2016 Fiscal Year Research-status Report
SR-XRFおよびICP-MSを用い微量金属元素の口腔粘膜沈着メカニズムを探る
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15K11343
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
簡野 瑞誠 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (40345301)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ICP-MS / SR-XRF / XAFS / trace elemental analysis / 矯正装置 / 金属溶出 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科合金の生体への影響に関して、口腔内におけるその溶出量は微量であり毒性は低いとされている。一方、金属溶出量が微量であるためその検出は困難であり、口腔粘膜への金属の蓄積や分布については明らかにされていない。本研究では金属ワイヤー(Ni, Ni-Ti, Co-Cr)を縫合した頬粘膜中に蓄積した金属を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)にて定量を行い、その金属元素の分布を微量元素分析・微細領域分析が可能である放射光蛍光X線分析(SR-XRF)を用いて、さらにその金属の状態をX線吸収微細構造測定(XAFS)にて分析した。SR-XRFより、金属縫合側頬粘膜ではいずれの金属も口腔粘膜結合組織領域への浸透が認められた。XAFS測定では、Ni、Coが溶出金属に由来する水和イオンとして、Crが酸化物としての状態で存在することが明らかになった。以上の内容は、Dental Materials Journal 2015; 34(6): 814-821 に掲載された。 以上の結果から、溶出金属が粘膜内部に浸透するためには直接の接触が必要であること、そしてNi-Ti合金は50%Niを含有するにもかかわらず、Niの溶出は限定的であることが明らかとなった。そこで、金属表面にRhメッキを施し、ラット口腔粘膜への接触ならびに粘膜下への埋入にて溶出試験を行った(未発表)。その結果、Niに関しては、粘膜接触群、粘膜下埋入群ともに、RhメッキによりNiイオンの溶出が大幅に抑制されたことがSR-XRFにて確認された。一方、NiTiに関しては、両群ともに、そしてRhメッキの有無にかかわらず、Niイオンの溶出は確認できなかった。(未発表)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SR-XRFにより、Rhメッキの効果が実験動物において確認できたため、現在in vitroにおける検証を進めている。具体的には、金属試料(Ni, NiTi, CoCr)にRhメッキを施し、人口唾液などにおける浸漬実験を行う。概ね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度では、in vitro環境下でRhメッキによる金属イオン溶出抑制効果について検証を行う。ICP-AESによる溶出金属イオンの定量分析に加え、SEMを用いた金属試料の表面解析を行い、学会発表および論文作成を進める。
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Causes of Carryover |
施設利用料の負担が生じなかったこと。実験の進行が予想以上に円滑であり、使用動物や機材にかかる費用を節約できたこと、そしてメッキ関係の費用を計上していたが、サンプル提供に費用が発生しなかったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度のin vitro実験における試料作成、電顕などの使用料、論文投稿関連費用などに用いる予定である。加えて、他種のメッキに関する検討や、矯正材料への応用についての研究・調査費用に充てる。
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