2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔ケアへの応用に向けたポリフェノール光照射殺菌法の確立
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15K11144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30431589)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリフェノール / カフェイン酸 / バイオフィルム / 殺菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまの研究でにポリフェノールの中でもカフェイン酸などのフェノール酸に近紫外線を照射することで、強い殺菌作用を得られることをが分かっている。そこで、平成28年度はStreptococcus mutansのバイオフィルムに対する本殺菌法の効果およびその殺菌作用に影響を及ぼす因子をより詳細に調べた。 平成27年度と同様にS. mutansをハイドロキシアパタイト上で培養することで実験的バイオフィルムを作製し、殺菌試験に用いた。試料を0~2 mg/mLに調製したカフェイン酸に浸漬し、波長365、385、400 nmのLED光を放射照度500、1000、2000 mW/cm2で照射した。照射時間は1,2,4分とした。処理後のバイオフィルム中の生菌数は平板寒天法で評価した。一連の実験を通して、最適なカフェイン酸の濃度、LED波長、放射照度、処理時間を探索した。実験の結果、カフェイン酸の濃度の影響はわずかであり、1 mg/mLの時に最大の殺菌作用が得られた。波長については、365 nmの光はカフェイン酸に吸収されてバイオフィルムまで効果的に到達しないため、385 nmのLED照射で最大の殺菌効果が得られることが分かった。放射照度は高いほど、処理時間は長いほど殺菌作用が強くなることが分かった。結果として、1 mg/mLカフェイン酸にS. mutansバイオフィルムを浸漬し、波長385 nmのLED光を放射照度2000 mW/cm2で4分間照射した場合に、最大の殺菌作用が得られ、10の5乗の菌数が死滅することを実証した。 また電子スピン共鳴分析法により、カフェイン酸に対する光照射で得られる殺菌作用はヒドロキシルラジカル生成と関連性があることも実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成27年度のin vitro殺菌試験に引き続き、平成28年度にはin vivoでの殺菌試験を実施する予定であった。しかしながら、平成27年度の研究成果をうけて、本殺菌法のバイオフィルムに対する殺菌作用のより詳細な解析が必要と判断したため、平成28年度も引き続きin vitro殺菌試験を実施した。結果として、重要な影響因子が分かったため、来年度以降の研究に反映させらるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度にはin vitroにおける殺菌作用を十分に実証できたと考えられる。従って、平成29年度には当初の計画通りラットを用いた動物実験において、本殺菌法の安全性と有効性に関する研究および創傷治癒効果に関する研究を実施する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では平成28年度から動物実験を開始する予定であったが、in vitroでの殺菌試験において詳細な解析が必要と判断したため、動物実験の開始を平成29年度以降に延期した。そのため、それらの実験にかかる費用および予定していた論文投稿費用を平成28年度には使用しないこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
in vitroの殺菌試験は順調に進み、論文執筆までを終えることができた。したがって、平成29年度は当初の計画通りの動物実験を実施する。そのため、論文投稿費用および動物実験に必要な経費として、平成28年度繰越額を使用する。
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