2016 Fiscal Year Research-status Report
緑茶カテキンの抗活性酸素作用によるシェーグレン症候群の新治療法創出についての検討
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15K11067
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 恵一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00178477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 士朗 東北大学, 大学病院, 講師 (80230069)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シェーグレン症候群 / 緑茶カテキン / 唾液分泌 / HMGB1 / RAGE / NF-κB |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は昨年度、シェーグレン症候群のモデルマウスMRL/lprマウスに緑茶カテキン(EGCG)を投与したところ、唾液分泌促進に関与するaquaporin 5 (AQP5)の発現が、線細胞のapical membraneにおいて、非投与マウスに比べ有意に増大したことを認めた。また、AQP5のgene promoterに結合して、その発現を阻害する活性型NF-κB(p-p65)については、非投与マウスに比べ有意に発現が減少していた。EGCGには抗活性酸素作用があり、自己免疫唾液腺炎組織内で活性酸素(ROS)の生成を抑制し、NF-κBの活性化を減弱させたと考えられる。その結果、AQP5に対するNF-κBの阻害作用が弱まり、AQP5の発現を増大させたと推測された。本年度は、この結果をさらに発展させる形で、NF-κBの活性化を促進するhigh-mobility group box-1 (HMGB1) とそのreceptorであるreceptor for advanced glycation end products (RAGE) の発現に対するEGCG投与の影響を調べた。HMGB1は,それ自身がNADPH oxidaseを活性化してROSの生成を増大させる一方,HMGB1がROSにより活性化されるという、正の反応サイクルが働いている。また、HMGB1は、NF-κBを活性化させ、またRAGEの発現を増加させる。さらに、シェーグレン症候群の患者の血清や小唾液腺組織においてHMGB1の発現の増大を認めている。今回EGCG投与マウスと非投与マウスの顎下腺組織においてHMGB1とRAGEの発現を免疫組織化学的に調べ評価したところ、両者ともにEGCG投与マウスにおいて、その発現が減弱していた。したがって、EGCGの抗活性酸化作用が、HMGB1とRAGEの発現の減少に関与しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記述したとおり、この研究の所期の目的である、唾液分泌促進に関与するaquaporin 5 (AQP5) の線細胞apical membraneでの発現に対する緑茶カテキン投与の有効性に関して調べたところ、EGCG投与マウスの顎下腺においてAQP5の発現の有意な増大が認められた。さらに、AQP5の発現を阻害するNF-κBの発現が、EGCG投与マウスの顎下腺組織で有意に抑制されることを見出した。これらの研究成果を踏まえて、今年度の研究では、NF-κB活性化因子であるhigh-mobility group box-1 (HMGB1) とそのreceptorであるreceptor for advanced glycation end products (RAGE)に関しても、EGCGの抑制効果を確認することができたため、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたデータに基づいて、EGCGの抗活性酸素作用によるAQP5の発現増大作用について、さらに研究を進めていきたいと考えている。今回の研究では、EGCGによるHMGB1の発現の抑制効果が認められたが、Toll-like receptor(TLR)のシグナル伝達経路にHMGB1が関連しており、特にTLR-4、TLR7、TLR9のシグナル経路は、NF-κBの活性化を促進することが知られている。そこで、今後はinnate immunityに対するEGCG投与の影響に関して研究を展開することを考えている。
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