2015 Fiscal Year Research-status Report
ラパマイシンによる網膜色素変性症モデルラット網膜の外顆粒層細胞死抑制機構の解明
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15K10883
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
西沢 祐治 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (80252229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 環 中部大学, 生命健康科学部, 助教 (90392018)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 網膜色素変性症 / ラパマイシン / アポトーシス / 小胞体ストレス / オートファジー / ロドプシン / エボジアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では変異ロドプシン発現トランスジェニック動物(TgラットおよびTgウサギ)を利用し、Tg動物の網膜色素変性症発症過程で生ずるアポトーシスによる視細胞死がラパマイシン投与によって抑制される仕組みを解明する。最終的には我々のモデル動物における視細胞の長期機能維持を達成することによって、可能な限り侵襲の少ない網膜色素変性症治療法の確立を目的とする。 目的達成のために初年度は、P347L型変異ロドプシン発現トランスジェニック動物(P347Lラット)網膜に小胞体ストレス関連試薬のラパマイシンを作用させた。ラパマイシンはmTORに作用してタンパク質合成を抑制することが知られている。正常ラット網膜においては、生後9日目で約13層の外顆粒層が出来上がるが、視細胞の外節はまだ出来ていない。その後ロドプシンの合成輸送と共に視細胞の外節が伸長を初め、生後14日目に網膜構造が完成する。P347Lラットの網膜では、生後9日目に正常ラットと同様に外顆粒層が出来上がるが、変異ロドプシンの合成蓄積と共にアポトーシスによる視細胞死が進行して外顆粒層が減少していく。そして生後14日目では2~3層まで減少する。生後9日目のTgラット眼球にラパマイシンを1回投与した群では、生後12日目の外顆粒層の減少を半分に押さえることが出来た。しかし16日目には外顆粒層が2~3層に減少したため、ラパマイシンの効果が一過性であることが判明した。生後8日目と10日目のTgラット眼球にラパマイシンを2回投与した群では、1回投与群と比較して14日目の外顆粒層減少が抑えられたが、16日目以降に同様に外顆粒層は減少した。これらの結果から、ラパマイシンによる変異ロドプシン合成阻害が小胞体ストレス応答が引き起こすアポトーシスの進行を遅らせたことが示唆された。P347L変異ロドプシン特異的モノクローナル抗体の作製は順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画で初年度は、in vivo(トランスジェニック動物)とin vitro(網膜スライス培養系)を用いて、ラパマイシンを含む小胞体ストレス関連試薬を作用させ、網膜色素変性症を発症するP347L型変異ロドプシン発現トランスジェニック動物(P347Lラットおよびウサギ)網膜視細胞の細胞死抑止の仕組みを解析する予定であった。しかしin vitroスライス培養系の構築が遅れたため、in vivoでの複数の小胞体ストレス関連試薬の効果の解析を進めることとした。具体的には、小胞体ストレス関連試薬のエボジアミンの効果について検証した。エボジアミンもmTORに作用するがラパマイシンとは異なりオートファジーを促進することが知られている。エボジアミンの投与実験の結果、エボジアミンでも外顆粒層減少を押さえる効果が得られたため、小胞体ストレス応答における複数の経路が網膜色素変性症を引き起こす要因になっている可能性が示唆され、今後の研究を更に発展させる展望が開けている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の遅れを取り戻すべく、in vitroスライス培養系を確立し、小胞体ストレス関連試薬の効果を検証、視細胞死抑制の仕組みを解析する。 前年度に引き続きTgラットを用い小胞体ストレス関連試薬の検証を続ける。その過程で、杆体視細胞の形態と機能の保存に効果の認められた試薬について、Tgウサギを用いて発展的な解析を行う。ラットの網膜の錐体視細胞は眼球水平断の背側と腹側で密度の違いはあれども、ヒトの中心窩のような密集帯が存在しないため、周囲に杆体視細胞の外節が存在しない環境では錐体視細胞が外節の形態を維持することは難しいと考えられる。この点ウサギ網膜にはvisual streakと呼ばれる錐体視細胞密集帯が存在するため、杆体視細胞の細胞死を抑制することによって、錐体視細胞の構造と機能を維持できると考えられる。我々が開発したTgウサギは正常な網膜構造を持って生まれたのちに網膜色素変性症を発症して視細胞死が生じるため、本研究の網膜色素変性症の抑制と網膜の機能維持の目的に適している。 P347L変異ロドプシンに特異的に反応するモノクローナル抗体作製を進める。現在ハイブリドーマのスクリーニング段階にある。
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Causes of Carryover |
初年度研究計画におけるin vitroスライス培養系の確立が遅れたため、培養に必要なウシ胎仔血清、培養用サプリメント、培養プラスチック器具、液体窒素等の消耗品を購入しなかったためである。スライス培養系の確立が遅れたため、設備備品で購入を計画していたマイクロスライサーについて、本年度は購入を見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画のとおり、in vitroスライス培養系を確立するために、次年度使用額を使用する。その他は研究計画の通り使用する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Malondialdehyde induces autophagy dysfunction and VEGF secretion in the retinal pigment epithelium in age-related macular degeneration.2016
Author(s)
Ye F, Kaneko H, Hayashi Y, Takayama K, Hwang SJ, Nishizawa Y, Kimoto R, Nagasaka Y, Tsunekawa T, Matsuura T, Yasukawa T, Kondo T, Terasaki H.
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Journal Title
Free Radic Biol Med
Volume: 23
Pages: 121-134
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] A Naturally Occurring Canine Model of Autosomal Recessive Congenital Stationary Night Blindness.2015
Author(s)
Mineo Kondo, Gautami Das, Ryoetsu Imai, Evelyn Santana, Tomio Nakashita, Miho Imawaka, Kosuke Ueda, Hirohiko Ohtsuka, Kazuhiko Sakai, Takehiro Aihara, Kumiko Kato, Masahiko Sugimoto, Shinji Ueno, Yuji Nishizawa, Gustavo D. Aguirre, Keiko Miyadera.
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Journal Title
PloS One
Volume: 10
Pages: e0137072
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research