2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔ケアへの応用に向けたポリフェノール光照射殺菌法の確立
Project/Area Number |
15K11144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30431589)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリフェノール / 光照射 / 殺菌 / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、Streptococcus mutansを用いて、実験的バイオフィルムモデルを構築し、殺菌試験を行った。96-wellマイクロプレートに入れたBHI液体培地にS.mutansを接種し、24時間嫌気状態で振とう培養することで実験的バイオフィルムを作製した。ポリフェノールはカフェイン酸(CA)、クロロゲン酸(ChA)、プロアントシアニジン(PA)を選択し、最終濃度1 mg/ml となるよう調製した。光照射の光源には波長 400 nm, 385 nm, 365 nm の3種類のLEDを放射照度1000 mW/cm2で用いた。試験に用いたポリフェノールの中でCAで高い殺菌効果が認められた。対照群(純水での処理、LED照射のみ、CAでの処理のみ)では高い殺菌効果は認められなかったが、CA に光照射を行った試験群では3-log程度の生菌数減少を伴う殺菌効果が認められ、その効果は短波長になるほど高くなる傾向を示した。 さらに歯に形成されるデンタルプラークに近い状態を再現するためにS.mutansの実験的バイオフィルムをφ5mmのハイドロキシアパタイト上に形成した。バイオフィルムの評価を共焦点レーザー顕微鏡、電子顕微鏡、および生菌数カウント法で行った。バイオフィルムは培養時間に伴って、厚みを増し、24時間後には約200 umになった。菌体外多糖の形成が認められ、生菌数は約10の7乗のであった。また、S.mutansの浮遊菌(懸濁液)はアモキシシリンやエリスロマイシンといった抗生剤によって殺菌されるが、バイオフィルムでは抵抗性を獲得し殺菌されないことが分かった。従って、抗生剤に対する抵抗性を獲得したバイオフィルムであってもポリフェノール光照射殺菌法は殺菌作用を示すことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ポリフェノール光照射殺菌法がS.mutansバイオフィルムに対しても有効であることを実証することができた。また、その殺菌力は光の波長やポリフェノールの波長に依存するという仮説も検証することができた。従って、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は引き続きin vitro殺菌試験を実施する。S.mutans以外の口腔関連細菌のバイオフィルムに対する効果を調べ、今後の動物試験やその後の臨床応用に向けた最適条件の探索を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではS.mutansを用いた殺菌試験に加えて、Porphylomonas gingivalisやCnadida albicansを用いた殺菌試験も計画していた。しかしながら、S.mutans試験での条件設定や得られた結果の再現性確認等に時間がかかったため、これらの計画していた実験の実施に至らなかった。そのため、それらの実験に係る費用および予定していた論文投稿費用を平成27年度には使用しないこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
S.mutansを用いたバイオフィルムモデルの構築は順調に進んでいるため、平成28年度にはP.gingivalisおよびC.albicansを用いた殺菌試験も順次開始する。そのため、それらの実験に必要な経費として、平成27年度繰越額を使用する。併せて、論文投稿の準備を進めているため、それらに必要な費用として使用する。
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