2015 Fiscal Year Research-status Report
骨系統疾患に対する歯科からの基礎的・臨床的アプローチ
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15K11364
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大川 玲奈 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (80437384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 周平 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10589774)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨形成不全症 / 低ホスファターゼ症 / 遺伝子治療 / 酵素補充療法 / セメント質形成不全 / 象牙質形成不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主要な骨系統疾患である骨形成不全症と低フォスファターゼ症の全国実態調査によって歯科データベースを作成し、歯科診療ガイドラインの策定を試みることを目的としている。また、低フォスファターゼ症モデルマウスにおける歯科的症状および遺伝子治療がモデルマウスの歯科的症状に与える影響を解析する。さらに、現在臨床試験が行われている酵素補充療法がヒトの歯に与える効果を分析し、歯科的意義を明らかにしたいと考えている。 まず、全国の小児歯科関連69施設および口腔外科関連465施設を対象とし、骨形成不全症に罹患した症例の有無を問い合わせ、症例の内容について情報提供を依頼した。また加えて、本学小児歯科の登録患者約2000名から骨形成不全症を有する患児を抽出し、カルテの記載やエックス線写真をもとに臨床所見および処置内容に関して分析した。小児歯科関連施設および口腔外科関連施設合わせて82症例(男性43名、女性37名、無回答2名)の情報提供があった。本学小児歯科にて抽出された骨形成不全症罹患患児は27症例(男児12名、女児15名)であった。これらの合計109症例のうち、象牙質形成不全が認められたのは67症例であった。 また、低ホスファターゼ症モデルマウスの歯科的症状と遺伝子治療の歯科的影響を免疫組織学的手法およびマイクロCTを用いて評価した。低ホスファターゼ症モデルマウスでは、ヒトと同様にセメント質形成不全を認めた。遺伝子治療を行った低ホスファターゼ症モデルマウスでは、セメント質の形成を認め、歯槽骨の骨密度も改善したことから、低ホスファターゼ症モデルマウスにおける遺伝子治療の有効性が示された。 さらに、低フォスファターゼ症罹患患者への酵素補充療法の歯科的評価を開始した。本年度は1名の患児の酵素補充療法開始前の歯科的診査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、骨形成不全症の全国実態調査のデータ収集、低ホスファターゼ症モデルマウスの歯科的症状の解析とを終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り推進していく予定である。 まず、全国実態調査および個々の症例研究から得られた情報を集積し、骨系統疾患の歯科データベースを構築し、歯科診療ガイドラインを作成する。これらの成果は、学会発表および論文発表、インターネットによる発信によって、広く世間に公表していく予定である。骨形成不全症、低フォスファターゼ症の予後改善に向けた補綴治療の介入研究 さらに、骨形成不全症の象牙質形成不全に対しては、乳歯既製冠による歯冠補綴、低フォスファターゼ症の乳歯の早期脱落に対しては、小児義歯による暫間補綴といった歯科的対応を行い、その予後について評価する。 そして、胎児遺伝子治療がモデルマウスの歯科的症状に与える影響として、TNALP遺伝子をレンチウイルスベクターで導入した骨髄細胞を妊娠15日齢の胎児低フォスファターゼ症モデルマウスに移植し、1か月生存したマウスの下顎骨を摘出後にマイクロCTを用いて第一臼歯近心根周囲の歯槽骨の骨密度を算出する。脱灰後、通法に従い、前顎断薄切切片(第一臼歯近心根付近)を作製し、Osteopontin、DMP1、Runx2、TRAP、Osteorix抗体の免疫組織化学染色を行い観察する。コントロールとして、未治療モデルマウス、野生型マウスも同様の実験を行う。
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Causes of Carryover |
計画はおおむね順調に進行しているものの、ごく一部分析ができなかったものがあるためである。全国調査については、低ホスファターゼ症について、さらなる追加調査が必要となった。また、低ホスファターゼ症のモデルマウスを用いた遺伝子治療の評価において、追加実験を行うこととした。さらに、低ホスファターゼ症罹患患者への酵素補充療法の歯科的評価については、評価対象となる患者数が少なかったため、分析ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度初頭に速やかに遂行する。全国調査については、低ホスファターゼ症について、さらなる追加調査を行う。また、低ホスファターゼ症のモデルマウスを用いた遺伝子治療の評価において、さらに詳細な月齢での追加実験を行うこととした。さらに、低ホスファターゼ症罹患患者への酵素補充療法の歯科的評価については、評価対象となる患者数の集積を図り、詳細な分析を続ける予定である。
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