2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10844
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
町田 繁樹 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30285613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 哲也 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40364608)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 緑内障 / 黄斑円孔 / 網膜電図 / 黄斑機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2点に絞ってphotopic negative response (PhNR) についての研究を行った。 1.PhNRの記録の至適条件:一昨年度の研究で、PhNRの記録の際には、刺激部位として黄斑部が最も効率的に機能異常を検出できることが判った。次の刺激条件の検討項目として、刺激と背景光の色に注目して研究を行った。正常者を対象として白色刺激/白色背景光(W/W)と赤色刺激/青色背景光(R/B)を用いて錐体ERGを記録したW/Wでは、i波の前のPhNR1振幅がi波の後ろのPhNR2振幅よりも大きくなった。一方R/Bでは、PhNR2振幅がPhNR1振幅よりも大きくなることがわかった。今後、刺激条件によってPhNR1あるいはPhNR2振幅を選択して測定する必要があると考えられた。 2.黄斑円孔術後の黄斑局所ERGの変化:緑内障と同様に、黄斑円孔手術の際に内境界膜(ILM)剥離を行うとganglion cell complex(GCC)厚が菲薄化する。従って、黄斑円孔術後に緑内障と同様に網膜神経節細胞機能を表すPhNR振幅が低下する可能性が危惧される。さらに、ILMは透明な組織であるため、生体色素(色素)を用いてILMを染色し安全に剥離する必要がある。色素としてはインドシアニングリーン(ICG)、ブリリアントブルーG(BBG)あるいはトリアムシノロンアセトニド(TA、ステロイド)が用いられてきた。術中にいずれかの色素を黄斑部とその周囲に吹きかけてILMを染色する。これらの色素の中には高濃度では網膜細胞を障害するものが含まれており、これらの色素による黄斑部の障害が危惧される。 黄斑円孔術前および術後1, 3, 6, 9ならびに12ヶ月で黄斑局所ERGを記録した。黄斑局所ERGのaおよびb波ならびにPhNR振幅は有意に増大し、ICG、BBGおよびTA群間で有意差は認められなかった。ERG各成分の中でPhNR振幅が最も増大した。従って、黄斑円孔術後に黄斑部の網膜神経節細胞機能が改善することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究によって、刺激条件によってPhNRの計測方法を変更する必要性が明らかとなった。W/WではPhNR1を、R/BではPhNR2の振幅を測定するのが妥当と考えられた。また、黄斑部局所ERGのPhNR振幅は、黄斑疾患の網膜神経節細胞機能回復の指標となることが示された。 今後は、視神経萎縮および緑内障を対象としてW/WとR/Bの有用性の比較を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、W/WとR/BではPhNRの波形が異なり、PhNR振幅を測定する際に注意を要することが分かった。しかし、このデータは正常者に限ったことであり、疾患を対象とした場合にW/WとR/Bの有用性がどのように異なるかについては不明である。そこで今回、様々な原因で発症した視神経萎縮および開放隅角緑内障を対象として、W/WとR/Bの2条件下で錐体ERGを記録する。この際にダイオードを光源とした白色刺激光と白色背景光(W/W)あるいは赤色刺激光と青色背景光を用いる(R/B)。青色と白色背景光、赤色と白色刺激光のそれぞれをphotopically matchしERGを記録する。視神経萎縮眼および緑内障眼からPhNRをそれぞれの条件で記録し、PhNR振幅とSD-OCTで得られた視神経線維層厚と静的量的視野検査のMD値との相関を比較する。背景光および刺激光の強度を測定するためにphotometerを借用し計測する。借用費を物品費として計上した。
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Causes of Carryover |
消耗品やデータ解析ソフトを購入する予定であったが、予算が不足したため次年度に持ち越しました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.網膜電図システムの刺激光および背景光の測光のための手数料 2.コンタクトレンズ電極および皮膚電極等の消耗品 3.データ解析ソフトの購入
以上に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)