2015 Fiscal Year Research-status Report
抜去智歯歯髄組織の即時移植による新規抜歯窩治癒促進法の確立
Project/Area Number |
15K11279
|
Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00611998)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 抜歯窩治癒促進法 / 歯髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
下顎水平埋伏智歯抜歯は口腔外科臨床において最も多く遭遇する外科処置の一つである。抜歯後は腫脹、疼痛といった術後障害が出現するのみでなく、感染や治癒不全などのリスクが存在する。しかし、抜歯後の治癒に関しては自然治癒を待つか対症療法のみで、効果的な治癒促進や術後障害防止などの方法はとられていない。本研究では、下顎水平埋伏智歯の抜歯に際し、抜歯直後に抜去歯から歯髄組織を摘出し、細切後、抜歯窩に移植することにより抜歯窩の治癒促進を図ることが可能かどうかについて検討することとした。 そこでまず、歯髄組織移植によるマウス抜歯窩の治癒促進効果について検討した。具体的には、ICRマウスの上顎第二臼歯を抜去し、抜去歯から歯髄組織を摘出し、それを細切した。抜歯窩に対して、右側はコントロール、左側には歯髄組織移植群として、細切した歯髄組織を移植した。抜歯窩は光重合レジンにて被覆し口腔内と遮断した。その後7、10、14、21、28、42日後に抜歯窩を含む上顎組織を摘出し、コントロール群、歯髄組織移植群において抜歯窩治癒過程を組織学的に検討した。また、治癒組織内における骨関連分子、幹細胞関連分子、線維芽細胞関連分子の発現について免疫組織化学的手法によりに検討し、移植歯髄組織が抜歯窩治癒に及ぼす影響について分子細胞生物学的に詳細に明らかにすることを目指し、現在検索中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、下顎水平埋伏智歯の抜歯に際し、抜歯直後に抜去歯から歯髄組織を摘出し、細切後、抜歯窩に移植することにより抜歯窩の治癒促進を図ることが可能かどうかについて検討を行った。歯髄組織には、近年再生医療の実現のための細胞源として注目されている歯髄幹細胞が多く含まれていることから、これらを創傷治癒メカニズムが活性化している抜歯窩の環境に直接的に作用させることにより再生細胞を誘導し、効果的に治癒を促進できるのではないかという仮説に基づき、抜去歯歯髄組織移植が抜歯窩の治癒(歯槽骨再生)に促進的に作用するか否かを検証することを本研究の目的としている。それに基づき、実際に実験動物を使用し、抜歯後、抜歯窩に歯髄組織を移植することで治癒が促進されるか否かについて順調に検討を進めており、概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの検討結果を踏まえて、歯髄組織移植による抜歯窩治癒促進が動物種を超えて可能か否かについても明らかにすることを目的に以下の検討を行う。GFPラットおよびヌードラットの左右上顎第一臼歯を同時に抜去する。GFPラットの抜去歯からは歯髄組織を摘出し、それを細切する。ヌードラットの抜歯窩に対しては、右側はコントロール、左側には歯髄組織移植群として、GFPラットの細切した歯髄組織を移植する。抜歯窩はサージカルパックあるいは光重合レジンにて被覆し口腔内と遮断する。その後7、10、14、21、28、42日後に抜歯窩を含む上顎組織を摘出し、コントロール群、歯髄組織移植群において抜歯窩治癒過程を組織学的に検討する。また、移植された歯髄細胞がGFP標識されていることを利用して、移植した歯髄組織由来の細胞がどの程度残存し、組織治癒に関わっているのかを蛍光顕微鏡を用いて検討する。また、治癒組織内における骨関連分子、幹細胞関連分子、線維芽細胞関連分子の発現について免疫組織化学的手法およびISH法によりに検討し、移植歯髄組織が抜歯窩治癒に及ぼす影響について分子細胞生物学的に詳細に明らかにすることで、前項にて得られたマウスの歯髄組織移植による抜歯窩治癒促進が動物種を超えてラットにおいても同様の結果が得られるか比較検討し、この手法が動物種に依存しない、異種動物間で共通に用いることが可能か否か検討する。
|
Causes of Carryover |
前年度から繰越金が発生しているのは、今年度、抜歯窩の治癒における歯髄組織移植の有効性の検討において、組織学的、免疫組織化学的検討を用いた解析が途上であるためであり、次年度以降はこの解析を進めるとともに、さらに抜歯窩治癒促進法について多角度から詳細に検討するために、本来今年度に使用する予定であったこれらの繰越金を有効に使用して、分子細胞生物学的検討、生化学的検討、組織学的検討、免疫組織化学的検討を進め、先行している結果とともに、本研究を順調に進展させていく予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には研究計画に基づき、細胞培養試薬類、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、免疫組織化学的検討試薬類、実験動物などに物品費として使用するとともに、成果発表のための旅費、人件費、謝金、論文印刷費などに使用する。具体的には、前年度までに解析が途上であった抜歯窩の治癒における歯髄組織移植の有効性における組織学的、免疫組織化学的検討などに使用する予定である。
|