2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔アンギノーサスレンサ球菌による深部感染症の発症機構の解析と宿主リスク評価法
Project/Area Number |
15K11421
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山口 泰平 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80230358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 一成 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (70332898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 予防歯科学 / 口腔細菌 / 日和見感染 / レンサ球菌 / 膿瘍 / 化膿性病変 / 線毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:口腔アンギノーサスグループレンサ球菌は基礎疾患を有しているヒトでは時として肺炎や脳、肝臓の膿瘍をひき起こす。感染の成立には宿主との定着が必須である。我々は以前に表層線毛を介してヒト唾液凝集素と結合することを示したが、同時に分子解析の結果から本線毛の先端の成分であるチップタンパクが臓器との付着に関与すると考えている。本研究の第1の目的:組換えチップタンパクを作成することで宿主側の標的分子を同定して感染機構を解析する。第2の目的:実際の患者さんから分離した菌株について表層線毛を含めた遺伝子診断を行い、主要な病原因子を特定する。第3の目的:これらの病原因子は菌株間で差があり、感染感受性を左右している。ヒトの口腔内検体を用いて主要病原因子を持った常在細菌のスクリーニング法を開発、実施することでリスク評価を行う。この成果としてハイリスク者に対して、より積極的な予防対策が可能となる。 平成27年実績 菌体表層の付着物質Saf2の全長の同定:使用するインターメディウスレンサ球菌の線毛遺伝子であるsafクラスターは既に同定済である。この中でSaf3はコアタンパクであることが分かっているので、もうひとつの細菌細胞壁結合配列を持つSaf2(AB326213)に注目した。一方で既報の他菌種の情報からsaf2は既知の部分よりも上流にORFが約2kb伸びていることが予想された。このため、PCRにより全長を増幅して遺伝子を同定した。この結果、株間で長さの違うsaf2が機能していることが明らかになり、病原性との関わりが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、今回注目しているsaf2クラスター下流にもう一つ未知のORFがあるものと思っていたが、解析により、それは存在しないことが明らかになった。一方で、既報のデータベースと照合したところ、saf2は我々が考えていたよりも約2倍の長さがあり、上流に伸びている報告があったため、PCRでの確認作業を実施した。その結果、株間でバリエーションがあることが判明した。これは当初の計画で、口腔常在株と深部膿瘍分離株では性質が違うのではないか、という我々の仮設を一部示唆する内容であった。Saf2は宿主の標的組織への付着、感染成立に関与していると考えており、このバリアントの性質の差が今後、注目すべき焦点になる。次にリコンビナントタンパクを作成して標的物質を探すことになるが、パイロット実験として元の菌株から精製した線毛を用いてアフィニティカラムを作成してマウス肝臓抽出液中の親和性物質を同定したところ、肝臓に特異的なミトコンドリア酵素が同定できた。この結果を支持する結果がリコンビナントタンパクで得られることを期待している。このため、基本的な進め方に問題はないものと思われる。現在、問題なのが、リコンビナントsaf2の精製方法で、以前の実績から発現自体はうまくいっているものの、精製時に通常のニッケル結合法ではうまく回収できないようである。この点、工夫が必要である。このタンパクができた段階で、マウスを宿主として特異抗体を作成して菌体表層での局在や、結合試験の詳細な解析を予定している。これらはsaf3タンパクで実績があり、問題はないと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、saf2の遺伝子情報と、親株のDNAを基にして組換えタンパクを作成する。方法は標準的な大腸菌を用いた系を用いる。Saf3で作成した実績があり、問題はないものと思われる。発現した組換えタンパクは標準的なヒスチジンタグを使って精製する。 Saf2、Saf4タンパク質に対する抗体の作成:精製タンパクはウサギ、あるいはマウスに数回皮下注射して抗体を作成する。また、ヒスチジンタグに対する抗体を用いることで、より簡便な実験系が使える可能性がある。 Saf2、Saf4の形態上の同定:作成した抗体を用いて免疫染色法にてSaf2、Saf4の局在を確認する。方法として電子顕微鏡による免疫金染色法を予定している。本法は学内の中央研究施設への委託を予定している。Saf3で実績があり、抗体の特異性さえ問題なければ上手くいくはずである。うまくいかなかった場合の補助的な方法として免疫蛍光染色法も実施する。 感染宿主の標的物質の同定:組換えSaf2-4タンパクを合成樹脂ビーズに化学的に結合したアフィニティビーズを作成する。マウスの各臓器を摘出して溶解液中ですり潰すことにより抽出液を調整する。先に作成したビーズにより結合物質を精製する。得られた物質は質量分析やアミノ酸配列によりデータベースと照合して同定し、標的物質とする。これらは確立された方法である。この段階は本課題の主要な部分であり、うまくいかない場合は、免疫学的方法など、いつくかの方法を試す予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進行具合から研究初年度に購入予定であったバイオシェーカーを購入していないことによることが大きな理由であり、次年度に伸びているだけである。基本的な研究の進捗状況には大きな問題は起こっていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、基礎データを取得中であり、準備が整いしだい、備品購入、実験の運びである。
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