2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K11309
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北村 信隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90224972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳澤 享子 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (60303137)
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80207802)
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70221372)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | mTOR阻害剤 / シロリムス / 口内炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
mTOR 阻害剤(分子標的薬)のシロリムスは、若年女性の希少難病であるリンパ脈管筋腫症(略称LAM)の治療薬(中田ら、New Engl.J.Med. 2011)として、申請者らを中心に医師主導治験が行われ、2014年、世界で初めて薬事承認された。高頻度に発症する有害事象の一つに口内炎がある。それによりしばしば摂食・嚥下や会話等の機能が低下することがあり、投薬の減量や中止を余儀なくされることもある。しかしmTOR 阻害剤による口内炎の発症機序は不明であり、有効な予防法も確立されていない。 そこでまず、シロリムスによる口内炎発症の臨床的研究として、2012年6月から2014年7月までの2年間にシロリムスが投与された63例を対象として、口内炎の発症状況ならびにそのリスクファクターに関する分析を行った。その結果、63例中、56例(88.9%)に口内炎が発症した。口内炎に関するリスクファクター分析により、服薬時のヘモグロビン濃度が低い症例ほど、口内炎の累積発症率が高かった。さらに、シロリムスの投与後、貧血のタイプの指標であるMCV(平均赤血球容積)とMCH(平均赤血球ヘモグロビン量)が経時的に急速に減少したが、その際、最初の3ヵ月でのMCVならびにMCHの減少量が大きい症例ほど、口内炎の累積発症率が高かった。 さらに口内炎に関するin vitroでの基礎的研究として、患者から採取した口腔粘膜細胞を7継代から8継代まで細胞培養した。次いで同培養細胞上にシロリムスを添加し、培養細胞の反応を観察した。その結果、培養細胞の増殖/生存能は50%程度に抑制され、DNA合成能は20%程度低下した。核の面積はシロリムス0nMに比べ、10nMの方が有意に小さくなっていた。細胞の面積はシロリムス0nMに比べ、0.1nM、1nMならびに10nMの方が有意に小さくなっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ヒト口腔粘膜上皮細胞の培養:新潟大学歯学部倫理委員会の承認のもと、同意の得られた患者より口腔粘膜を採取し、無血清培地(EpiLife®)の存在下で口腔粘膜上皮細胞を培養した。 2)シロリムス添加培地による口腔粘膜上皮細胞の培養 3)細胞増殖能分析:リンパ脈管筋腫症におけるシロリムス有効トラフ血中濃度は、5-15ng/mlとされているが、これは、5-15 nMにあたる。ほとんどは、赤血球中に分布しているので、実際に患者の血漿中のシロリムス濃度は、数十pMと思われる。口腔粘膜細胞(8から9継代したもの)を無血清培地中で培養し、そこにシロリムスを添加して、4日目に生残率をMTTアッセイで調べたところ、IC50は、およそ0.2 pMであった。 4)形態的検索:細胞形態については位相差顕微鏡下で観察した。口腔粘膜細胞は、楕円形から紡錘形の付着細胞でるが、シロリムス存在下では小型紡錘形細胞の割合が増加した。光学顕微鏡下で観察、画像化した。 5)表面抗原検索:シロリムス存在下および非存在下で培養した口腔粘膜細胞のAnexinⅤの発現を調べたところ、シロリムスの濃度が高くなるにつれ、発現が上昇した。シロリムス濃度の増加により、細胞死の割合が高くなると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. シロリムスによる口内炎の発症機序を解明するために、ヒト口腔粘膜細胞の培養を行い、シロリムスの存在下での培養細胞の反応を観察している。それにより種々の条件下により、単層培養細胞での実験を行ってきたが、さらに培養細胞を重層化して、より実際の口腔粘膜に近い状態により観察を行う。 2. また、臨床的所見として、シロリムスを長期的に投与すると、口内炎が3ヶ月程度で改善するという所見が認められることから、シロリムス存在下で長期培養を行い、口腔粘膜細胞と短期立ち上がりの口腔粘膜細胞のDifferential Displayを観察する。
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Causes of Carryover |
シロリムスによる口内炎の発症機序を解明するために、ヒト口腔粘膜細胞の培養を行い、シロリムスの存在下での培養細胞の反応を観察している。それにより種々の条件下により、単層培養細胞での実験を行ってきたが、さらに培養細胞を重層化して、より実際の口腔粘膜に近い状態により観察を行いたい。しかし培養細胞の重層化には6週間程度の期間を要するため、補助事業期間を延長する必要が生じた。
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[Journal Article] Risk factors for stomatitis in patients with lymphangioleiomyomatosis during treatment with sirolimus: A multicenter investigator-initiated prospective study.2017
Author(s)
Kitamura N, Seyama K, Inoue Y, Nagai K, Suzuki M, Moriyama H, Takada T, Tazawa R, Hirai T, Mishima M, Hayashida M, Hirose M, Arai T, Sugimoto C, Hattori N, Watanabe K, Tamada T, Akazawa K, Tanaka T, Nakata K.
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Journal Title
Pharmacoepidemiol Drug Saf.
Volume: 26
Pages: 1182-1189
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Risk Factors for Stomatitis in Patients with Lymphangioleiomyomatosis During Treatment with Sirolimus: A Multicenter Investigator-Initiated Prospective Study2017
Author(s)
Koh Nakata,Kuniaki Seyama,Yoshikazu Inoue,Toshinori Takada,Masaru Suzuki,Tsutomu Tamada,Toru Arai,Toyohiro Hirai,Tomohiro Handa,Chikatoshi Sugimoto,Nobutaka Kitamura,Ryushi Tazawa
Organizer
American Thoracic Society 2017 International Conference
Int'l Joint Research