2018 Fiscal Year Research-status Report
大量出血症例に対するフィブリノゲン濃縮製剤投与と輸血量に関する介入研究
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15K10969
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
村田 希吉 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 非常勤講師 (60527175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大友 康裕 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40176946) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 外傷外科 / 出血性ショック / 大量輸血 / フィブリノゲン / 外傷性血液凝固障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
外傷による出血性ショック症例に対し、無作為割付非盲検前向き介入研究試験を行った。救命救急センターに搬送された外傷性大量出血を伴う症例で、初療医が大量輸血プロトコールを導入した20歳以上の男女を対象とした。大量輸血プロトコールとは交差適合試験を省略したO(+)型濃厚赤血球製剤投与を含む緊急大量輸血指針であり、迅速な止血処置に並行して状態の安定が図られるまで赤血球:新鮮凍結血漿:血小板=1:1:1で投与を継続するものである。 本プロトコールが導入された際、初療医は本研究責任者に連絡する。研究責任者は封筒法により、FFPを含む従来輸血かつフィブリノゲン濃縮製剤投与を行う群(介入群)とFFPを含む従来輸血を行う群(対照群)の2群に割り付ける。介入群は従来輸血に加えて患者来院後30分を目処にフィブリノゲン濃縮製剤3gを1回静脈内に投与する。対照群は従来輸血療法を開始する。 平成26年に東京医科歯科大学生命倫理研究センターの承認を受けて開始された本研究は、平成27年より科研費の補助金を受けて研究継続中である。平成30年度までに計23症例が蓄積されてきたが、本年度は登録件数0であった。平成31年度は研究最終年度となるが、引き続き症例蓄積を続けるとともに、本格的な統計解析を進める。本研究開始時に必要症例数は50と試算されており、研究年度内に有意な研究結果をまとめることが困難となる可能性があるものの、蓄積された症例数の範囲内で発信可能なエビデンスをまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画段階では症例登録期間は5年間を予定していた。フィブリノゲン濃縮製剤投与による輸血量の推定効果量を4単位、アウトカムの標準偏差を5.0単位、α値(両側)=0.05、β値=0.02と設定し、サンプルサイズを50と推定した。研究基幹施設となる東京医科歯科大学における対象者は年間約20名と推測して研究を開始したが、対象症例は年々減少しているのが現状である。 また、研究期間内に継続して共同研究機関を募り、各施設での倫理審査を進めたが、同意前に薬剤を投与することの倫理的問題、未承認薬(フィブリノゲン濃縮製剤は先天性無フィブリノゲン血症のみが保険適応であり、外傷に対する投与は未承認となっている)投与の倫理的問題などが新臨床研究法と重なり、研究への新規参入が困難となっていることも影響している。 平成30年度の研究対象患者は東京医科歯科大学において5名であった。いずれも割り付け困難であったり、研究同意が得られなかった等の理由で症例の蓄積には至らなかった。最終年度も大幅な症例の蓄積が困難であることが予想され、最終的な目標症例数の約半数程度で研究を終える可能性が出てきている。 平成31年度は引き続き、症例の蓄積を目指すとともに、これまで集積された23症例に対する統計解析を進め論文にまとめる準備を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度までに得られた症例数は23例であり、サンプルサイズ不十分であるものの現時点で両群間に有意差を認めていない。集積された症例は統計的に妥当な方法で群間比較を行い、外傷患者に対するフィブリノゲン製剤の効果について論文にまとめる。一方、補助金を受けて行ってきた本研究テーマについて、臨床研究に加えて十分なエビデンスを発信するために、並行してビックデータを用いたフィブリノゲン製剤の効果を分析してまとめる方針である。 このもう一方のエビデンスの柱となるビックデータについては、東京医科歯科大学クオリティマネージメントセンターの伏見清秀教授の協力を得て、平成22年4月から平成27年3月までの本邦DPCデータをもとに、外傷患者320万人を対象にフィブリノゲン濃縮製剤の投与の有無で2群に分類し、その効果について分析する予定である。こちらは後ろ向き観察研究となり、エビデンスとしては1段劣るものの、蓄積困難な臨床研究を補完するものとして本研究資金を充てて分析を進める予定である。予備解析の結果ではビックデータを用いた分析においてもフィブリノゲン濃縮製剤投与は外傷患者の予後や輸血量を大きく改善する効果は認められず、はやり本臨床研究の暫定結果を支持するものであった。 以上の通り、本年度は研究最終年度であり、進めてきた臨床研究とビックデータ解析により、研究テーマについて一定の分析結果をまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
フィブリノゲン濃縮製剤は3gで約75000円相当の薬価がかかる。本薬剤は保険適応外製剤であり、介入群に対して使用するフィブリノゲン製剤は本研究費で賄う計画であった。年間10例の症例蓄積があったとすると、介入症例は5症例でフィブリノゲン製剤費用は375000円程度かかり、これを研究費で支出する計画であった。当然ながら症例の蓄積が進まなかった年度においては研究資金が全く使用されずに経過している。 最終年度となる平成31年は臨床研究に加えてビックデータ解析も並行して行うため、これに必要なコンピューターと統計解析ソフトの購入、またエビデンス発信のための学会渡航費に研究資金を使用する計画である。
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