2015 Fiscal Year Research-status Report
歯科用レーザー照射併用による抜歯窩創傷治癒促進効果
Project/Area Number |
15K11183
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
大郷 友規 大阪歯科大学, 歯学部, 講師(非常勤) (70435121)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 炭酸ガスレーザー / 半導体レーザー / 低反応レベルレーザー治療 / ソケットプリザベーション / 創傷治癒促進効果 / 病理組織学的検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ食品医薬品局は歯科用レーザー装置による歯科治療への使用用途を規定した指針の1つに「Coagulation of extraction sites 抜歯窩の血液凝固」と記載している。この治療にはレーザー光のエネルギーが組織深部まで透過する半導体レーザーと組織表層で吸収される炭酸ガスレーザーの2機種が推奨されている。しかしこの2種類のレーザー特性は相反する。そのため抜歯窩へのレーザー応用による創傷治癒機転・機序だけでなく、照射方法・条件も異なる可能性が考えられるが、今日まで臨床的な報告はあるものの実験動物を使用した基礎的研究によるEBMの確立までには至っていない。 本研究では前述する2種類の歯科用レーザー照射におけるソケットプリザベーション効果および抜歯窩の創傷治癒促進効果を誘導するための照射条件の確立が必要不可欠であると考える。 そこで照射条件およびその先のEBMの確立のためにまずは病理組織学的および形態計測学的解析の検証を行い、抜歯窩およびその周囲組織を対象に①粘膜上皮の被覆、②血餅の器質化、③血管の新生状態、④新生骨の形成および骨梁の状態、⑤細胞(破骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、筋線維芽細胞)の発現・遊走や分化、⑥抜歯窩内新生骨の骨リモデリング速度を把握することである。組織学的解析からレーザー非照射群と各レーザー照射群の計3群間での相違を比較することで、各々の抜歯窩の4つの治癒機転である「凝血期」「肉芽組織期」「仮骨期」「治癒期」の状況把握が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯科用レーザーとして申請通り、組織表面吸収型レーザーとして炭酸ガスレーザー(パナソニック社製、PanalasCO2)と組織透過型レーザーとしてBIOLASE社製のilaseを使用した。 照射条件として、①高出力レベルレーザー治療(以下;HLLT)照射;抜歯直後に血液を抜歯窩内にとどめるために血液を炭化させ人工的痂皮を形成する照射、②低出力レーザー治療(以下;LLLT)照射;抜歯後翌日に抜歯窩創傷治癒促進効果を期待する目的の照射で周囲組織に不可逆的な組織学的変化がないこと、この2つの照射条件について各レーザーにて設定する必要があった。 炭酸ガスレーザーにおいてはH24-25年度科研費若手研究B中に設定した条件①HLLT照射;レーザーチップ(以下;チップ)を抜歯窩に非接触下、1.0W、連続波、30秒、熱量約152J/cm2、②LLLT照射;チップを軽く接触下、1.0W、パルス波、熱量約40J/cm2とした。研究実績の概要に記載のため省略する。 半導体レーザーにおいても炭酸ガスレーザーと近似した条件設定にてラット粘膜を用いて予備実験を行った。ここで1つ問題が発生。臨床的にはこのレーザーによる抜歯窩内の血液凝固による人工的な血餅の形成はチップを抜歯窩内に挿入し照射することであるが、実際実験を行うとチップ径がラット抜歯窩径より大きいため不可能であった。そのため炭酸ガスレーザー同様に抜歯窩表層から非接触下で照射することを余儀なくされた。しかしこのレーザーの特性上問題ないと判断し続行した。このことを考慮した照射条件は①HLLT照射;チップを抜歯窩に非接触下、1.0W、連続波、30秒、②LLLT照射;チップを非接触下、1.0W、パルス波、熱量約40J/cm2と設定することとした。両レーザー間の照射条件をほぼ近似することができた。 以上より本年度の研究計画通り研究が進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で記載した通り2種類のレーザー照射の条件が現時点で決定したと考えるので、今後は本実験を進めていく。 抜歯窩の治癒過程には4期あるので、その中で3期目となる「仮骨期」に相当するとされる抜歯後7日目のラットにまずはターゲットを絞り病理組織学的解析を行っていく予定である。その理由として、H24-25年度科研費若手研究B補助金をいただいていた期間で報告した中で、一般的な抜歯窩の新生骨は抜歯窩底部から徐々に表層に向かって形成されるのに対して、抜歯後に炭酸ガスレーザーを照射した群では抜歯窩底部からだけでなく抜歯窩の浅層~中層にかけて架橋状の新生骨形成も確認したからである。もしかすると半導体レーザーにおいても「仮骨期」に何か特異的な抜歯窩の新生骨形成を呈する可能性もあるかもしれないと考える。 その後は抜歯窩創傷治癒の「肉芽組織期」(ラットでは約抜歯後3~5日目に相当)の病理組織学的な組織および細胞の変化・動態を解析していく。
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Causes of Carryover |
今回申請した計画のうち平成27年度に参加する予定であった学会に研究業務以外の諸事情により参加することが出来なかったことによる旅費が余剰となったこと、もう1つの要因は消耗品の消費が計画していた消費量より少なく抑えることができたことである。 この上記の2つの要因の結果、平成27年度の研究助成金が申請額より余剰を発生させてしまったと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究計画として申請していた照射条件の設定に関しては実施状況報告書に記載している通り「おおむね順調に推移している」ため、余剰させてしまった27年度分の助成金を平成28年度の研究に回すことができる。これにより多少の研究費に余裕が出来たと前向きに考えることが出来る。また27年度の研究の中で少し新たな発見があり同時進行で論文作成・投稿費用に還元出来る可能性もあるので有効に利用させていただく予定です。
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