2016 Fiscal Year Research-status Report
セメント芽細胞分化誘導を基軸とした歯周組織再生型インプラントの基盤開発
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15K11219
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
迫田 賢二 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (70419654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白方 良典 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (60359982)
瀬名 浩太郎 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60701117)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HIF-1 / SDF-1 / CEMP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにエナメルマトリックスタンパクで間葉系幹細胞を刺激するとCementum protein 1 (CEMP-1)の発現が亢進することが分かった。CEMP-1はセメント芽細胞、歯根膜細胞に発現し、セメント質形成に関与しているといわれている。そのCEMP-1の発現には転写因子HIF-1が重要な役割を担っているとの報告がある。 ヒト歯根膜由来線維芽細胞(HPDLF)をエナメルマトリックスタンパクで刺激してみたところ、HIF-1の転写活性が上昇することが確認できた。HIF-1の標的分子の1つにSDF-1がある。SDF-1は間葉系幹細胞を誘導することが知られていることからSDF-1産生についても調べてみた。HPDLFをエナメルマトリックスタンパクで刺激するとSDF-1タンパクの産生亢進が確認できた。興味深いことに組織の炎症の際に発現する生理活性物質PGE2を加えるとSDF-1タンパクの産生が抑制された。PGE2の存在下ではHIF-1の転写活性についても抑制されることがわかった。そのメカニズムについて詳細を検証した。PGE2のレセプターにはEP1、EP2、EP3、EP4があるが、この中でもEP2、4がSDF-1産生抑制に関与していることがわかった。PGE2によってcAMPの合成が促進されるが、このcAMPもSDF-1産生抑制に関与していることが確認できた。次にエナメルマトリックスタンパク刺激によってSDF-1発現に至るシグナルを検証したところ、PI3K/AKT経路が関与していることが分かった。AKTの活性化(リン酸化)についてはエナメルマトリックスタンパクで活性化し、それはPGE2によって抑制されていた。 以上のことは、エナメルマトリックスタンパクを用いた歯周組織再生においてPGE2が存在することで間葉系幹細胞の遊走やセメント質形成が阻害されることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の研究目的からはややそれているが、HIF-1に関連した新しい知見を得ることができた。最終年度はこれらの新しい知見と本来の目的を融合していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
HPDLFをエナメルマトリックスタンパクで刺激すると、PI3K/AKT経路を経由してHIF-1の転写活性が上昇し、PGE2の存在下ではHIF-1の転写活性が抑制されることがわかった。したがって、今後はまずPGE2からのシグナルがいかにしてHIF-1の転写活性を抑制しているのかを検証する。 セメント芽細胞のマーカーの一つであるCEMP1の転写因子とされているHIF-1であるが、HIF-1はHRE(Hypoxia Response Element)に結合することで遺伝子の活性化が起きる。鉄のキレーターであるデスフェロキサミン(DFO)によっても、HREを経由して同様に遺伝子の活性化が起きることが知られている。我々はエナメルマトリックスタンパクにDFOを併用することでCEMP1の遺伝子発現が亢進することを見出している。そこでこれらのことをエナメルマトリックスタンパクを固定したチタン上(歯科インプラントを想定)で再現し、さらに炎症を想定してPGE2存在下でのCEMP1発現についても検証を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく中で、当初の研究計画時には想定していなかった成果を得ることができた。当初の予定ではチタン処理のための費用が計上されていたのであるがその費用を使用しなかったことや、学会への参加を見送ったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述したチタン処理や学会参加、論文投稿費に使用予定である。
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