2016 Fiscal Year Research-status Report
エナメル質を保全できる矯正歯科治療―大気圧低温プラズマと蛍光物質の応用―
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15K11334
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山方 秀一 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (70292034)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エナメル質 / 表面改質 / 大気圧低温プラズマ / ランタノイド / 蛍光 / 矯正装置 / 接着 / ボンディング材 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正歯科治療で不可避とされているエナメル質損傷の低減または回避に向け、健全エナメル質を保全する先駆的かつ臨床的意義の高い治療法の構築を目指して当該研究課題に取り組み、以下の成果を得た。 大気圧低温プラズマの応用に関しては、初年度と同様にペン型大気圧低温プラズマ発生装置(窒素ガス)およびステンレス鋼(SUS430)を用いて評価を行った。表面改質の好適条件として、初年度に明らかにしたプラズマ照射時間10秒、照射距離10 mmを適用した。X線光電子分光装置(XPS)を用いた計測結果から、各種表面処理(プラズマ照射、プライマー処理、プラズマ照射+プライマー処理)を行った試料のうち、プラズマ処理単独の場合にのみ水酸基による531.5 eVのピークが認められることを明らかにした。また、4-META/MMA-TBBレジンで接着した場合の剪断強さは、プライマー処理を行っていない群で30 MPa以上と高く、なかでもプラズマ処理単独の場合に最大となることを明らかにした。 蛍光ボンディング材の開発に関しては、均一沈殿法で合成した中間産物を800、900、1,000、1,100℃の4条件で焼成して得たユウロピウム賦活酸化イットリウム(Y2O3:Eu3+)微粒子(Eu/Y比:8 mol%)を用いた。発光中心(Eu3+)を直接励起または間接励起させることで得た蛍光極大波長から、直接励起の場合には900℃焼成試料が、間接励起の場合には1,100℃焼成試料がもっとも強い蛍光を発することを明らかにした。直接励起で900℃焼成試料の蛍光が最大であったのは、800℃の場合よりも発光中心数が多いこと、かつ、1,000℃以上の場合よりも母結晶(Y2O3)の結晶化度が低い、すなわち結晶場の空間反転対称性が低いためEu3+の4f電子の電気双極子遷移が許容となりやすかったことが理由である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規性の高い材料開発の領域では、その作製方法に通法と呼べるものは特にないため、作製方法のプロトコール確立に多大な時間と作業が必要となる。初年度から本年度までを通して高い品質管理を保ってY2O3:Eu3+微粒子の作製が可能となっていること、ならびに各実験から今後の展開にとって有益な結果が得られたことは特筆に値する。特に、発光中心(Eu3+)の励起波長として利用し得る253 nm(間接励起)および395 nm(直接励起)のうち、前者は強い蛍光を得られるものの生体に対する破壊性が極めて高いUVCであるため口腔内への応用は禁忌である。そのような観点からも、ほぼ可視光域に近い395 nmに励起極大波長を持つEuを選択し、蛍光の量子効率を最大限に引き出せる微粒子の作製に目途がついたことは非常に大きな成果であったといえる。 また、既に、大気圧低温プラズマの応用に関しては歯科用金銀パラジウム合金試料の表面化学結合の分析ならびに剪断試験による接着強さの評価、蛍光ボンディング材の開発に関しては牛歯エナメル質への接着強さの評価を行うための準備が整っており、最終年度の研究遂行に向けて順調な進捗状況にあると判断している。これらの実験の継続実施および展開によって十分な成果が得られる見込みであることに加え、Eu3+錯体を用いる蛍光ボンディング材に関する実験の推進に関する準備も整っていることから、研究期間全体で予定どおりの成果が得られるものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず平成27、28年度の研究成果に基づいた検証実験に加え、窒素ガス大気圧低温プラズマによる表面改質に関してはXPSによる金銀パラジウム合金および牛歯エナメル質試料表面の化学結合状態の解析を、矯正歯科用ブラケットの接着強さに関しては剪断試験および引張試験を行う。この際、プラズマ照射は金銀パラジウム合金へのプライマー処理効果を増大させると予測されるため、これを定量評価する。また、八フッ化プロパン(C3F8)ガス大気圧低温プラズマによるエナメル質表面の疎水化処理を開始する。これは、ブラケット接着後に周囲エナメル質を疎水化することで細菌叢吸着の抑制、耐酸性の向上を試みる実験として位置付けられる。上記の実験から得られる成果は、将来的に既存のペン型大気圧低温プラズマ発生装置を小型設計化することを視野に入れた戦略的検討の基礎となるものであり、当該研究課題の展開領域へとつながる重点項目といえる。 矯正歯科用ボンディング材への蛍光視認性の付与に関しては、発光効率に与える焼成温度の影響を評価する追加実験として、850および950℃で焼成して得られる各微粒子の励起および蛍光スペクトルを測定し、効果的な焼成温度を特定する。また、X線回折装置(XRD)による微細構造の評価ならびにエネルギー分散型X線分析装置(EDS)による元素マッピングに基づく構成元素の解析を行い、Y2O3へのEu3+ドーピングの限界を物理量として明らかにしていく。さらに、蛍光微粒子を添加したボンディング材による矯正歯科用ブラケットの接着強さに関し、剪断試験および引張試験を実施し評価に充てる。一方で、Eu3+錯体[トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(III)]の応用に関し、蛍光強度や接着強さなどの実験を通して最適な添加率を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)は、平成29年3月までの使用計画に従った発注・納品に伴って発生した純粋な未使用残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(B-A)は、次年度助成額の使用計画を再編しなくてはならないほど大きい額ではないため、平成29年度助成額へ組み入れられることにより、当該研究課題開始当初に計画したとおりの予算執行によって意義ある支払いに確実に充てられる予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Estimation of Biocompatibility of Nano-sized Ceramic Particles with Osteoblasts, Osteosarcomas and Hepatocytes by Static and Time-Lapse Observation2016
Author(s)
Abe S, Seitoku E, Iwadera N, Hamba Y, Yamagata S, Akasaka T, Kusaka T, Inoue S, Yawaka Y, Iida J, Sano H, Yonezawa T, Yoshida Y
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Journal Title
Journal of Biomedical Nanotechnology
Volume: 12
Pages: 472-480
DOI
Peer Reviewed
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