2016 Fiscal Year Research-status Report
自己由来フィブリンによる成長因子制御と幹細胞を用いた骨・粘膜再生テクノロジー
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15K11307
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
丸川 恵理子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 准教授 (40419263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィブリン / 成長因子 / 骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
疎水化多糖ナノゲル(CHPナノゲル)成長因子の徐放化による骨形成能への影響の検討をおこなった。ラット異所性骨形成モデルを用いて、5㎜角のβ-TCPに各材料を移植直前に含浸させ、ビーグル犬背部皮下内に移植した。4μgrhBMP-2/ナノゲル複合体を含侵させた4μgBゲル群、4μgrhBMP-2を含侵させた4μgB群、同様にBMPを1μgにした1μgBゲル群と1μgB群、同様にBMPを1μgにし凍結乾燥させた凍結1μgBゲル群と凍結1μgB群、何も含浸させない対照群の7群で術後3、6週の骨誘導能を比較した。移植後3週で4μgB群と比べて有意に4μgBゲル群の骨形成が促進されていたが、凍結乾燥なしの1μg BMPではほぼ骨形成は認められなかった。移植後6週では、凍結1μgBゲル群と凍結1μgB群で骨形成を認め、凍結1μgBゲル群はBMP4μg使用の2群と同等の骨形成量が認められた。BMP-2にナノゲルを複合化させることで低濃度のBMPでも骨誘導され、BMP-2/ナノゲル複合体含有β-TCPは臨床応用に際しても安全で有用な骨補填材となる可能性が示唆された。 同時に多糖ナノゲル架橋の有無による骨形成の違いも検討したが、材料の吸収過程に問題が生じ、材料形態を変更する必要があると思われた。 In vitro での徐放化の確認も行い、多糖ナノゲルと成長因子の複合化により、モデルタンパク質としてのインシュリンの長期徐放が可能となることを示した。 また、老齢ラット(1年齢ラット)における低濃度BMP-2/ナノゲル複合体含有β-TCPの異所性骨誘導の検討を行った。若齢ラット(10週齢)の実験結果と比較し、BMP4μg+β-TCP、BMP4μg+CHP+β-TCP、BMP1μg+β-TCP、BMP1μg+CHP+β-TCPのどの群でも新生骨面積の減少を認め、特にナノゲル使用群で骨形成量が低下し、ナノゲルの徐放効果で、骨形成のピークが遅く現れた可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
疎水化多糖ナノゲル(CHPナノゲル)によるBMPの徐放効果で、若齢ラットにおいて低濃度BMP(1μg)でも良好な異所性骨形成が認められたことを報告し、臨床応用へ期待が持たれたが、実際の臨床においては、BMPによる骨再建などの需要は高齢者に多いため、老齢ラット(1年齢ラット)における低濃度BMP-2/ナノゲル複合体含有β-tricalcium phosphate(β-TCP)の異所性骨誘導の検討を行った。 しかし、若齢ラット(10週齢)の実験結果と比較し、BMP4μg+β-TCP、BMP4μg+CHP+β-TCP、BMP1μg+β-TCP、BMP1μg+CHP+β-TCPのどの群でも新生骨面積の減少を認め、特にナノゲル使用群で骨形成量が低下し、ナノゲルの徐放効果で、骨形成のピークが遅く現れた可能性が考えられた。よって、臨床応用には効率良く十分な骨形成が行えるような対策として、BMPの濃度増加(2~3μgへの変更)、FGFやPRPなどの成長因子の添加、骨芽細胞や間葉系幹細胞などの細胞因子の添加などを検討する必要があると考えられた。そこで、当初の予定であったナノゲルを用いたBMPの徐放化は行わない方針とすることとしたため、計画変更となった。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪由来幹細胞を用いて、骨再生能、粘膜再生能の評価をおこなうための準備が進んでおり、組み合わせる人工材料、骨再生であればBMPさらにはBMPの効果を促進するとされているW9ペプチドとの併用効果を検討する予定である。イヌを用いた脂肪由来幹細胞の採取は確立できたため、マウスを用いてさらなる条件を絞り込む。そして、最適化した条件のハイブリッドマテリアルの顎骨欠損・歯肉粘膜欠損への応用を最終的にはイヌを用いて顎骨欠損、粘膜欠損部を作製し、実際の臨床応用モデルで比較検討を行う方針である。
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Causes of Carryover |
若齢ラットの実験結果と比較し、老齢ラットの実験結果においてナノゲル使用群で骨形成量が低下し、ナノゲルの徐放効果で、骨形成のピークが遅く現れた可能性が考えられた。よって、当初の予定であったナノゲルを用いたBMPの徐放化は行わない方針とすることとしたため、計画変更となったことから、実験計画の修正が必要となり、臨床モデルを行うイヌの実験が遅れていることが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、イヌを用いた脂肪由来幹細胞の採取、培養方法は確立されたため、マウスを用いて骨再生能、粘膜再生能の評価を計画中である。また、当初の予定どおり、それらの結果から条件を最適化し、イヌを用いて実際の臨床モデルで検討する。
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