2016 Fiscal Year Research-status Report
近赤外分光法(NIRS)による外科的矯正手術前後の顎口腔機能の把握
Project/Area Number |
15K11374
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
遠藤 敏哉 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (80152015)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外科矯正 / 咀嚼機能 / 近赤外分光法(NIRS) / 赤外線サーモグラフィー / 機能訓練 / 循環動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
非侵襲型測定が可能な近赤外分光法(NIRS)の応用範囲は急速に拡大しており、今後は矯正歯科領域での機能訓練や、介護予防等の現場でも導入できる可能性が拡大している。特に申請者らが導入した携帯型NIRSは、フィールド等の調査にも活用しやすく汎用性は極めて高い。顎口腔機能評価を対象とした本測定システムは、構築途上の段階にあるため、術後の炎症の影響や外科矯正術式等の影響が出ていないか、再現性を慎重に確認する必要があり、温度変化中心のみを測定点とする現行の方法に関しても本年度中に検証を実施した。 特に咬筋など咀嚼筋の特徴を考えた場合、筋線維のミオシン構造やOxidative代謝などの差異により、侵襲の拡大や固定による廃用変化など、サテライト細胞の感受性は状況により異なると考えられ、これら変化の包括的モニター指標としても、サーモグラフィー熱画像解析が有効と考えられた。冷却負荷に伴う温度低下に対しては、温度上昇中心の存在が全対象者で確認でき、第一段階の測定系の再現性の確認までは終了した。 また、時系列的な分析結果に関しては、NIRSの波形に生じる振幅から咀嚼同期性や咀嚼巧緻性などの点から検証が可能かを確認した。これは固定の解放直後でもタッピングが可能な対象者が大部分であり、術前との比較から恒常性維持の面から傾向を把握した。 本年度中にシステムドライバにトラブルが発生し、予定していた測定対象数の確保は困難だったが、健常者での基礎データ収集からも同様に血流回復の状況を観察でき、全対象者でOxy-Hb、Total-Hbともに1a.u.を超える回復が確認できた。冷却負荷後の血流回復領域は温度変化中心から半径3~4cmの範囲に分布しており、多くの症例で同心円的に温度上昇が確認できたが、測定域下部の顔面動脈と推測される領域から上昇する者もあり、この点については次年度に向けて解析を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
頬部の深部血流動態の測定に使用していた携帯型近赤外分光分析法(NIRS)のシステムは、開発業者に依頼し独自に本研究用に4チャンネル化したカスタマイズしたものである。このシステムドライバを搭載したセンサードライバ用PCのSSDに不具合が発生し、その修復と原因究明、修正ドライバおよびソフトの供用を受けるまでに約5か月を要した。また、対照として前頭部に測定点を置いていたが、開発業者が同部測定に特化した遮光用治具を新たに開発し、再現性向上のためこれを導入したため、システムの再構成に時間を要した。これら理由のため測定が遅延したため(修復期間は既存データの解析および健常者の熱画像分析を主体に研究を遂行した)。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、口腔周囲の筋肉のうち最も咀嚼に関連する咬筋に対象を絞り、外科矯正手術によるサルコぺニア様の変化等を把握可能な、再現性の高い機能賦活の評価指標が必要と考えている。 これは矯正歯科領域だけでなく介護予防等の観点から、筋パワーユニットの廃用的変化への対策に寄与すると思われる。また、摂食嚥下や咀嚼を中心とした顎口腔機能支援の定量的かつ直接的評価を可能とするためにも、近赤外分光法(NIRS)による簡便な評価法を開発することで、歯列形態と顎機能との関連を容易に把握することも可能になると考えられる。これらの点を中心に、咬筋部の深部血流動態の変化を引き続き捕捉し、マッサージや機能訓練の効果確認等が可能かを検証し、それら過程から発展性のある賦活指標の開発に向けた基礎資料の収集を実施したい。 また、本研究により得られた基礎資料については、解析が終了したものから順次関連学会に報告したい。
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Causes of Carryover |
使用していた携帯型近赤外分光分析法(NIRS)のシステムドライバを搭載した専用PCのSSDに不具合が発生し、その修復と原因究明、修正したシステムドライバ、ドライバ用PCの更新を開発業者から受けるまでに約6か月を要した。この期間はNIRSでの測定が不可能となり研究遅延期間が生じた(測定システムの修復期間中は、既存データの解析と文献的検証を主体に研究を遂行した)。また、新規に対照用頭部センサー部の遮光用治具を導入したが、この使用の慣熟にも時間を要したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
開発業者に携帯型近赤外分光分析法(NIRS)のシステムドライバの信頼性向上を目的とした更新を依頼し、年度内にドライバ用PCを安定性の高い機材に変更し、ソフトもダウンしにくいものに改修した。次年度は研究最終年度となるため測定を急ぎ、予定の対象数を次年度中に確保する予定である。また、並行して成果報告に関する準備にも活用する。
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