2015 Fiscal Year Research-status Report
炎症性疾患におけるエピジェネティクス制御機構の解明と臨床応用
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15K10987
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
関亦 正幸 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80250190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊関 憲 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70332921)
関亦 明子 山形大学, 医学部, 准教授 (50321823)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 炎症制御 / サイトカイン / 遺伝子発現 / クロマチン構造 / エピジェネティクス / エピゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症などの炎症性疾患は、ヘルパーT細胞による過剰なサイトカイン産生が原因で発症するが、有効な治療法は確立していない。本研究は、サイトカイン遺伝子の発現調節に関わるエピゲノム状態(特に、高次クロマチン構造)を人為編集することで、サイトカイン産生を適切に制御する安全で効率的な炎症制御法の創成を目指している。サイトカイン遺伝子の発現は、プロモーターとエンハンサーなどのシス調節領域との相互作用により形成される高次クロマチン構造により調節されている。そこで、本研究では、インターフェロン(IFN-γ)-IL-22遺伝子座に着目した。この遺伝子座には、IFN-γの他に炎症性サイトカインとしてインターロイキン(IL-22)が存在している。これらのサイトカインを産生するT細胞は本来異なっており、2遺伝子同時に発現することがないよう厳密な制御を受けている。しかし、多くの自己免疫疾患ではIFN-γとIL-22の同時発現が見られ、これが炎症発症の一因と考えられている。そこで、本年度は発現調節に関与する未知エンハンサーの同定を進めた。これまでの申請者の研究からは、局所的に働くIFN-γ特異的なエンハンサーはいくつか同定済みでその機能解析も進んでいる。しかし、IFN-γ-IL-22遺伝子座全体を制御するシス調節領域については、炎症制御において重要視されているにもかかわらず、世界でもまだ解析が進んでいなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々を含めた多くの研究者の解析から、サイトカイン遺伝子の発現は、プロモーターとエンハンサーなどのシス調節領域との相互作用により形成される細胞分化特異的高次クロマチン構造により調節されていることが判明している。本年度は、IFN-γ-IL-22遺伝子座に含まれる2つのサイトカイン(IL-22とIFN-γ)の発現開始時、発現調節に必要な高次クロマチン構造の形成に関与する未知エンハンサーの同定を進めた。網羅的スクリーニングを可能にするために、次世代シークエンサーを用いた新規スクリーニング法(STARR-seq法)導入し、この技法を駆使することで、IL-22遺伝子上流32kbに新規エンハンサーを同定することができた。転写活性を測定できるレポーターアッセイの結果、同定した新規エンハンサーは、IL-22とIFN-γの両者の転写活性をT細胞特異的に増強できた。しかし、興味深いことに、IL-22近傍のハウスキーピング遺伝子Mdm1の転写には全く影響を及ぼさなかった。以上から、新規エンハンサーは炎症の原因となる2遺伝子発現調節エンハンサーの可能性が示唆された。本年度は、興味深いゲノム上のエンハンサーを同定できたことから、おおむね目標に向けて着実に一歩を踏む出せたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、サイトカイン遺伝子の発現調節に関わるエピゲノム状態(特に、高次クロマチン構造)を人為編集することで、サイトカイン産生を適切に制御する安全で効率的な炎症制御法の創成することにある。目標遂行のため、次年度以降は同定した新規エンハンサーがどのような転写因子や非コードRNA(lncRNA)の働きで、発現に必要な高次クロマチン構造を形成できるのか分子機構の解明を進める。解明後は、この高次クロマチン構造を分子標的としたエピゲノム編集法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究を遂行するにあたり、実際にマウスから脾臓組織を分取して、試験管内でT細胞の分化誘導行い、サイトカインの発現解析を行う必要がある。そのために、本学動物実験施設でマウスの購入、維持、繁殖が必須となる。本年度、分子生物学的解析を進めるのと平行して、マウスを用いた解析も行う予定であったが、実際はこの動物実験計画に遅れを生じてしまった。このマウス購入維持のための分が年度繰越金となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、未知エンハンサーの単離同定を行った。次年度においては、さらに、詳細に高次クロマチン構造のエピゲノム解析を、実際にマウスを用いた動物実験で行う予定である。年度開始時にマウスを購入し、動物実験の準備をすぐに進める予定である。
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