2016 Fiscal Year Research-status Report
PPP3CBによる神経芽腫進展の分子機構の解明と治療への応用
Project/Area Number |
15K10933
|
Research Institution | 地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館(ライフサイエンス研究所) |
Principal Investigator |
李 元元 地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館(ライフサイエンス研究所), ライフサイエンス研究所, 研究員 (00392259)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川原 章 地方独立行政法人佐賀県医療センター好生館(ライフサイエンス研究所), ライフサイエンス研究所, 理事長 (50117181)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経芽腫 / PPP3CB |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は原発性神経芽腫臨床検体から、Calcineurin の触媒サブユニットであるPPP3CB遺伝子において、恒常活性型突然変異を同定した。これまではPPP3CBがCalcineurinの標的であるNFATおよびAkt経路とMAPK経路を活性化することによって、神経芽腫細胞増殖を促進することを明らかにしていた。一方、我々は、MYCNとβ-Catenin遺伝子のプロモーター領域に、推測上のNFAT結合モチーフが幾つか存在することを見出した。本年度は、PPP3CB によるNFAT signaling制御機構の解明を目的として、NFATの新たな標的遺伝子を探索した。
まず、予測されるNFAT結合モチーフを含むMYCNとβ-Catenin遺伝子のプロモーター領域をそれぞれクローンニングし、ルシフェラーゼレポーターベクターを作製した。ルシフェラーゼレポーターアッセイで解析した結果、イオノマイシンの処理で内在性のNFATを活性化させる場合は、既知のNFAT標的c-Mycと同様に、MYCNとβ-Cateninプロモーター領域の転写活性が上がった。さらに、NFAT2を過剰発現させると、その転写活性はもっと上昇した。次に、PPP3CBのNFAT2転写制御能への影響を調べたところ、野生型PPP3CBの過剰発現はこれらの遺伝子の転写活性に影響が見えなかったが、変異型PPP3CBの過剰発現は三つの遺伝子ともそのプロモーター転写活性が上昇することを明らかにした。そして、Calcineurin 阻害剤CsAを加えると、上昇したc-MycとMYCNのプロモーター転写活性が抑えられた。これらの結果はMYCNとβ-Catenin がNFATの標的遺伝子であることを示し、さらに、恒常活性型PPP3CBがNFATを介してこれらのがん遺伝子の転写を促進することによって、神経芽腫の進展に寄与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、MYCNとβ-CateninがNFATの新規標的遺伝子として同定した。さらに、PPP3CBがNFAT2による既知のNFAT標的遺伝子c-Mycも含む三つの標的遺伝子の転写活性化を促進することを明らかにした。従って、当初の研究目的は達成したと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、PPP3CBがNFATの転写活性化能を促進することと、Akt経路およびMAPK経路を活性化することによって、神経芽腫の進展を促進することを明らかにした。今後はこれまでの研究成果を踏まえ、Calcineurin阻害剤によるPPP3CBシグナリングへの抑制を検討することにより、PPP3CBを標的とした治療法の開発を絞って、研究を推進すると考える。
|
Causes of Carryover |
一部の実験用試薬と実験器具は既存のものを本年度の研究に使用し続けていたので、次年度使用額が生じた。研究の遂行に影響がない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分の助成金と合わせて、Calcineurin阻害剤によるPPP3CBシグナリングへの抑制とその臨床応用を検討する。
|
Research Products
(1 results)