2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K11373
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
荒井 清司 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (90453886)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 歯根膜 / 外傷 / 再植 / 外部吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科臨床において,完全脱臼を伴う外傷に遭遇することかが多い。完全脱臼した歯を再植した場合, 予後を左右するのは歯根膜細胞の状態である。脂肪細胞はエネルギー貯蔵庫だけでなく様々な生理活性物質を産生,放出する内分泌器官であることが明らかとなってきた。脂肪由来幹細胞 (Adipose tissue Derived Mesenchymal Stem Cell:以下 Ad-MSC)は,採取が容易である一方,多くの間葉系幹細胞を含み骨芽細胞などの間葉系に即する細胞への分化能を有するとされている 。 予め各イヌより脂肪採取を行い,無血清培地を用いて脂肪幹細胞培養を行った。生後3年齢のビーグル犬8匹(雄,約10 kg)を実験に供した。グループ1.乾燥(抜歯後120分で再植)グループ2.牛乳(抜歯後120分間牛乳浸漬後再植)グループ3.乾燥+Ad-MSC(抜歯後120分経過の後Ad-MSCを歯根膜周囲に塗布後再植)グループ4.牛乳+Ad-MSC(抜歯後120分間牛乳浸漬Ad-MSCを歯根膜周囲に塗布後再植)として再植した。再植後,スプリントとコンポジットレジンにて固定を行った。,通法に従いH.E.重染色およびTRAP染色を行った。 TRAP陽性細胞の存在から破歯細胞による外部吸収が確認された。Ad-MSCを応用したグループ3,4はグループ1,2と比較して有意に外部吸収が少なかった (p<0.05) イヌ外傷モデルにおいて完全脱臼して60分経過すると歯根膜細胞の変性が生じてくる。今回120分経過してAd-MSCを応用して再植した場合、歯根膜周囲の治癒が良好であることが明らかとなった。Ad-MSCに多く含まれる間葉系幹細胞が歯根膜周囲で治癒していく中で有効に作用したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪幹細胞の培養は順調に推移しており、動物実験においても当初予想していた結果を得られている。 脂肪幹細胞を培養する上で、幹細胞マーカーである表面マーカーのCD13,CD29,CD105が確認されており、自家移植を行う上でのin vitro上での問題点は少ないと思われる。また脂肪幹細胞の品質においても問題は少ないと思われる。動物実験においても歯牙脱臼に伴う外部吸収モデルの作製は順調である。イヌ2匹を購入し、実験を実施し、研究調書に基づいた動物実験を行った。歯牙脱臼に伴う外部吸収モデルを作製し、歯根外部吸収を生じる状態の歯に対して脂肪幹細胞を応用して歯根外部吸収抑制効果を検討している最中である。実験終了時のマイクロCT撮影による結果は、外部吸収抑制に効果が認められる像を確認している。免疫染色の結果からも外部吸収抑制効果が認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、実験計画およびスケジュールは順調である。今後、脂肪幹細胞の外部吸収抑制効果の解明と実験の信憑性の観点からn数を増やすこと 以上の2点をクリアしていくことが重要であると考えられる。 外部吸収抑制の解明に関しては、脂肪肝細胞の局在(脂肪幹細胞がどこで定着していくのか)という疑問点と過去の論文などで報告されている抗炎症作用の証明が重要となると考えており、脂肪幹細胞を生細胞染色キットを用いてラベリングした状態での脂肪幹細胞局在解明を行っていく予定としている。局在を明らかとすることで外部吸収抑制の解明の一助となると思われる。 抗炎症作用の証明はiNOSによる染色を行い、コントロール群との比較検討を行っていく予定としている。 今後も同様の実験を繰り返しながら、n数の確保および上記した条件での実験を行っていく予定としている。
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Causes of Carryover |
動物実験を行い、病理組織学的検討を行っている最中である。イヌ顎骨および歯を脱灰を行い病理組織学標本作製を業者に依頼して実施している。脱灰期間を3か月と予定していたが4か月程度かかってしまい、委託分の見積もりや納品に時間がかかってしまったため、年度内での予算執行が困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度分と併せて病理組織標本委託費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)