2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11135
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
椎谷 亨 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (40350532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (40247317)
寺中 敏夫 神奈川歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (60104460)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱灰抑制能 / 象牙質 / バーニッシュ / TMR / 多種イオン徐放性 / 初期根面う蝕 / 再石灰化 / 過再石灰化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで,多種イオン徐放性バーニッシュの歯根象牙質脱灰抑制能をin vitroにて明らかにしてきた.昨年度は,フッ化物濃度を0.1ppmFに設定した再石灰化液中にバーニッシュを浸漬し,その後の象牙質脱灰抑制能を明らかにした.今年度は口腔内での材料劣化の影響を反映した実験系として,その口腔液中フッ化物濃度を唾液中フッ化物濃度とされる10の-2乗ppmオーダーの低値に設定し,その検討を行った. 象牙質試験面に3×1 mmに窓開けしたマスキングテープを貼付し,バーニッシュを塗布した.テープ除去後,塗布材料に隣接する部位に新鮮象牙質試験面が3×1 mm露出するように耐酸性ネイルバーニッシュ処理を行った.その上で,材料を100%湿潤下で1時間静置した群を0日経過群とした.一方,再石灰化溶液(1.5mM CaCl2, 0.9mM KH2PO4, 130mM KCl, 20mM Hepes, 0.01 ppm F, pH7.0)に3日間浸漬した群を3日経過群とした.脱灰試験は50mM酢酸ゲルを使用して37℃で1週間行った.その後,厚さ300μmの薄切片を切り出し,TMR撮影(PW 3830, 管電圧25 kV, 管電流15 mA, 照射時間20分),ミネラルプロファイルの作成後,表層および病巣体部のミネラル密度(vol%),ミネラル喪失量(IML: vol%×μm)を測定した. 両群とも,深さ約10μm付近にミネラル密度30vol%を越える明瞭な表層が観察され,病巣体部の軽微なほぼ同様な平均ミネラルプロファイルを示した.表層や病巣体部の平均ミネラル密度,平均IMLも両群において有意差が見られなかったのは,そのフッ化物リチャージ能により,フッ化物イオンが再徐放されているためと考えられ,多種イオン徐放性バーニッシュは,3日間の再石灰化液浸漬後もその象牙質脱灰抑制能を十分維持していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多種イオン徐放性バーニッシュは,歯面だけでなく,義歯に塗ることも考慮に入れた新しいコンセプトを有するバーニッシュと考えている.今後も引き続きこの多種イオン徐放性材料に注目していくが,対照群として,同量のフッ化物イオンを徐放するNaF配合バーニッシュを用意することで,比較検討し,その多種イオン徐放の効果,特性を明らかにしていく所存である.実験自体はおおむね順調に進んでおり,象牙質脱灰抑制能に関する知見は得られてきているが,初期根面う蝕の過再石灰化という最終的な大きな目標に向けてはまだ多くの課題が残されているのも事実であるため,やや遅れている,とさせていただいた.
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Strategy for Future Research Activity |
多種イオン徐放性バーニッシュは,その材料劣化を考慮に入れても,歯根象牙質脱灰抑制能に有効であることが明らかになってきた. 初期根面象牙質う蝕の過再石灰化対象は,表層が破壊されていない象牙質う蝕であるが,局所に適用できるフッ化物イオン徐放性歯科材料が,病巣に対して有効に効果を作用することは間違いない.バーニッシュは,永久的に停滞するものではないものの,繰り返し簡便に塗布できる,という大きな利点を有する.特に今回注目している多種イオン徐放性バーニッシュは,フッ化物イオンをリチャージできるという非常に魅力的な特性を有し,さらにフッ化物イオンのみならず,多種イオンによる緩衝作用などさまざまな効果を期待できる. 今後は,対照群として,フッ化物イオンは同量徐放できるもののフッ化物イオンをリチャージできないNaF含有バーニッシュを用意し,多種イオン徐放性バーニッシュの有効性をさらにはっきりと明らかにしていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
海外における学会発表を視野に入れていたものの,病院勤務との兼ね合いもあり,それがかなわなかったのが一番大きな理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
病院勤務の実状により,なかなか難しい面が変わらずあるものの,ぜひ次年度こそは,海外における学会発表を行いたいと考えている. また分析方法として,元素分析等の分析外注も行いたいと考えており,その費用に充てたい,と考えている.
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