2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11084
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
片岡 嗣雄 昭和大学, 歯学部, 助教 (60451390)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 常在細菌叢 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、食物アレルギーモデルマウスの糞便から単離、同定した菌種の病原性を、培養細胞を用いた実験で明らかにした。昨年度に作製した食物アレルギーモデルマウス群ならびにコントロールマウス群の糞便から単離したCitrobacter属、Enterococcus属およびLactobacillus属の生菌でマウス細胞株(NIH-3T3、colon26、RAW264.7)を刺激して、それらの細胞におけるサイトカインの発現をリアルタイムPCR法で評価した。その結果、いずれの細胞株においても、Citrobacter属で刺激すると他の菌種で刺激したときよりもIL-33の発現が有意に高かった。昨年度の本研究において、Citrobacter属は食物アレルギーモデルマウスの糞便中で顕著に増加していた菌種であるという結果が得られている。また、IL-33が食物アレルギーの発症に関与するサイトカインであることは既に報告されている(Int. Immunol. 26, 539-549,2014)。これらのことから、食物アレルギーによって腸内で増殖したCitrobacter属が、腸内でIL-33の産生を促進することで、食物アレルギーの症状を増悪させている可能性が示唆された。以上の結果は、2016年8月に開催された第58回歯科基礎医学会学術大会で発表した。また、両群のマウス腸管の凍結切片を作製し、抗IL-33抗体で免疫染色した後、レーザー共焦点顕微鏡で観察したところ、食物アレルギーモデルマウスの腸管ではコントロールマウスの腸管と比べてIL-33が多く発現していた。現在は、Citrobacter属をマウスに感染させるとアレルギー症状にどのような影響が出るかを調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
食物アレルギーの発症に関与する腸内細菌の病原性については検討が進んでいるが、口腔内細菌と食物アレルギーの関連については検討が遅れている。現在までの段階で、食物アレルギーにおいて口腔内で顕著に増加する菌種は同定できていない。しかし、食物アレルギーと腸内細菌との関連性については検討が進んでいるので、今後は口腔内細菌の経口投与が腸内細菌叢の構成に及ぼす影響を明らかにすることで、食物アレルギーに対する口腔内細菌の効果について検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、Citrobacter属が食物アレルギーに及ぼす影響を調べるため、食物アレルギーモデルマウスならびにコントロールマウスにCitrobacter属を経口投与した感染モデルを作製する。それらの糞便中の細菌をMALDI-ToF-MS法で解析して腸内にCitrobacter属が定着したことを確認した後、腸管からのIL-33産生と、腸管粘膜固有層ならびに脾臓のT細胞のサブセットを解析する。その結果を非感染モデルと比較して、Citrobacter属細菌が食物アレルギーに及ぼす影響を明らかにする。また、口腔内細菌の経口投与による腸内細菌叢の変化と、それが食物アレルギーの感作ならびに症状に及ぼす効果も調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、食物アレルギーモデルマウスを2系統のマウスで作製してデータを集めようと試みたが、1系統でしか作製できなかったため、最終的なマウスの使用匹数が当初の予定より大幅に少なくなった。平成27年度に確立した食物アレルギーモデルマウスの系統(BALB/c)とはT細胞の分化と分布が異なる系統(C57BL/6)で食物アレルギーモデルマウスを作製しようとして、同じ一群のマウスを使用して実験条件を探すことに時間を費やしたため、両系統ともに購入匹数が減り、使用金額も少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、1系統(BALB/c)のみで食物アレルギーモデルマウスを作製して実験を行い、データを収集する。これらのマウスを複数のグループに分け、複数種の腸内細菌ならびに口腔内細菌を一種類ずつそれぞれのグループのマウスに経口投与して感染モデルを作製する。そして、これらのマウスの腸内細菌叢を構成する菌種の変化を調べ、腸管粘膜固有層や脾臓のTサブセットの変化、そして血中ならびに組織中のサイトカイン産生を調べていく。このようにして収集したデータによって、食物アレルギーと腸内細菌ならびに口腔内細菌の関連を明らかにしていく予定である。
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