2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K11354
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
納村 泰弘 日本大学, 歯学部, 講師 (80386078)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 典佳 日本大学, 歯学部, 教授 (40154299)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 大気圧プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科領域における大気圧プラズマ照射応用に向けた基礎的実験解析を行っている。平成27年度において研究経費が減額で採択されたことから、大気圧低温プラズマ装置が当初の実験計画で計上したものとは異なる機種になったため、ガス種条件の検討を窒素にのみ照射条件として設定し、多種金属試料について検討する計画に変更した。そして金属への大気圧プラズマ照射における被照射面について、エネルギー成分が既知の液体を使用して接触角からその表面自由エネルギーを測定し、金属表面の水素結合力、双極子間力としての分子間力が働いてそのエネルギーの増加が照射によってみられることが分かった。そのため28年度の実験として、用いられていた金属についてX線光電子分光分析(XPS)によってその照射面での組成元素をもとに化学状態の変化を解析した。XPSにおける解析では、Ti合金(Ti-6Al-4V)については、チタン(2p3/2)のほかにアルミニウム(2p3/2)、ステンレススチール(SUS304)については、鉄(2p3/2)、ニッケル(2p3/2)、クロム(2p3/2)の主元素(電子軌道)を調べ、それぞれ高結合エネルギー側へのシフトがみられ、酸化状態に向かって主要元素として高い反応性を示していた。また、プラズマ照射された金属表面への歯科矯正用接着材の適用による接触角についても測定した。それらは照射数秒において有意に減少した。さらに被照射試料として貴金属も対象とし、前年同様表面自由エネルギーについて測定のため、エネルギー成分が既知の液体からYoung-Dupreおよび拡張Fowkesの式を用いて、双極子相互作用、分散力、水素結合などの表面自由エネルギーの成分を検討し、Ti合金やステンレススチールと同様の表面自由エネルギーの増加がみられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度として実験計画に従って装置購入した大気圧低温プラズマ装置は、研究経費が減額で採択され当初の機種とは異なったため、照射条件を窒素にのみ設定して検討する実験計画に変更し、平成27年度よりプラズマ照射した金属面での表面自由エネルギーを接触角から算出し、照射による分子間力に起因するエネルギーの増加という成績を得た。平成28年度として、その表面自由エネルギーを測定したTi合金、ステンレススチールについて、X線光電子分光分析により定性分析や化学状態を解析することに至った。それらは、照射による表面自由エネルギーとしての増加の影響が、表面元素での酸化状態と密接な結果を示しており、加えて特定元素の減少が確認されたため、相対的に照射面の金属元素が高エネルギー状態に帰することで表面自由エネルギーが増加したことが推察された。したがってその効果から、照射された金属面は、より電荷に起因して親水性へと機能を持ったものと解釈でき、当初の計画との変更点はあるものの、照射による効果の解明についておおむね順調に成果を得ている。さらに、分子間力の増加をもたらす分子の誘導、定着について応用が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度および28年度より得られたデータの一部として、プラズマ照射の被照射面の効果および歯科矯正用接着材の適用によるその効果を、計画立案していた通りアメリカ矯正歯科学会(サンディエゴ)にて成果報告することを平成29年度初頭に行う。またさらに大気圧プラズマにおける装置の応用範囲を検討するため、今年度更に行った貴金属試料に加え、再度その他の試料にプラズマガスとして使用した窒素のプラズマ処理時間等における照射条件を設定し、表面の化学状態を更にX線光電子分光分析にて測定することで評価する。更に高反応状態である照射面において、定着する有機化合物を探索する。
|
Causes of Carryover |
X線光電子分光分析に用いる消耗品や分析より得られたデータの解析に使用するコンピュータについて、当初の研究計画立案時に考えていた価格より安く購入できたため繰越金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金(23,178円)と29年度助成金を合わせて、次年度において金属試料、試料に適用する試薬および試料洗浄用試薬や、表面分析に用いる消耗品および成果報告における旅費、外国語校閲費として使用する。
|