2015 Fiscal Year Research-status Report
生体吸収性を制御したαβTCPインジェクタブル骨補填材の創製
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15K11206
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
丸田 道人 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40507802)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アパタイト / リン酸カルシウム / 骨補填材 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験計画予定表に従い、平成27年度は材学的な物性評価として以下の4項目を実施した。 (1)粒径の調整:球状αTCPを調製した。1~5Wt%ゼラチンを含有したアルギン酸水溶液に炭酸カルシウムに対してDCPAをモル比2に成るように懸濁させ、カルシウムを含有した水溶液に懸濁液をディスペンサーにて液体窒素に滴下し、凍結乾燥させた。得られた球状体を電気炉にて1300℃で3時間焼結させαTCPを得た。 (2)相転移条件の検討:αからβへの相転移の閾値は1050℃であるので、(1)にて調製された粒子径1mmのαTCP球を800,900,1000℃で長時間処理してβ相への変化率を評価した。具体的には上記3種類の温度で繋留し粉末X線回折を用いてα相とβ相の割合を測定した。 (3)溶解性の検討:α相に析出するβ相の割合を任意に変化させた顆粒状α-β複合型TCP骨補填材の溶解曲線をICP発光装置を用いた溶液解析により作成した。具体的には、α-β複合型TCP球を1gいれた15mLの遠沈管に10mLになるように生理食塩水を入れ、37℃の恒温槽に静置した。1.2.5.10.20日後の溶液中に含まれるCaとPの濃度を測定した。生理食塩水は毎日取り替えた。β含有量が0-20-40-60-80-100 mass%の試料を使用した。 (4)ヒアルロン酸・FGF-2との複合化上記(3)実験で調製したα-β複合型TCP球とヒアルロン酸・FGF-2を複合化させた。ヒアルロン酸に分散させるFGF-2の濃度は0または100 ng/mLとした。α-β複合型TCP球のβ含有量が0-20-40-60-80-100 mass%と変化させたものと混合し、合計12種類調製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン酸三カルシウムは現在市販され臨床応用されている骨補填材の基本成分であるが、溶解速度の制御が課題であった。リン酸三カルシウムには、高温安定相のαTCPと低温安定相のβTCPがある。αTCPは溶解が早く、足場としての機能が失われるため、新生骨の形成が十分に行われない。βTCPは生体吸収性が低く骨への置換速度が遅いという特徴がある。本研究の基盤的内容は、αTCPが1050℃以下でβTCPに相転移することに着目し、処理温度・時間を変化させα相にβ相を析出させることにより生体吸収速度の制御を可能にする手法を提案することにあった。平成27年度の実験結果より、α-β複合型TCPの球状TCPを調整する手法を確立しており、平成27年度に実施予定であった4つの材料学的な物性評価((1)粒径の調整(2)相転移条件の検討(3)溶解性の検討(4)ヒアルロン酸・FGF-2との複合化)も実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、細胞生物学的検討へと移行する。 具体的には、骨芽細胞を用いた細胞学的評価と破骨細胞を用いた細胞学的評価を行う。 前年度までに、α相に析出するβ相の割合を任意に変化させた顆粒状α-β複合型TCP骨補填材の調製を完了させているが、平成28年度の細胞生物学的検討結果により再度検討が必要になった場合は、α-β複合型TCP骨補填材の調製法にも検討を加える。
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