2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト口腔粘膜常在微生物に応答する粘膜免疫の全身的制御機構の解明
Project/Area Number |
15K11033
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
長 環 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (90131870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲井 哲一朗 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00264044)
田中 芳彦 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (00398083)
成田 由香 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50758050)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粘膜感染症 / カンジダ常在マウス / 口腔カンジダ症マウス / 樹状細胞 / T細胞 / IL-17 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘膜は外界に露出しているため多くの病原微生物の侵入経路となりますが、一方で常在微生物叢が存在し、そのことは宿主の免疫機構に寛容という特殊性を付与していると考えられています。すなわち常在微生物と宿主は、免疫学的に絶妙なバランスをとって正常(寛容)を保っていますが、このバランスの崩壊は常在菌による感染症を引き起こすことがあります。カンジダはヒトの口腔に常在する真菌ですが、宿主の生体防御能の低下や化学療法薬の長期使用により異常増殖を示し、口腔カンジダ症を誘発します。本研究の目的は、ヒトの口腔常在菌による正常の破綻と感染症発症機序を免疫学的に解明することです。マウスはカンジダを常在していないため、先ずカンジダを常在するマウスを作成します。さらに口腔カンジダ症モデルマウスを作成し粘膜感染症の発症機序を解明することで、新しい診断法や治療法の開発基盤を確立することを目指しています。 今年度の研究計画:1)昨年度展開したカンジダの全菌体抽出液、可溶性画分、不溶性画分、細胞壁画分と網羅的に分画した中から、もっとも抗原性の強い画分について、逆相高速液体クロマトグラフィーカラム、二次元SDS-PAGE、プロテオミクス解析を行い、候補タンパクを探索します。2)免疫抑制剤や抗菌薬などの薬剤を用いないで、カンジダ常在モデルマウス、口腔カンジダ症モデルマウスを確立します。 今年度の実績:1)プロテオミクスの解析結果からmas-score 300以上の7つの遺伝子について、コードするタンパク質を大腸菌で発現し、タンパク質の単離精製を行いました。2)カンジダの胃ゾンデ投与によりカンジダがマウスの腸管に1週間以内の常在をすることを糞の培養で確認しました。また、免疫抑制剤や抗生物質を用いないで口腔カンジダ症モデルマウスを確立しました。 以上の報告のように、今年度の研究計画はほぼ達成されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンジダ抗原の探索に関する進捗状況:1)不溶性画分から抽出したサンプルを、逆相高速液体クロマトグラフィーカラム(RP-HPLC)を用いさらに6分画に分けました。もっとも抗原性の強い1画分およびその前後の画分をそれぞれ濃縮し、二次元SDS-PAGEのサンプルとしました。2)二次元SDS-PAGEで得られたスポットからゲルを切り出し、プロテオミクス解析のサンプルとしました。3)スポットの解析により得られた有効遺伝子数418のうち、mas scoreが150以上のものは、15遺伝子でした。そのうちmas score 300以上のものは7遺伝子でした。4)前述の7遺伝子に関してカンジダゲノムから遺伝子の切り出しを行い、大腸菌を用いてタンパク質発現を確認しました。さらにこれらタンパク質の単離・精製を行いました。 舌カンジダ症モデルマウスの系確立:1)マウスはヒトと異なりカンジダを常在していないことが報告されています。本研究においても使用する全てのマウスの糞中に、カンジダが検出されないことを必ず確認しています。胃ゾンデ法による菌接種を行い、糞中のカンジダ菌数で評価しました。その結果、腸管には3日から1週間以内で一時的常在を示しました。2)本研究の中心をなす細胞がT細胞であるため、モデルマウス作成において可能な限り免疫抑制剤の使用を避けるために、免疫抑制剤および抗生物質の投与を全く行わず、舌カンジダ症を発症するマウス作成を検討しました。疾患の確認は、目視による舌表面の白苔形成、切除舌からの付着カンジダ菌数、および組織標本のHE及びPAS染色で評価しました。その結果、舌にカンジダを塗布して3日後に舌カンジダ症の病態を確認することができました。 以上、当初の計画におおむね準じて研究は進見ました。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではカンジダの新規抗原タンパク質を用いて次の実験を進めます。 1)新規抗原タンパク質の有効性をin vivoで確認するために、マウス実験を行います。候補タンパク質を用いて、樹状細胞へのパルス条件を確立します。次にパルスした樹状細胞を移入したマウスを用いて口腔カンジダ症を誘導し、発症の程度を評価することで候補タンパク質が有効な抗原であるかを解析します。これらの実験により全身的免疫応答が行われていることを確認します。 2)カンジダ感染マウスのT細胞を回収し、Th17細胞に分化したT細胞からRNAを抽出します。次に網羅的遺伝子発現を調べるために、マイクロアレイ法による解析を行います。 以上の実験を行い、粘膜に常在する真菌が宿主に対してどのような抗原性を示し、その結果どのような免疫応答機構を惹起し、感染症発症へと進行するのかを全身的観点から考察します。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当該年度に計画していた動物実験の一部が次年度に移行したため、予算の一部を次年度使用としました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度はこれまでに解析してきた新規候補タンパク抗原の有効性をin vivoで証明することを目指します。
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Research Products
(8 results)