2015 Fiscal Year Research-status Report
感染マクロファージの脂肪代謝の解析を軸にした歯周病と肥満に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
15K11083
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
沖永 敏則 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (60582773)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マクロファージ / 不飽和脂肪酸 / インフラマソーム / 歯周病細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品化学の分野では、飽和脂肪酸を含む遊離脂肪酸は、全身のインスリン抵抗性、糖脂質代謝や肥満を悪化させ、炎症のみならず動脈硬化などの心血管疾患リスクを増加させる。一方、不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸の惹起する炎症誘導を抑制することが明らかにされている。今回の研究では、脂肪酸が、歯周病細菌感染マクロファージが誘導するインフラマソーム複合体形成、ならびにピロプトーシス(細胞死)の発現におよぼす影響を分子レベルで解析することを目的としている。 平成27年度では、研究計画として①脂肪酸が誘導するインフラマソーム複合体の解析と受容体発現の検証、②歯周病細菌感染マクロファージにおいて脂肪酸が誘導するシグナル解析を行った。通法に従い、歯周病細菌Aggregatibacter actinomycetemcomitans Y4株を用い、ヒトマクロファージU937およびTHP-1細胞に侵入実験を行った。オメガ3脂肪酸としてDHAを用いた。遺伝子発現解析はReal-Time RT-PCR解析、タンパク発現はウェスタンブロッティング解析およびELISAを行った。U937およびTHP-1細胞をDHAで刺激したところ、歯周病細菌が誘導する炎症性サイトカインIL-1βの遺伝子およびタンパク発現が著しく抑制された。PMA前処理により、U937およびTHP-1細胞にてエンドサイトーシス関連因子クラスリンの発現が誘導される。興味深いことに、歯周病細菌侵入U937およびTHP-1細胞において、DHA処理はクラスリンの発現を抑制した。さらに、エンドサイトーシス阻害剤により、歯周病細菌誘導のIL-1βの遺伝子およびタンパクの発現が抑制された。 以上の結果から、マクロファージにおいて、DHAは、クラスリン発現抑制を介して、歯周病細菌が誘導するIL-1β発現を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、in vitroの実験系で、歯周病細菌侵入マクロファージモデルを使用した。脂肪酸のうち不飽和脂肪酸ω-3脂肪酸により、歯周病細菌がマクロファージに誘導するインフラマソーム活性が抑制されることについて、遺伝子発現およびタンパク発現レベルで検証することが出来た。しかし、現在、ヒトの単球系細胞をマクロファージ様細胞に分化させて使用しており、分化後のマクロファージに関してM1/M2分化の度合いが不透明な部分が多い。今後は、M1/M2マクロファージ分化レベルにおけるDHAの影響を視野に入れながらも、インフラマソーム活性に関わるω-3脂肪酸の影響に関して検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
M1/M2マクロファージ分化誘導に伴うインフラマソーム関連因子の検証について行う。まず、炎症性サイトカインにより分化誘導したマクロファージにて、M1およびM2マクロファージ様フェノタイプの有無を検証する。検証には、遺伝工学ならびに分子生物学的手法が必要になる。表面抗原に関してはフローサイトメータ、および免疫蛍光染色も使用する。その後、歯周病細菌感染に対して示すシグナル動態に関して検証していく。ターゲットは、インフラマソーム複合体関連因子である。懸念材料として、脂肪酸認識受容体に関しては、多くの知見が得られている。同定困難な場合は、それぞれ受容体欠失細胞を作製し、インフラマソーム複合体に至るシグナル分子の解析により同定を行う。インフラマソームは、多くの関連遺伝子が複雑に関連しているため、マイクロアレイなどより網羅的な分析を行う。
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Research Products
(3 results)