と強く関連する視野スコア化を確定、さらに経時変化を捉え、生涯にわたるQOL維持を目的とした緑内障治療のストラタジーを確立する:現在、高細密両眼重ね合わせ視野とそのスコアのPCソフト上への導入を準備中である.以上が可能となることでQOLに強く関連した視野スコアの経時変化解析が可能となり、治療・管理への導入が可能となる.例えば手術前後の眼圧下降効果との関連等、治療効果判定に用いることができる. 3)読書能力・さらに運転能力について、視線解析装置を用いて理解する:視線解析装置を用いた研究を継続する.特に読書に対しては縦書き、横書きの違い、視野障害の領域、程度の関連等、未だ十分に検討されていない問題が山積している.緑内障患者の運転能力と視野障害の関連も、社会的に重要な問題であり、ドライビングテストと視線解析装置を連携して検討の準備中である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額については、当該年度中に執行済み。(支払い日が年度を跨いだため、次年度使用額となった。)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、当該年度中に執行済みのため、翌年度分と合わせた仕様計画は生じない。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] The role of specific visual subfields in collisions with oncoming cars during simulated driving in patients with advanced glaucoma.2017
Author(s)
Kunimatsu-Sanuki S, Iwase A, Araie M, Aoki Y, Hara T, Fukuchi T, Udagawa S, Ohkubo S, Sugiyama K, Matsumoto C, Nakazawa T, Yamaguchi T, Ono H.
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Journal Title
Br J Ophthalmol.
Volume: 101(7)
Pages: 896-901
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] 緑内障診療データの管理と共通化の現状とデータ共通化に向けての取り組み2016
Author(s)
柏木 賢治, 相原 一, 稲谷 大, 岩瀬 愛子, 川瀬 和秀, 杉山 和久, 中澤 徹, 中村 誠, 福地 健郎, 吉冨 健志, 新家 眞
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Journal Title
日本眼科学会雑誌
Volume: 120
Pages: 540-547
Peer Reviewed
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