2016 Fiscal Year Research-status Report
OFCD症候群における乳歯歯根吸収不全と長根形成に対する生化学的研究
Project/Area Number |
15K11369
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西口 美由季 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10253676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 卓 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00228975)
星野 倫範 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00359960)
釜崎 陽子 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (30253678)
佐藤 恭子 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (70404499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | OFCD症候群 / radiculomegary / 歯根吸収不全 / 歯髄細胞 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)遺伝子解析:OFCD症候群である患者から得られた唾液を検体として行ったDNAシーケンスの結果を既発行しているBCORシーケンスGenBank AF317391)と比較し、本患者のBCOR遺伝子のフレームシフト突然変異を認めた。(c.2559_2560insA) (2)歯髄細胞培養1.歯髄細胞培養保存:OFCD症候群児から歯根吸収無しの乳歯1本、歯根吸収開始初期の乳歯1本、脱落器の乳歯1本からの歯髄細胞を培養保存、コントロール用として健常児の交換期にて抜歯を行った乳歯5例の歯髄細胞を増殖保存した。2.歯髄細胞の増殖能の検討:患児(歯根吸収無し)1例、コントロール群(3例)間での細胞増殖試験を行った結果、患児の細胞増殖能が最も高かった。このことからOFCD症候群では間葉系幹細胞数も多いと予測された。3.TRAP染色:細胞増殖試験を行った4群で歯髄細胞を破骨細胞分化培地にて1週間培養後TRAP染色を行った。TRAP染色された細胞を破骨細胞としてその形成能を比較したところ、患児の歯髄細胞では全くTRAP染色の反応が認められなかった。その他の3例では破骨細胞す示す多核細胞の形成はなかったが、染色された単核細胞が認められた。このことからOFCD症候群の歯髄細胞では正常の歯髄細胞と比較し破骨細胞前駆細胞の存在が極端に少ないことが示唆された。4.各歯髄細胞からのRNA抽出:得られたRNAよりcDNAを合成し、骨芽細胞形成能、破骨細胞形成能また間葉系幹細胞存在の差異ををそれぞれのマーカーを用い、RT-PCRにて比較するため、各歯髄細胞のRNAの凍結保存を行った。 (3)歯の形態解析:抜去歯の計測にて患児の乳歯の歯根はは有意に長かった(radiculomegary)。また通常では歯根吸収が始まり、既に脱落時期である歯の歯根尖が残っていることから吸収に関わる何らかの異常があることが予測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)多くの口腔異常を持つOFCD症候群を疑った患児の唾液から得たDNAによる遺伝子解析よりOFCD症候群の原因遺伝子とされるBCOR遺伝子の変異を確認した。 (2)患児と比較すべきコントロール群の必要な症例数の歯髄細胞については十分量の凍結保存が出来ている。得られた歯髄細胞の増殖能、形態比較は既に行った。破骨細胞分化培地を用いた実験では破歯細胞形成能の差異も認めた。得られた結果からOFCD症候群では破骨細胞前駆細胞出現が極めて少ないか、出現の時期が大きく遅れるのかという仮説、OFCD症候群では間葉系幹細胞が多く存在するという仮説を確認するために様々な遺伝子マーカーを用いたRT-PCR法での比較検討を最終年度に予定している。このためコントロール群を含めてそれぞれの群の歯髄細胞からRNAを抽出、凍結保存している状況である。骨芽細胞分化培地にて骨芽細胞形成能の比較のみがやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本年度は先ず、骨芽細胞分化培地での培養後ALP染色を行い各群のその形成能の比較を行う。また破骨細胞分化、骨芽細胞分化について比較群を増やしての再度の再実験を予定している。 (2)RTにより、RNAからcDNAを得た後、骨芽細胞、破骨細胞分化マーカー(RANK,RANKL,OPG,ALP,M-CSF,BMP,RUNXS,OCN,OCT)を用いてRT-PCRにて骨芽細胞、破骨細胞形成能を遺伝子レベルで比較する。また間葉系幹細胞の歯髄細胞中の存在を間葉系幹細胞評価プライマー(DPPA5,Nanog,Oct-3/4,SOX2,Otx2,AFP,SOX17,etc.)を用いて評価する。 これらは既に使用薬品、物品を含めて準備が整っているため、実験遂行し、結果をまとめる。 (3)症例報告および研究結果をまとめた論文作成の予定である。
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Causes of Carryover |
論文(症例報告)校正費用として準備していた費用である。作成が遅れたことにより未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度校正費用として使用する予定である。
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