2017 Fiscal Year Research-status Report
気管支平滑筋における静脈麻酔薬のインフラマソーム抑制作用
Project/Area Number |
15K11325
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松本 裕子 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (50221594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 鉱 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (70130523)
山口 秀紀 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (50220273)
小宮 正道 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (40186812)
小野 眞紀子 (池田眞紀子) 日本大学, 松戸歯学部, 助手 (00267113)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 静脈麻酔薬 / プロポフォール / 抗アポトーシ作用 / Akt |
Outline of Annual Research Achievements |
プロポフォールは,作用時間が短く,投与後の蓄積効果が少ないことから,歯科領域でも広く使われている静脈麻酔薬である.近年,プロポフォールの抗炎症・免疫作用や抗アポトーシス作用が注目されており,それらの作用が急性肺傷害患者の予後を改善する可能性が示唆されている.しかしながら,その作用機序に関しては不明な点が多い.我々はこれまでに肺由来培養上皮細胞を用いてプロポフォールの抗アポトーシス作用について検討してきた.肺由来培養上皮細胞において,プロポフォールがSAPK/JNK とc-Jun(Ser73)のリン酸化を介してBcl-2 family memberの発現を調節することによって抗アポトーシス作用を示すことを報告している.一方,AktはサイクリンやCDK阻害因子に作用し細胞周期を調節すると共に,アポトーシス関連因子に作用し細胞の生存を媒介する主要なメディエーターであることが知られている.本研究ではAktシグナル伝達経路におけるプロポフォールの影響について検討した.Hydrogen peroxideは肺胞上皮細胞においてSub-G1 相への細胞移行を促進したが,プロポフォールはHydrogen peroxideによるSub-G1 相への細胞移行を抑制した。プロポフォールはHydrogen peroxideによって誘導されたAkt (Ser473)のリン酸化を抑制する一方で,GSK-3β (Ser9) のリン酸化を促進した.Akt はGSK-3βに対して抑制的に作用し,さらにGSK-3βはCDK阻害因子に対して抑制的に作用する.したがって,プロポフォールはGSK-3βのリン酸化を促進することによって細胞周期を進行させ,その結果として抗アポトーシス作用を現す可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の結果として,プロポフォールはHydrogen peroxideによって誘導されたAkt (Ser473)のリン酸化を抑制する一方で,GSK-3β (Ser9) のリン酸化を促進したことから,プロポフォールはGSK-3βのリン酸化を促進することによって細胞周期を進行させ,その結果として抗アポトーシス作用を現す可能性が示唆された.今後,プロポフォールの抗アポトーシス作用の機序を検討する上で,本知見は重要なものであり,一定の成果を上げられたと思われる.したがって,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
肺,気管または気管支平滑筋由来細胞を用いて,Lipopolysaccharide,Hydrogen peroxideおよびInterleukin-1(IL-1)によって誘導されるインフラマソーム(NLRP1,NLRP3,pro-IL-1)および細胞周期制御因子(P21 Waf1/Cip1,P27 Kip,cyclin D)やアポトーシス関連因子(Bcl-2 family member)に対するプロポフォールの影響について検討する.さらに,その下流にあるCaspase-1の発現と活性について検討することによって,静脈麻酔薬の抗炎症・免疫作用のメカニズムを探る.
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果より,プロポフォールの細胞周期制御因子に対する影響が示唆されたため,より詳細な検討が必要となった.研究結果を精査し,さらに,炎症性因子によるNLRファミリー発現に対するプロポフォールの影響を確認するために,蛋白の発現とリン酸化に関する追加実験の必要があり,補助期間延長申請をし承認されている.したがって,次年度の研究に使用するために繰り越した.また、研究成果を学会発表すると共に論文投稿を行う予定である.
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Research Products
(1 results)