実験動物用マイクロＸ線ＣＴによるＢｍａｌー１遺伝子ノックアウトマウスの解析

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K11088
• Research Institution: Nihon University
• Principal Investigator: 本田 和也 日本大学, 歯学部, 教授 (30199567)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 川嶋 祥史 日本大学, 歯学部, 助教 (30349964) ; 松本 邦史 日本大学, 歯学部, 助教 (00508658)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: Bmal-1遺伝子ノックアウトマウス / 異所性石灰化 / マイクロCT

Outline of Annual Research Achievements

Bmal-1遺伝子ノックアウトマウスの全身的異所性石灰化のメカニズムを解明するために，初年度は過去に計時的観察を行ったBmal-1遺伝子ノックアウトマウス（KO）および野生型のコントロールマウス（CL）のリガク社製実験動物用マイクロＸ線ＣＴ（μCT）による撮影データの解析を行った。撮影には，KOおよびCL雌雄各５匹，計２０匹を使用した。撮影システムとして日本大学歯学部1号館に設置されているμCTを用い，週齢6週齢から開始して，1日目，3日目，7日目に撮影を行い，以後25週齢まで，毎週１回撮影を行った。撮影に際しては導入と覚醒が迅速なイソフルランを使用した吸入麻酔を行い，マウスの侵襲を最小限にするよう留意した。撮影条件は90kV，200μA，撮影時間は１７秒とした。撮影部位については過去に石灰化の報告がある，両側踵骨腱部，腰椎椎間部，胸骨周囲部および両側膝関節部に加えて，両側顎関節部とした。画像再構成はi-ViewR（モリタ）を使用した。ベントバルビタール腹腔内過剰投与による安楽死後ホルマリン固定保存していた屠体について，今年度，90kV，200μA，撮影時間は2分での撮影を行った。撮影後，KOおよびCL雌雄各１匹，計４匹について，病理組織学的資料の作成を行った。染色法は，ヘマトキシリン・エオシン染色（HE）染色およびコッサ染色の二種類とした。コッサ染色はリン酸カルシウム塩と炭酸カルシウム塩のみを黒く染色でき，石灰化の状態を把握できた。HE染色では石灰化部に骨芽細胞の存在確認ができた。μCTおよび病理組織検査にて,過去に報告がない顎関節部の石灰化を改めて確認した。また，今後，μCTのデータ解析の信頼性を向上する目的でμCT読影経験のないラオス診断医にi-ViewRの使用法について説明を行った。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

μCT画像診断の信頼性の調査のため，病理組織切片をゴールドスタンダードとするにあたり，HE染色とコッサ染色の二種類の標本作製を行った。コッサ染色はリン酸カルシウム塩と炭酸カルシウム塩のみを黒く染色でき，石灰化の状態を把握できた。HE染色では石灰化部に骨芽細胞の存在確認ができた。μCTおよび病理組織検査にて,過去に報告がない顎関節部の石灰化を改めて確認した。
μCT画像診断の信頼性の担保のため，27年度にラオスの歯科放射線科医との共同研究を開始した。方法としては，病理組織像をゴールドスタンダードとして，μCT画像を診断してもらい，日本人（我々）のデータと比較するものであるが，初年度は，i-ViewRの使用法を理解してもらうためのレクチャーを行った。サンプル画像の判定結果は我々の判定結果とほぼ同じであり，マイクロCT画像の国による読影診断には差があまりなく，信頼性の高い画像であると言えると考えている。

Strategy for Future Research Activity

我々は，Bmal-1遺伝子ノックアウトマウスの全身的異所性石灰化のメカニズムを解明することをおこなってきたが，平成28年度はさらに腹部の筋肉組織や脂肪量の変化にも着目していく方向である。その根拠はBmal-1遺伝子ノックアウトマウスの中に，明らかな腹部肥満のマウスが出現しており，そのデータの解析の必要性が出てきたことである。方法としては，腹部１cmの範囲でマイクロCT撮影をおこない，骨量，内臓，脈管，脂肪，筋肉を画像上で分離し，その詳細なデータを得る予定である。このことにより，サーカリアンリズムの変化による，体調の変化の解明の一助となる。また，本年度もデータの信頼性の向上のために，ラオスやドイツ等の当教室と関連のある歯科放射線の研究者にデータの判定を依頼する予定である。

Causes of Carryover

当初の予定より，消耗品を安く抑えられたため，繰越金が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

前述したBmal-1遺伝子ノックアウトマウスの腹部肥満のマウスを試料として追加する。この試料に対してマイクロCT撮影をおこなう。撮影部位は従前おこなっていた，両側踵骨腱部，腰椎椎間部，胸骨周囲部，両側膝関節部，両側顎関節部に腹部１cmの範囲を追加する。追加した試料に対しても，HE染色とコッサ染色の二種類の標本作製をおこなう。昨年度と本年度のデータをまとめて学会発表や雑誌に投稿する。また，本年度もデータの信頼性の研究のため，ラオスやドイツ等の歯科放射線研究者とのデータの判定をおこなう。