2016 Fiscal Year Research-status Report
IgG4関連ミクリッツ病の眼症状の検討とウイルス検索による原因究明
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15K10837
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
黒川 徹 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (00324260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 敏規 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50253406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | IgG4関連疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(平成27年度)は新規症例がなかったが、平成28年度は、IgG4関連涙腺炎(以下涙腺炎)が疑い例を含めて2例、IgG4関連肥厚性硬膜炎(以下肥厚性硬膜炎)が1例の計3例の新規症例があった。なお、疑い症例については、現在確定診断のために精査中である。涙腺炎では、研究項目である視力障害、眼球運動障害、涙腺分泌能低下、眼底に異常を認める例はなかった。しかし、1例で眼圧上昇をきたした。肥厚性硬膜炎の1例では、視神経圧迫による視力視野障害をきたし、視神経乳頭も腫脹した。IgG4関連疾患では視機能障害をきたしたり、眼底に異常所見をきたしたりする例のあることが判明した。 涙腺炎の症例では、血清中のムンプスウイルスIgGの抗体価が対照群に比し高い傾向があった。その一方で、ムンプスウイルスIgM,麻疹ウイルスIgG,IgMでは対照群と差はなかった。また、涙液のPCRでは、涙腺炎群と対照群とも、ムンプス、麻疹ウイルスは検出されなかった。しかし、症例数が限られているため、さらに症例を増やして検討する必要がある。 肥厚性硬膜炎の症例は圧迫性視神経症をきたしたが、脳外科的な切除とステロイドの全身投与により、視機能障害が不可逆的にならないうちに治療できたため、視力・視野障害は改善した。この症例を第10回IgG4研究会(平成29年3月、神戸)にて発表した(吉長、黒川他:A case of IgG4-RD leading to compressive optic neuropathy)。また、涙腺炎により涙腺が巨大化し、眼球を高度に圧迫した非常に珍しい1例を英文雑誌に投稿した。 過去のカルテ検索により、眼科的自覚症状がなくとも、涙腺腫脹をきたしている例が相当数存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度は、新規症例が集まったものの、数が少ない。この原因として、数年前までは原因不明の疾患として、信州大学医学部附属病院に紹介される例が多かったが、IgG4関連疾患、および診断基準が周知されるようになったため、症例が地元の病院で精査加療されることが多くなったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の診療記録から、治療前後で涙腺の面積や血液検査データを比較検討する研究は、順調に進んでいる。また、眼科的自覚症状がなくとも、画像上涙腺腫脹がみられる例についても検討が進んでいるため、日本神経眼科学会やIgG4研究会などで発表し、論文を投稿する予定である。前述の肥厚性硬膜炎の症例をA case of IgG4-RD leading to compressive optic neuropathyを、第221回日本神経学会関東・甲信越地方会で共同演者として発表する予定である。 新規症例を継続して集めるが、この2年の経過からは症例が予定より集まらない可能性が高い。従って、過去に消化器内科を受診し、血清を保存してある症例については、その血清から抗体値を測定し、対照群と比較する。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも新規症例が少なかったため、涙液のPCR検査や血清検査が予定よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き新規症例を集めてPCR検査や血清検査を行うと同時に、学会発表や論文執筆の際の英語校正などにH29年度請求額と併せて使用する。
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Research Products
(2 results)