2015 Fiscal Year Research-status Report
超音波力学療法(SDT)による口腔がんの腫瘍増殖抑制効果に関する基礎的研究
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15K11282
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 憲司 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40183701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 速夫 愛知県がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (20207830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超音波力学療法 / 培養細胞 / 口腔扁平上皮がん / 超短波プローブ / 5-ALA / ヌードマウス皮下腫瘍モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2種類の口腔扁平上皮がん(以下OSCC)細胞株、ヒト低分化型扁平上皮がん細胞株SAS細胞およびUMSCC81B細胞を用いてIn vitro、 vivoの両面から超音波増感剤として5-ALAを用いた超音波力学療法に関する基礎的検討を行った。 1.In vitro実験 SAS細胞5x105個を35 mm dishに播種し、種々の濃度の5-ALAを培地中に添加、超短波プローブ(UST-770、ITO超短波株式会社)を用いて種々の条件(w/cm2, duty(%), time (sec), MHz)で超音波照射を行った。その結果、5-ALAを用いた超音波力学療法は光線力学療法のように超音波照射により液体中で起こるとされる発光(ソノルミネッセンス)により発生する活性酸素種(ROS)に依存した現象である可能性が報告されているが、すべての腫瘍細胞で効果があるわけではなく、細胞の感受性により差がある可能性が示唆された。 2. In vivo実験 SAS細胞をヌードマウス皮下に接種し、作成した担がんマウスに対して、プローブを用いて種々の条件で超音波力学療法の予備的実験を行った。先ず超音波照射単独照射実験で副作用につき検討した。胸部領域に接種した背部皮下腫瘍では3w/cm2, 50duty(%), time (60-180sec), 3MHz条件下でマウスに突然死など致死的な副作用が複数匹に認められたため、マウスの背部皮下腫瘍は腹部領域に限定して作成した。これにより致死的な副作用の回避が可能となった。そこで5-ALAを生食水(0.3ml)に溶かして腹腔内に投与し、3時間後、腹部領域の背部皮下腫瘍に対して比較的弱い照射エネルギー条件下で超音波力学療法の腫瘍抑制効果を検討した。しかし、現在まで比較的弱い照射エネルギー条件下では有意な抗腫瘍効果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である今年度はヒト口腔がん細胞株を用いてIn vitro 及びin vivoの両面から超音波増感剤として5-ALAを用いた超音波力学療法に関するin vitro系での基礎的検討とマウスモデルを用いたin vivo での予備的検討を行った。その結果、超音波力学療法はin vivo(生体内)では超音波の深部組織到達性を反映してか、予想に反しマウスのような小動物では腫瘍移植部位が適切でないと心臓のようなVital臓器に影響を及ぼし、致死的な副作用も起こりうることが判明し、照射の至適条件を確立することが重要であることが明らかとなった。また超音波力学療法の抗腫瘍効果は細胞腫に依存することが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、今回の結果からマウスモデルを用いたin vivo での検討から細胞株の選定とその細胞での至適な照射条件を決めることが重要であることが示唆された。そこで、来年度以降は以下の手順で研究を進める。 1 培養細胞を用いた高感受性、低感受性の検討 今回検討したヒトSAS細胞株はin vitroの検討で5-ALAを用いた超音波力学療法に対する感受性が低いことが判明した。そこで他の数種類のOSCC株を用いて少なくともin vitroでは高感受性を示す培養細胞株を同定する。 2 in vivo(マウス皮下移植モデル)照射至適条件の検討 上記in vitroで高感受性を示す培養細胞株を用いて、in vivoにおいて抗腫瘍効果が最大となる照射の至適条件を検討し、in vivo治療感受性を評価する。同様の検討をin vitroで低感受性を示す培養細胞株についても行い、in vivoにおいても治療感受性が低いか否かを明らかにする。このような検討により5-ALAを用いた超音波力学療法に対する感受性を比較検討し、抗腫瘍効果(細胞死)の機序を明らかにする。また移植部位を皮内、皮下および筋肉内など組織深達度の異なる部位で行い、抗腫瘍効果を比較検討する。
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Causes of Carryover |
実験経費の節約に努めた結果、当該年度に剰余金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用予定である。
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