2015 Fiscal Year Research-status Report
新たなシェーグレン症候群疾病因子の解明に向けた唾液腺の病態特異的タンパク質の解析
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15K11327
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
梨田 智子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (10133464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下村 淳子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (00386286)
水橋 史 (高橋史) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (60386266)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 耳下腺 / NODマウス / Bpifb1 / mRNA発現 / 二次元電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の計画は1.NODマウス耳下腺腺胞細胞にBpifb1タンパク質とmRNAが発現していることを証明すること,2.被験者から唾液を採取して凍結保存することであった。 1.糖尿病の有無に関わらず,5~53週齢のNOD(NOD/ShiJcl)マウス耳下腺でBpifb1 mRNAの発現は非常に高かった。しかし,コントロールマウス(C57BL/6 ;C57BL/6JJcl)耳下腺において,8週齢以降ではBpifb1の発現は低レベルを維持していたが,5週齢までの幼若マウス耳下腺腺胞細胞および胎生後期においては高発現を示していた。このことから,Bpifb1は発達過程においても何らかの役割を持つと考えられる。この結果は学会発表し(第57回歯科基礎医学会),学術雑誌に掲載された(Oral Dis 22:46-52, 2016)。一方,Bpifb1タンパク質はNODマウス耳下腺ホモジネートではWestern blottingで確認されなかったが,iTRAQによる網羅的解析により存在が確認された。また,マウス唾液のWestern blotting により,Bpifb1抗体陽性の2つのバンドがNODマウスに,1つのバンドがコントロールマウスに検出された。二次元電気泳動により,NODマウスには糖鎖が結合した2つのBpifb1が存在することがわかったが,アミラーゼもこの抗体に反応することがわかり,コントロールマウス唾液の抗体陽性バンドはアミラーゼであること,NODマウス唾液の1つのBpifb1バンドがWestern blotting ではアミラーゼと重なって検出されたことがわかった(第89回日本生化学会発表)。NODマウス耳下腺の細胞分画から,Bpifb1は分泌顆粒に存在することがわかり,この結果からも唾液中への分泌が示唆された(現在投稿中)。 2については,研究分担者により順調に行われている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NODマウス耳下腺におけるBpifbのmRNA発現上昇については,確証が得られ,論文にまとめることができた。この過程において,このタンパク質mRNAが,正常マウス後期胎生期から幼若時においても一過的に発現すること,および耳下腺では発現しなくなる10週齢以降で,胸腺で発現が継続することが観察され,Bpifb1の新たな役割が示唆された。 タンパク質発現については,これまで明瞭な結果が得られなかったことから,発現に疑問が生じていたが,iTRAQによる網羅的プロテオーム解析によりNODマウス耳下腺におけるタンパク質発現が証明された。細胞分画により得られた画分のWestern blottingから,分泌顆粒にBpifb1が存在することがわかった。このことは,免疫組織染色像の結果を裏付けることになった。さらにBpifb1がNODマウス唾液中から検出され,NODマウス耳下腺におけるBpifb1タンパク質は分泌顆粒に局在し唾液中に分泌されることが確認された。二次元電気泳動によりNODマウス唾液中に2つのBpifb1スポットが検出され,これらはAleuria aurantia レクチン結合性糖鎖を含んでいることが分かった。この糖鎖の影響については今後検討したい。 一方,昨年までのcDNAマイクロアレイ解析結果を用いて,NODマウス耳下腺でBpifb1と同様に発現上昇するmRNAの検索を行った。Bpifb1と同様に発現上昇するものにScgb3a1があり,これについてPCRを行いコントロールマウスでは低発現だが,NODマウスでは高発現することが検証された。
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Strategy for Future Research Activity |
Bpifb1の遺伝子発現を調節する転写因子を同定し,発現調節機構を明らかにするというのが,2年目の目標である。すなわち,Bpifb1およびほかのNODマウス耳下腺で発現する遺伝子に共通する転写因子およびその結合サイトを同定することを計画している。Bpifb1と似た発現をする遺伝子にScgb3a1があることを予備実験から予想している。これらの発現に共通して関与する転写因子をTFSEARCHから抽出する。これまでの検索から,一つの候補としてNF-κBを考えているが,抑制系の転写因子についても同様にして候補を検索する。これらと標的遺伝子の上流結合サイトを決定することが今年度の目標である。 当初の計画だと,ゲルシフトアッセイとフットプリンティングを行う予定であった。しかし,当校のRI施設が今年度閉鎖されるため,アイソトープを使用しない方法で行う必要が生じた。そこで,ChIP-seq法-クロマチン免疫沈降法 (chromatin immunoprecipitation: ChIP) と次世代シークエンサーを組み合わせた解析-を行うこととした。すなわち,マウス耳下腺腺胞細胞を調製し,これをホルマリン固定後超音波破砕し,転写因子抗体を結合させた磁気ビーズとインキュベートして結合DNA断片を得る。この試料についてChIP-Seq 受託解析を委託し,回収したDNAのハイスループットな配列決定を行う。これにより,転写因子結合DNA部分の解明が期待される。NODマウスとコントロールマウス(C57BL/6)を用いて比較解析する。これにより,転写因子の発現レベル変化に相応するNODマウスの遺伝子発現応答がわかる。一方,NODマウスにおいて,上流部分に変異が生じたための発現調節も考えられるので,抑制系の転写因子についても同様に検索する。
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Causes of Carryover |
タンパク質発現確認のために,コントロールマウスとNODマウスの耳下腺のタンパク質について,専門業者によるプロテオーム解析(iTRAQ)の受託解析を予定していた。しかし,受託解析キャンペーンを行っていた業者があったので,この期間中にこの業者に委託したため,解析に掛かった費用が予想よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この金額は次年度に消費する。次年度予定している受託解析が高額であるため,その経費に充てたい。また,論文投稿料や旅費の支払いに充足する予定である。
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Research Products
(3 results)