2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔がん幹細胞を制御する網羅的遺伝子発現調節機構の解明
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15K11064
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安田 元昭 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (90239765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非翻訳領域 / AU rich element |
Outline of Annual Research Achievements |
一群の転写因子やサイトカインのmRNA の3’非翻訳領域(UTR)にはAU-richelement(ARE)と呼ばれる配列が存在し, これらのmRNA(ARE mRNA)の半減期は極端に短い. ELAVL1 はARE mRNA を特異的に安定化させ, その細胞質局在が悪性腫瘍症例の予後と相関することが報告されている. 今回, 神経特異的に発現するとされるELAVL2 に注目し, 口腔扁平上皮がんの分化度との関連性を検討した.Real Time PCR 法により, 低分化型口腔扁平上皮がん細胞株SAS のELAVL2 mRNA 発現量は高分化型口腔扁平上皮がん細胞株HSC2 に比較して圧倒的に高いことが示された. HSC2 ではELAVL1 が核局在性を示したが, SAS では細胞質への移行がみられた. 免疫沈降法により細胞質中のELAVL1 がELAVL2 と結合していることが確認された. さらに, ELAVL2 を強制発現したHSC2 ELAVL2 では, ARE 配列を有する遺伝子の発現亢進が認められ, 中でも幹細胞性の制御に関わり3’UTR にARE を有するLin28B はELAVL2 の強制発現により発現が上昇していた.ヌードマウスに移植したHSC2 ELAVL2 では, 角化傾向の低い腫瘍胞巣が多数認められ, ELAVL2 が口腔扁平上皮癌の分化に大きな役割を果たしている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度計画1.「がん幹細胞(様)細胞からの候補遺伝子検索」:マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイリングを行い、候補遺伝子の絞り込みを行った。研究実績の概要に示したごとく、低分化型口腔扁平上皮がん細胞株SAS のELAVL2 mRNA 発現量は高分化型口腔扁平上皮がん細胞株HSC2 に比較して圧倒的に高いことが示された. 平成27年度計画2.「候補遺伝子の生物学的活性の確認」:ルシフェラーゼレポーターとELAVL2を細胞に導入しルシフェラーゼ活性を定量的に解析した結果、ELAVL2 を強制発現したHSC2 ELAVL2 では, HIF 1a ARE 配列を有するluciferase reporter発現亢進が認められた。 以上のごとく実験は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、転移巣形成に最も重要な役割を演じている転写因子HIF-1αの発現調節において、酸素濃度非依存的な活性化経路を発見し、この経路が高転移性株でより顕在化していることを見出した。HIF-1αの酸素濃度非依存的発現調節は、5’非翻訳領域(5’UTR)依存性の翻訳活性化機構と、3’UTR依存性の翻訳抑制機構による二重支配により構成されていた。一方これまで3’UTR依存性の翻訳抑制機構を担うと報告されてきたELAVL1はむしろHIF-1αの翻訳効率を低下させることが示され、従来考えられてきた調節機構はより複雑なものであることが示唆された。ELAVL2はARE配列に結合する能力があり、このような領域においてオリゴマーを形成して翻訳制御の一翼を担っているのに間違いはないが、本タンパク質を核外輸送するパートナータンパク質の存在が示唆された。今後の研究では、パートナータンパク質のクローニングを課題としたいと考えている。
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Causes of Carryover |
分子生物学的実験を行うに際して、実験プロトコールの再検討などにより、試薬類の使用量を予定していた使用量をよりも少なくすることができたため、使用金額が計画していた額よりも若干低額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新プロトコールをさらにブラッシュアップし、次年度の実験スケールを再検討し、より効率的な実験を行っていく予定である。
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