2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K10881
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
栗原 俊英 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (50365342)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 低酸素誘導因子 / HIF |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢黄斑変性(AMD)は先進国における55歳以上の主要な失明原因である。しかしその根本的な病態メカニズムはわかっていない。近年、低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor; HIF)が様々な疾患の病態生理に関与していることが明らかにされつつある。そこでAMDの病態形成におけるHIFの役割を解明するために、Cre/Loxp技術を利用しHIFやその制御因子であるVHL(von Hippel Lindau protein)を標的とした成体誘導網膜色素上皮(RPE)細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製し解析を行った。その中で、HIFの異所的な安定は網膜変性を誘導することが明らかとなり、AMDにおける新たな治療標的となることを見出した。 治療法の確立されていないAMDの新規治療法の開発は多くの患者にとって非常に有用なことである。また網膜変性疾患により一度視細胞が障害されてしまうとその視機能は取り戻すことができないため、疾患初期から介入の可能性があるHIF阻害の意義は大きいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りAMDの病態形成におけるHIFの役割を明らかとしつつある。 作製したRPE細胞特異的HIFおよびVHLコンディショナルノックアウトマウスの表現型を解析することで、RPEにおけるHIFの過剰発現が、網膜変性を誘導することを見出した。また、網膜切片の組織学的な検証や代謝変化を検証することにより、HIFの過剰な発現がグルコースや脂質の代謝に影響を与え、その結果網膜変性が引き起こされることを明らかにし、HIFを阻害することによるAMDへの新たな治療の可能性を見出し、論文報告した(Kurihara T, et al. eLife 2016, Kurihara T. Prog Brain Res 2017)。さらに、既知HIF阻害剤であるトポテカンの投与実験を行い、網膜萎縮性変性モデル(Miwa Y, Kurihara T et al. ARVO Annual Meeting 2016)および網膜血管新生性変性モデルに対するその治療的抑制効果を確認した(三輪、栗原ら. 第121回 日本眼科学会総会)。さらに新規HIF阻害剤の開発を目指し天然物や低分子化合物のライブラリーを用いたドラッグスクリーニングを行い、いくつかの候補物質を同定特許出願した(2016年11月14日出願)。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したRPE特異的コンディショナルノックアウトマウスの解析を進めることでAMD病態形成における低酸素応答遺伝子群のさらなる役割の解明を目指す。さらに既知のHIF阻害剤によるモデルマウスへの治療的効果を確認できたため、今後はスクリーニングで得られた新規HIF阻害剤をAMDモデルマウスへ投与しその効果を確認する。
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