2015 Fiscal Year Research-status Report
FIB/SEMを用いた強角膜線維芽細胞ネットワークの解析と近視病態解明への応用
Project/Area Number |
15K10886
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
平田 憲 久留米大学, 医学部, 准教授 (60295144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 准教授 (00258401)
中村 桂一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (20172398)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 角膜 / 強膜 / 内境界膜 / FIB/SEM |
Outline of Annual Research Achievements |
正常角膜keratocyteおよび強膜fibroblastのFIB/SEMによる観察 マウス(C57BL/6)を用い、ペントバルビタールナトリウムの過量投与により安楽死させ、速やかに眼球を摘出すし、摘出した眼球をhalf Karnovsky固定液で前固定、観察部位を切り出し、フェロシアン化カリウムおよび四酸化オスミウム混合固定液を用いて後固定、さらに酢酸ウラン、Walton’s Lead solutionを用いてブロック染色した。アルコール系列で脱水後、エポン樹脂に包埋し、重合させる。サンプルをトリミングし、準超薄切片にて観察の目的部位を確認し、電子顕微鏡(FIB/SEM)で観察をおこなった。 強膜内の線維芽細胞は、角膜実質と同様、コラゲン線維層間に層状に配列していた。角膜実質に比べ不規則ではあるものの、細胞は平面的に広がっていた。細胞核の周囲以外は細胞質が少なく、複数の紐状の足をのばすように隣接する細胞と連絡が見られた。角膜実質細胞に比べ、同一平面の細胞間の連絡は疎であるが、前後の層の細胞間との連絡は豊富であった。強膜の線維芽細胞は細胞が個々に存在しているのではなく、互いに連絡が見られ、三次元的なネットワークを構築していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FIB/SEMを用いた強膜内fibroblastに関する研究は過去になく、現在までの研究過程で強膜内fibroblastは細胞が個々に存在しているのではなく、互いに連絡が見られ、三次元的なネットワークを構築していることを明らかにした。この結果はこれまでの定説を覆すもので、画期的であると考える。 次年度もさらなるデータの蓄積を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験近視眼の角膜keratocyteおよび強膜fibroblastのFIB/SEM:平成28年度以降は初年度で得られた解析結果を元に、実験近視眼における角膜・強膜の構造変化、とくに細胞間ネットワークの変化について検討を行う。解析項目として、正常組織と近視眼組織のkeratocyte、fibroblastの密度、細胞の容積、細胞間結合の有無と、ネットワークを形成する隣接細胞数、を部位ごとに測定比較する。 実験近視眼の脈絡膜血管構築のFIB/SEMによる解析:実験近視眼では脈絡膜の構造変化も観察される。脈絡膜毛細血管板の血管密度、脈絡膜毛細血管内のfenestraeの密度、異常血管の有無についても検索する。脈絡膜間質、とくにメラノサイトのネットワーク構造についても正常眼と比較検討する。 摘出内境界膜表面の観察:内境界膜(ILM)剥離は、黄斑円孔のみならず、黄斑皺襞、黄斑上膜、黄斑浮腫、黄斑分離の手術治療法として適応が拡大している。ILM剥離によるMuller細胞の損傷の可能性は、透過電顕による組織学的検討と電気生理学的検討により示唆されているが、長期的な術後視機能には影響しないという考えが一般的である。そこでFIB/SEM を用い、黄斑上膜に対する手術時に採取したILMを用い、ILMの網膜側に付着した細胞片を3次元的に定量的観察をおこない、手術時のILM剥離が引き起こすMuller細胞の損傷を形態的に再評価する。摘出したILMをグルタールアルデヒド液にて浸漬固定の後、種々の溶液の順に染色し、脱水後、エポン包埋し、試料を作製する。FIB/SEMを用い、ILMを25x35umの範囲で50nm厚の切削面を1000枚撮影し、3次元再構築像を作製し、ILMおよびILMに付着した細胞片を抽出、計測する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、国内外の本研究に関する学会出張を行わなかったこと、購入予定であったパソコンの購入がOSと画像解析ソフトウェアのバージョンの相性の問題で、延期となったことによる。 電子顕微鏡標本作製試薬は現在研究室内にあるものを使用したため、新規購入を平成27年度に行わなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下に記載したとおり、平成28年度は前年度に購入困難であった機器の購入、試薬の購入、学会出張を平成27年度から引き続き行う予定であり、当初の予定通り使用予定である。 1. 平成27年度購入予定であったパソコンの購入を平成28年度に行う予定である。2. 電子顕微鏡標本作製試薬は、新規購入を予定している。3. 国内外の本研究に関する学会出張を予定している。
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