2016 Fiscal Year Research-status Report
歯科法医学的個人識別における高度変性資料への対応を目指したDNA多型検査法の開発
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15K11455
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
水口 清 東海大学, 医学部, 客員教授 (00133380)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高度変性DNA / ミトコンドリアDNA多型 / Y染色体DNA多型 / X染色体DNA多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は特に高度に変性した資料からのDNA多型検査を目的とした研究であるが、実際の応用としては主として戦没者遺骨のDNA鑑定に応用することを考えて進めてきた。しかし、28年度には実際の法医鑑定でも有用性が極めて高いことが再確認できた。(1)歯や骨からのコンタミのないDNA抽出法を検討してきた過程で、段階ごとに得られた試料から抽出されるDNA量とその性質が比較できることが分かった。これは、資料に適したDNA抽出法を検討するために役立つ。(2)日本人に適したmtDNA多型領域を2回のmultiplex PCRで検出可能なシステムを検討してきたが、実際の鑑定において、かつての認識では多型検出は困難であろうとされていた高温度下に置かれた焼骨においても、追加手段を加えることでmtDNA型を検出することができた。また、実際的変性試料として、毛髪を試料の1つとして用いてきたが、毛髪は先端に行くほど検出効率がばらつく可能性を示唆する結果が得られ、微量な変性試料からのミトコンドリアDNAの検出効率とPCRの関係を考えるための材料として適していると考え、現在比較検討を進めている。(3)16-locusのY-STRからY-SNP系統を推測するためのコンピュータープログラムを作製してきたが、本システムを多集団のデータベースとの比較に応用すると、近似したY-STR型の由来を探しだす目的に応用可能で、由来不明の混合試料にアフリカ系の対象者が混合されている可能性を見出すことができた。本法は法医鑑定への応用でも極めて有用であることを再確認した。(4)X-STR haplotype研究のとしては、前述の事例の焼骨と共に発見された組織片様の焼損試料の一部から、常染色体検査では証明できなかった、父親が異なると思われる姉妹と男兄弟との関係を証明した。以上の如く本研究は一般法医鑑定でも大いに役立っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の変性試料のデータは論文作製中であるが、その他Y 染色体多型、X染色体多型、ミトコンドリアDNA多型に関する論文などは、一部の確認や論文に必要な図表などの作成段階にあり、順次進めていくつもりである。28年度は当該年度の成果に示した如く、本研究の応用に極めて適した難しい鑑定にかなり時間をとり、途中で研究のまとめが遅延した。しかし、鑑定の中で新たな成果が含まれたため、基本的な本研究の目的に沿った研究全体としては本研究の有用性を示すことができる広がりが出たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアDNA多型、Y染色体多型、X染色体多型などのデータについては本研究の当初の計画にほぼ即した内容の論文を作製する予定であるが、一部については28年度に依頼された鑑定が本研究の実際的な応用に沿った困難な鑑定の重要なケースであったため、研究期限と裁判の進展度合いに合わせて、29年度に技術的な内容の発表をしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
28年度は研究も進めてきたが、時間のかかる鑑定にとられた時間もあった。しかし、全体としては研究が進んできているため、必要な研究試薬も消費されてきており、次年度の研究計画を考えると必要範囲内の額と考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
X染色体多型、およびY染色体多型の研究のため、作製するための蛍光試薬と検査検体数増加によるキットの購入、硬組織からのDNA抽出のためのキットや特殊器具、試薬代などに加え、論文投稿のための費用に使用する予定である。
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