2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロバイオームを用いた遷延性難治性皮膚潰瘍に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
15K10941
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
森 秀樹 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (60325389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中岡 啓喜 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (30172266)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / マイクロバイオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遷延性皮膚潰瘍における病原菌叢をいかにコントロールするかという点に着目し、既存の抗菌物質ではなく、皮膚の常在菌(片利共生生物)と抗菌ペプチド群による相乗効果を用いて、病原菌増殖抑制効果と抗炎症効果の両者を保持した遷延性(難治性)皮膚潰瘍に対する新規局所療法の開発を試みる。本年度は単層表皮細胞と三次元培養皮膚を用いて、皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌が、黄色ブドウ球菌などが惹起する炎症性サイトカインの誘導を抑制することが明らかとなった。これに抗菌ペプチドであるCathelicidinを組み合わせたレシピを作成し、マウスの背部に作成した炎症モデルや創傷遅延モデルに対して塗布実験を行った。また創傷治癒遅延モデルにおいて、破壊または壊死した細胞から流出する核内タンパクであるHMGB1が、他の炎症性サイトカインやDNAまたはRNAなどと結合してさらに炎症性サイトカインを誘導することが明らかとなり、またこのHMGB1由来のABoxが抗HMGB1効果をもつことから、その抗炎症効果により創傷治癒モデルにおける炎症性サイトカインのコントロールを試みている。また、上記の局所療法に加えて過剰な炎症反応を抑制することでさらなる創傷促進モデルの作成を試みている。 今後の研究課題として抗菌ペプタイドと表皮ブドウ球菌由来のLTAとの組み合わせの軟膏のレシピを開発し、その毒性について検討することと、Aboxとの組み合わせで新しい局所治療の開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常人角化細胞を用いた単層培養細胞、三次元培養表皮(Living skin equivalent; LSEにおける創傷遅延効果並びに遅延回復効果の実験を継続した。Toll like receptor 2(TLR2)のLigandである表皮ブドウ球菌死菌、黄色ブドウ球菌死菌、D-アラニン含有LTA、抗菌ペプチドを組み合わせたもので刺激し、反応後の単層培養細胞およびLSEを回収し、凍結標本を作製後、HE染色にて細胞組織形態を観察した。さらに、proinflammatory cytokineであるIL-8, IL-6, IL-1β, TNF-α, IFNβ、IL-33などの免疫組織化学染色を行ったところ、皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌死菌がpoly(I:C)により誘導された炎症性サイトカインを抑制し、さらにLL37との組み合わせにより創傷治癒を促進すると考えられた。 次にマウスモデルにおいて、スコッチテープでマウス背部表皮の角層を除去し、上記刺激物質を塗布する実験でも同様に表皮ブドウ球菌死菌が炎症性サイトカインの誘導を抑制することを確認した。次にマウス背部皮膚に5mmの皮膚潰瘍を作り、そこに黄色ブドウ球菌を添加したのち、遷延治癒改善因子(表皮ブドウ球菌死菌、D-アラニン含有LTA、LPS)を添加した外用剤を作成し、これを塗布、経時的なphenotypeの変化を観察したところ、36時間の時点で表皮ブドウ球菌死菌群に若干の改善がみられた。単層培養細胞より得られたレシピでは単層培養細胞ではll37の濃度は5uMを越えると細胞毒性がみられた)から表皮ブドウ球威筋死菌と抗菌ペプチドを組み合わせた軟膏を作り、相乗的な創傷治癒促進効果が得られるかどうか検証したところ、現時点では明らかなphenotypeの変化は認めていない。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスモデルにおける外用剤の効果を継続検討し、倫理委員会の承認を得たのち、ヒト難治性潰瘍(褥瘡など)に対して使用を試み、効果判定を行う。正常人角化細胞を用いた単層培養細胞及び対してSiRNA(LL-37, hBD-2,3, TLR-2)を導入することにより代替えモデルとして同じ内容の検討を行う。また、予定より実験が進んだ場合は、難治性皮膚潰瘍に対する表皮ブドウ球菌死菌含有あるいはD-アラニン含有LTA含有外用剤の効果による効果判定の前に、この実験を施行し、倫理委員会への承認時の補足的データとする。またHMGB1由来のA-Boxが、抗HMGB1効果をもつことからHMGB1-ABoxを作成して、単層培養細胞、三次元培養皮膚、マウスでの創傷遅延モデルについて創傷治癒遅延抑制効果を検討し、上記軟膏との組み合わせについても検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度購入予定であったノックアウトマウスの都合がつかず購入を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ノックアウトマウスの購入にあてるよてい。
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Research Products
(1 results)