2016 Fiscal Year Research-status Report
Chemoimmunotherapyを応用した神経芽腫の新しい細胞治療の開発
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15K10927
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
井上 成一朗 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70431690)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 神経芽腫 / 免疫療法 / chemoimmunotherapy |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにin vitroの実験系でマウス神経芽腫細胞は培養系でdoxorubicinを作用させると細胞死が誘導される腫瘍細胞自身の抗原性が増加し、この死細胞をGM-CSFで骨髄細胞から誘導した抗原提示細胞と混合培養すると、抗原提示細胞が抗腫瘍免疫反応を誘導する能力を示すことをしめした。本年度はこの研究手法をさらに発展させて、生きたマウス神経芽腫細胞を経静脈投与した後、骨髄から誘導した抗原提示細胞を経静脈投与することで、腹腔内臓器(肝、腎臓、副腎、子宮、卵巣)で形成される腫瘍結節の増殖を抑制できることをin vivoで確認した。 さらに同様の手法を発展させて、生きた神経芽腫細胞を経静脈投与したマウスに経腹腔投与で少量のdoxorubicinを投与して神経芽腫細胞の細胞死を誘導し、さらに抗原提示細胞を投与するcombination therapyでは、さらに抗腫瘍免疫効果があることを示した。肝、腎副腎、子宮卵巣で形成される腫瘍結節のサイズ、個数を数値化し客観的データとして比較検討を試みた。これにより、ex vivoで誘導した抗原提示細胞と少量のdoxorubicinの投与が各治療単独に行うことよりもより抗腫瘍効果を発揮する傾向にあることを示した。 さらにこの抗腫瘍作用を効率的に得るためには培養系で腫瘍細胞に細胞死を誘導する抗腫瘍薬(doxorubicin)と経腹膜投与で投与する抗腫瘍薬(doxorubicin)が同一であることが重要であることをin vitroおよびin vivoの両実験系で証明した。しかし、本研究で得られた抗腫瘍効果は部分的であり、投与された活きた神経芽腫細胞による腫瘍結節形成を完全に浴せできるものではなかったため、今後も得られた知見をもとにさらに強い抗腫瘍効果を得るための研究を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた研究成果は国際学会(2016年第24回アジア小児外科学会総会 於:福岡 2016年5月24~26日)口演で採択され、学会発表を行った。さらにこの結果を国際医学論文に投稿し、2019年度中に掲載の見込みとなっている。 本研究では2017年度中に、in vitroで得られた成果をin vivoで確認し、今後の新しい進行神経芽腫の集学的治療施行後再発例(いわゆる難治性信進行神経芽腫)に対する新しい免疫療法の開発の基礎研究となることを目標としてきた。おおむねこの目標に沿った成果が得られており、順調に進展できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、目的となる抗腫瘍免疫反応を誘導する抗原提示細胞を、骨髄細胞をGM-CSFを用いて培養系で誘導してきた。これらの細胞はFACSによる細胞表面抗原の発現解析から、免疫学的に高度に活性化された樹状細胞(DC)であることが予測できた。 一方、骨髄からDCを誘導する生理活性物質としてFlt 3 ligandが知られている。Flt 3 ligandはGM-CSFと異なる前駆細胞からDCを誘導することが知られており、現在も世界でその研究が継続されている。今後我々も、GM-CSFの代わりにFlt 3 ligandを用いて同様の実験を行った際に得られるDCの性質、免疫活性をGM-CSFを用いて得られた細胞と比較しながら、より強い抗腫瘍免疫反応を誘導できる抗原提示細胞の作製を目指す。 同時に、その得られた抗原提示細胞の性質や特性を解析し、DCの基礎免疫学的解析を目指す。 さらに新しい抗原提示細胞を用いて、従来からの抗腫瘍薬との併用によるより安全で効果の高い新しい、従来の集学的治療に免疫療法を組み入れた、進行難治性神経芽腫に対する集学的治療のプロトコールづくりの基礎となるデータの収集を目指してゆく。
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Causes of Carryover |
直接経費のうち本年度支給額は前年度からの繰り越しを含め 1,165,183円、また執行額は、1,135,255円とほぼ予定額を執行した。 差額の29,928円は実験に高頻度に使用するFACS用各種抗体、混合培養用抗体、オリゴDNA(CpG-ODN)などの重要な試薬をより安価に一括購入するには、金額として不十分となってしまうため、繰越金として2019年度の支給研究費とともに執行してより効率よく高価な試薬を購入したいと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
FACS用各種抗体、混合培養用抗体、オリゴDNA(CpG-ODN)等の研究用試薬購入の一部として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)