2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11273
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北野 尚孝 日本大学, 医学部, 助教 (50424726)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌 / 遺伝子治療 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究までは、口腔扁平上皮癌細胞(SCCKN)や扁平上皮癌細胞株(A431細胞)でヌードマウスに移植腫瘍を作成し良好な結果を得てきた。実際にヌードマウスの移植腫瘍に対してE3C1の皮下注射により腫瘍の増殖を抑制する事に成功した。また、E3C1の皮下注射により移植腫瘍を有するマウスの生存率が延長した。これは腫瘍の増殖速度を抑制することで生存率が改善されたものと考えられた。このことより、腫瘍の増殖速度を抑制した原因は腫瘍の血管ではないかと考え、平成27年度の研究では、E3C1で治療を行ったヌードマウス移植腫瘍の腫瘍血管について検討した。ヌードマウス移植腫瘍を作成する際に、扁平上皮癌細胞株(A431細胞)を使用した。ヌードマウスに移植した腫瘍の大きさが50mm3に達した時点で週に1回のE3C1による治療を3回行った。治療が終了してから1週間後にマウスの尾静脈からインディアンインクを静脈内投与し血管造影を行った。その後、巨視的にE3C1で遺伝子治療を行った群とコントロール群の腫瘍血管の形態を比較した。その結果、コントロール群に比べてE3C1群の腫瘍血管は毛細血管様の細かい血管が少なく大きく太い血管が目立っていた。さらにその腫瘍血管をそれぞれ電子顕微鏡で観察したところ、コントロール群に比べてE3C1群の腫瘍血管は血管壁が薄くなっており、血管壁の一部が破綻しているような所見が認められた。以上のことより、ヌードマウス移植腫瘍のE3C1による腫瘍縮小は腫瘍血管の変化によるものであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度までの研究で、E3C1によるヌードマウス移植腫瘍に対する遺伝子治療で移植腫瘍の腫瘍縮小効果や移植腫瘍を有するヌードマウスの生存率の向上が確認されていた。しかし、E3C1がどのように移植腫瘍に影響を及ぼしているかは解明されていなかった。それが、平成27年度の研究でE3C1が腫瘍血管の分岐形態や血管壁の構造に影響を及ぼしていることが明らかとなった。このことで、Del1による遺伝子治療の作用機序の解明に大きく近づけたのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Del1のE3C1による遺伝子治療で、腫瘍血管の形態学的変化を確認できた。今後は、遺伝子治療後の腫瘍を切片にし、PECAMやvon Willeband因子の抗体を用いて内皮細胞の染色を行う予定である。さらにangiogenesisにおけるtip cellsのマーカーであるPDGF-betaの抗体で腫瘍血管を染色し検討していきたいと考えている。以上ことが検討できると、Notchの表現系と比べて考察することが可能になる。NotchはDel1のE3と同じコンセンサスシークエンスを11個有し、世界中でも多く研究されている。それ故、われわれの研究の参考になることが考えられる。
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