2017 Fiscal Year Research-status Report
滲出型加齢黄斑変性におけるHTRA1遺伝子に起因する血管新生メカニズムの解析
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15K10887
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
家島 大輔 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (10617137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HTRA1 / 加齢黄斑変性 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
滲出型加齢黄斑変性(Wet-AMD)は、網膜の黄斑に生じる新生血管により中心視野が障害される眼科分野の難治性疾患であるが、その発症メカニズムはいまだ不明な点が多いことから、本研究は、Wet-AMDにおける血管新生メカニズムを明らかにすることを目的としている。 先行研究において、CAG-promoterを用いてHTRA1を全身性に強制発現させたマウスにおいて、網膜にWet-AMDと類似した網膜新生血管が観察されたことから、生体内におけるHTRA1の発現亢進が網膜における血管新生を促進することが予想されている。しかし、このHTRA1の発現亢進と網膜における血管新生の因果関係は分かっていないことから、本研究はHTRA1と血管新生の関係に着目し、HTRA1の発現上昇を起点とした網膜における血管新生のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 HTRA1の機能は、主にTFG-βシグナルの調節因子として知られており、これまでは、このHTRA1のTGF-βシグナル調節作用がVEGFの産生に寄与し、血管新生に影響を及ぼすと考えて解析を行ってきた。しかし、これまでの実験結果より、細胞内やマウス生体内においてHTRA1を強制発現させても、TGF-βシグナルの抑制はみられるものの、VEGFの発現に対しては影響が見られないことから、HTRA1の作用はVEGFを介した血管新生には直接的には寄与していないことを示唆する結果が得られている。現在、これまでの結果を踏まえ、当初想定していたVEGFに対しての直接的な作用とは別の系により網膜での血管新生は生じているものと考え、別の血管新生メカニズムが影響している可能性を考えて実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初に、生体内の血管形成において重要な役割を示すVEGFに着目し、HTRA1とVEGFの関係性を明らかにするための実験を行った。まず、HTRA1の細胞内における動態を調べるため、ヒトHTRA1の発現ベクターを作成し、ヒト胎児腎由来細胞株であるHEK293T細胞に導入し、TGF-βの下流のシグナル分子であるSmad2/3の発現およびリン酸化、細胞内VEGFおよび分泌された細胞外VEGF量を測定した。その結果、Smad2/3のリン酸化は抑制されるものの、VEGFについては細胞内外ともに有意な差はみられなかった。発現させたHTRA1については、細胞外への分泌が確認され、細胞外におけるエラスチンおよびフィブロネクチンの分解が確認された。 また、生体におけるHTRA1が及ぼす影響を調べるため、生後6か月齢のC47BL/6 wild typeマウス、マウスHtrA1をノックアウトした HtrA1(-/-)マウス、全身性にHtrA1を強制発現させたHtrA1-Tgマウスの全眼球を摘出し、眼球中のVEGFを検出した結果、それぞれのVEGF発現量に有意な差は見られなかった。また、これらのマウスを交配させ、E13.5の胎仔を摘出し、それぞれのHtrA1改変マウス由来のマウス胎児繊維芽細胞(MEF)を単離し、MEF由来のVEGF発現量も調べた結果、全眼球の結果同様、VEGFの発現量に有意な差は見られなかった。 以上の結果より、通常の血管新生に見られるVEGFの亢進は見られなかったことから、HTRA1を起点とした血管に新生については、少なくとも初期段階では、当初予想していたVEGFを介す系により生じるのではなく、別のメカニズムにより生じる可能性が示唆されたことから、一部、想定していた仮説を変更し、再度、検証をやり直しているため、現在少し遅れており、前年度末に延長を申請し承認していただいた次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえて、HTRA1を起点とした血管新生のメカニズムについては、直接的にVEGFに対して影響を及ぼすものではなく、別の血管新生関連分子を介してのものである可能性が高いことから、現在、血管関連分子用の抗体アレイkitを用いてHTRA1の発現に対して作用する分子の同定を進めている。現在までに、HTRA1の発現亢進に対して有意に変動する、分子Xを確認しており、この分子を次の候補分子として現在解析を行っている。今後は、in vitro、in vivoの両面からHTRA1に対するこの分子の作用を調べ、網膜における血管新生のメカニズムの一端を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた仮説と異なる実験結果が得られたため、実施を予定していた実験などが一部変更となったことと、物品の購入に際し、メーカーによるキャンペーンなどが行われたため、想定よりも安価に購入できたものがあったことから、278,349円の差額が発生した。現在、想定していた仮説と異なる結果が得られたため、それらを検証するために新たな実験を計画しており、発生した金額についてはそれらの実験に充てることを考えている。また、プロジェクト全体における試薬や消耗品の使用量自体に大きな変更はないため、申請した延長の計画に則って適正に使用する。
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Research Products
(2 results)