2017 Fiscal Year Research-status Report
歯周炎組織中におけるアルツハイマー病原因分子のネットワーク解析
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15K11382
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
久保田 健彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (50303136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 歯学 / アルツハイマー病 / 歯周病 / 遺伝子発現 / 免疫学 / 病理学 / タンパク質局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)は、加齢・炎症に伴う歯周病関連全身疾患とされながら相互関係や生物学的関連メカニズムに関しては不明な点が多い。ADはamyloid beta A4 precursor protein (AAP)タンパクが遺伝・加齢・炎症に伴い蓄積するとことが一因となることが解っており、その合成と分解のバランスには、ネプリライシン(Neprilysin NEP) 等の生体酵素が重要な役割を果たす。我々はこれまで、歯周炎罹患歯肉組織で、アルツハイマー病関連遺伝子群が発現亢進していることを発見した(J Periodontal Res 2011) 。 本研究では、ADに共通する炎症関連遺伝子群・生物学的経路に着目し、慢性歯周炎により歯肉組織破壊をきたした病変部における、アルツハイマー病原因分子:APPタンパク、beta-site APP cleaving enzyme: BACE、Presenilin: PSEN及びネプリライシン(Neprilysin: NEP) の遺伝子発現量を定量し、そのタンパク質組織局在・ネットワークを比較することにより機能を検索する。 既に、歯周炎罹患歯肉局所でのAPP発現細胞同定、更にその発現量の亢進を報告した(Kubota et al, Archs Oral Biol 2014)。 APP, BACE, PSEN, NEPは、相互に協調して機能しておりこれら遺伝子発現解析は、慢性炎症による歯周炎組織破壊と原因不明な加齢関連炎症性疾患であるADとのつながりを考える上できわめて貴重な結果をもたらすことが期待される。これまでの解析結果よりNEPの遺伝子発現とタンパク発現局在が明らかになり、後述の国際学会にて発表し、国際口腔生物学雑誌に報告した。更なるネットワーク解析予定でありすでに研究を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APP,NEP 遺伝子発現レベル及びそのネットワークの解析:ヒト重度慢性歯周炎患者歯肉(n=15)におけるAPP, NEPの遺伝子発現レベルを、臨床的健常部位歯肉(n=15)における遺伝子発現レベル比較解析をした。APP, NEP転写レベルの有意な亢進が認められた。サンプルは、適宜追加、総RNA抽出して-80℃ 保存している。 APP, NEP タンパク発現責任細胞の同定および炎症歯肉組織中局在の検索:ヒト重度慢性歯周炎歯肉中のAPPのタンパク質の局在について特異抗体を用いて解析した。パラフィン包埋後、5ミクロン薄切切片を作成して HE及び免疫組織学的染色用に 保存している。これまで順調に解析を進め、APP発現細胞は主としてCD68陽性マクロファージ系細胞を同定し、NEPに関しては 炎症の程度によりその発現細胞に違いが見られ 主として好中球、あるいは線維芽細胞に発現を認めた。 国際学会(American Academy of Periodontology 2016) 及びInternational Academy of Periodontology 2017 にて発表した結果、IAP Excellent Basic Research Award を受賞した。Supplement が、J Int Academy Periodontol 19 (4): S-5, 2017に、Full paper としてArcheives of Oral Biology, 79: 35-41, 2017, DOI: 10.1016/j.archoralbio.2017.03.003 に受理掲載された。 今後は、beta-site APP cleaving enzyme: BACE、Presenilin: PSENについても解析予定であり準備も始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
更なる解析のために、試料のサンプリングを継続し適宜RNA、パラフィンブロックとして保存する。先のAPP論文は、歯周炎組織に於いて初めてAPPの遺伝子発現の上昇を報告した論文としてPLOS ONE 2016、Alzheimer's Dis 2016, Frontier in Aging and Neurosciences 2018. Periodontology for Geriatric Patients 2018をはじめ歯周炎とADの関連を研究するResearchersにより引用されてつづけている。 国内外の研究を注視しながら「歯周炎罹患歯肉組織中におけるAPP, 遺伝子発現の上昇とマクロファージによるAPP産生」ADの病理と結びつくのか?あるいは、慢性炎症共通の発現動態なのか?アミロイドの関与は?などについて研究を発展させている。具体的には、APP調節遺伝子群:Neprilysin (NEP), アスパラギン酸プロテアーゼ、BACE1, ADAM-10, 17, ADAMTS-1 と その最終産物でありアルツハイマー病の主因子であると考えられているAmyloid betaがどの程度歯周炎局所で発現しているのか?研究中である。 本研究は、先述したように一部遺伝子発現・統計解析、免疫組織学的検索結果が出てきており、その研究成果をまとめ近く歯周病国際学会にて報告し国際医学専門誌に投稿する予定である
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Causes of Carryover |
当該年度は、研究が順調に推移し、消耗品、物品費の他、国内外学会の発表・旅費及び部論文執筆のため費用が使用され概ね予定通りであったが、サンプリングが少なかったためRNA抽出試薬等の消耗品の使用が当初予定よりも少なかった。 次年度は、国際学会に発表のための旅費を予定しており、継続して以下の研究計画を遂行するため本年度の残額を加えた費用を使用予定である。 更なる解析のために、試料のサンプリングを継続し適宜RNA、パラフィンブロックとして保存する。APP, NEPの歯周炎罹患歯肉組織での発現は慢性炎症共通の発現動態なのか?アミロイドの関与は?APP発現調節遺伝子群:NEP, アスパラギン酸プロテアーゼ, BACE1, ADAM-10, 17, ADAMTS-1などのネットワークについて研究中である。本研究では、NEPの発現上昇がアミロイド調節だけでなく、痛みのコントロール、血圧調節などにも関わりがあることがわかり更なる研究継続、国内外での発表、論文発表を行っていく予定である。
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Research Products
(6 results)