2016 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンによるミトコンドリアを介した唾液分泌制御機構の解明
Project/Area Number |
15K11091
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
中山 亮子 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (50749843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
井上 裕子 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (50367306)
梁 洪淵 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10298268)
内田 仁司 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20736996)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | OVX / マウス / 唾液分泌 / エストロゲン / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
エストロゲンによるミトコンドリア機能の制御が唾液分泌能に果たす役割について、その関与と分子機構を明らかにするため、卵巣摘出(OVX)による早期閉経モデルマウスと偽手術コントロールマウスの唾液分泌能と唾液腺組織のミトコンドリア機能を比較解析することでエストロゲンによるミトコンドリア機能の制御が唾液分泌能に及ぼす影響についての検討を行う。 28年度は27年度に得られたOVXまたは偽手術(sham)マウスの血清試料と唾液腺組織試料について詳細な解析を進め、さらにOVXにより唾液分泌量の低下したマウスにホルモン徐放タブレット移入によるエストロゲンの補充を行った。OVXにより血中エストロゲン濃度の低下したマウスは唾液分泌量も低下し(p<0.001)、エストロゲンの補充により血中エストロゲン濃度と唾液分泌量は回復した(p<0.01)。唾液腺組織の形態学的にはOVXにより腺房細胞の萎縮が観察されたが、エストロゲン補充により改善がみられた。唾液腺組織中のATP量はOVXにより減少するが(p<0.05)、ミトコンドリアコピー数は変化がなく、エストロゲンの減少によるミトコンドリアの質的変化がATP量の減少をもたらすことが示唆された。また、防衛医科大学校の伊藤正孝先生のご協力が得られ、電子顕微鏡による組織の解析も行うことができた。電顕像においてもミトコンドリア数には顕著な違いがなく、コピー数定量結果と一致した。マイクロアレイによりエストロゲン補充群とプラセボ群の遺伝子発現解析も行い、OVXとshamの比較データと合わせて解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OVXによる唾液分泌量低下とエストロゲン補充による回復については、都合3回実験を繰り返し再現性を得ることができた。複数回実験を行ったことで試料を多く得ることができたので、今後解析項目の幅を広げることができる。 また、電子顕微鏡観察やマイクロアレイ解析などにより、当初の想定以上のデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果よりミトコンドリアの量ではなく質の変化が唾液分泌量の低下をもたらすことが示唆されたため、ミトコンドリアダイナミクスに関わる遺伝子についてmRNAの定量解析を行ったり、ミトコンドリアマーカーによる蛍光染色による唾液腺組織中のミトコンドリアの形態観察を試みる予定である。また、エストロゲン応答遺伝子COX7A2Lがミトコンドリア呼吸鎖スーパー複合体形成を促進することに着目し、得られた唾液腺組織試料のミトコンドリア分画内に含まれるCOX7A2Lやエストロゲン受容体の発現についてウェスタンブロット解析を行う。さらに、唾液腺由来細胞株や急性単離のマウス唾液線腺房細胞を用いたin virto実験により、エストロゲンによるミトコンドリアの制御で増減するATP量が細胞内カルシウムイオンの取り込みに与える影響についても検討する。
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Causes of Carryover |
想定以上に研究が進み電子顕微鏡観察やマイクロアレイなど解析したい項目が増えたため、解析の委託や追加のサンプルを得るためマウスの追加購入およびそれに付随する飼料や試薬購入により物品費が予定よりも多くかかった。しかしながら、データ整理や入力およびサンプル測定などの研究補助人件費・謝金として予定していた額を、研究者自ら作業をすることにより軽減した結果、162,505円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度で得られた実験データの解析結果次第でさらに追加の動物実験が必要になるが、次年の最終年度は得られた試料を様々な手法で測定し得られたデータの解析も重要となってくるため、予算は測定やサンプル解析のための試薬・消耗品および機器類の購入のほか、サンプル採取・測定・データの整理・解析などの補助にもあて、研究推進の効率化を図りたい。
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Research Products
(1 results)