2016 Fiscal Year Research-status Report
歯周炎発症におけるNLRP3インフラマソームの関与
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15K11396
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 弘隆 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (70346914)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯周炎 / インフラマソーム / 歯石結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
当講座ではLPS感作ラットの歯肉溝内へ高濃度LPSを頻回滴下することにより、アタッチメントロスを伴った明確な歯周ポケット形成が生じることを報告している(Yoshinaga et al, J Periodontal Res, 2012)。このラット歯周炎モデルではE. coli LPSをルイス系雄性ラット上顎両側第一臼歯歯肉溝内に、マイクロシリンジを用いて毎日滴下し(計20回)、屠殺後病理組織切片を作製、観察することにより、形成されたポケット内、接合上皮内に多数の好中球浸潤が確認されている。このモデルを用いて、LPSと同時にHApナノ粒子(150 nm)懸濁液を歯肉溝内に滴下し、形成された歯周ポケット中に浸潤してきた好中球のインフラマソーム依存的なIL-1βの産生を確認した。20回の滴下後、単位面積辺りの炎症性細胞浸潤数やIL-1β陽性細胞数は、LPSのみを滴下した実験群より増加する傾向にあり、HAp結晶を取り込んだ好中球が歯周組織の炎症拡大に影響を及ぼしていることが示唆された。またこのLPS感作ラットの歯肉溝へLPSを滴下するラット歯周炎モデルに、ストレプトゾトシンを投与してⅠ型糖尿病を発症させた新たな糖尿病ラット歯周炎実験モデルを作製した。このラット糖尿病歯周炎モデルは従来の歯周炎モデルと比較して炎症性細胞浸潤と歯槽骨吸収が拡大していることが示され、糖尿病の病態が歯周組織破壊に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯周炎の全身的なリスク因子の一つに糖尿病があり、糖尿病患者の歯周炎罹患率は健常者の2~3倍で歯牙喪失率も高く、これは糖尿病の創傷治癒遅延や易感染性によるとされているが、そのメカニズムは完全に解明されていない。 現在当講座のラット歯周炎モデルにストレプトゾトシンを投与してⅠ型糖尿病を発症させ、HApナノ粒子(150 nm)懸濁液を歯肉溝内に滴下して歯周ポケットを形成させることにより、糖尿病に罹患した新たなラット歯周炎実験モデルを作製している。健常ラットと糖尿病ラットの歯周ポケット形成および歯周組織破壊の程度の相違を検討中であるため、若干遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット腹腔内へストレプトゾトシンを投与(70mg/kg)してI型糖尿病を誘発させる。その後過去の方法と同様に、LPS感作ラットに高濃度LPSとHApナノ粒子懸濁液を歯肉溝内に20回滴下し、糖尿病ラット歯周炎モデルを作製する。屠殺後病理組織切片を観察して健常ラットと糖尿病ラットにおける歯周ポケット形成時のインフラマソーム発現の相違を比較検討することにより、糖尿病が歯周炎発症に及ぼす影響を検討する。 具体的には組織切片にHE染色、IL-1βに対する免疫染色を施し、単位面積辺りの炎症性細胞浸潤数とIL-1β陽性細胞数を計測し、糖尿病が局所インフラマソーム発現に及ぼす影響を観察する。
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Causes of Carryover |
当初平成28年度に予定していたノックアウトマウスを用いた実験が持ち越され、培養器具やELISAキットを購入しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫染色キット、細胞培養用試薬、ELISAキット、プラスチック器具の購入に充てる予定である。
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