2015 Fiscal Year Research-status Report
遺族感情に配慮した歯科的個人識別(身元確認)システムの構築
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15K11458
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
岩原 香織 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90434141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都築 民幸 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (40120696)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯科検査 / 強制開口 / 開口器 / 死後資料採取と保管 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は「歯科的個人識別における歯科の専門性を活かした、確実な検査およびその記録と保管」を目的とし、適切な検査を行うための検査機器の開発・改良、それを用いた正しい検査方法の啓発、採取資料の保管方法の検討を行った。 遺体の尊厳と法令に基づき、遺体を傷つけることなく、確実な検査を行い、記録を残しておくための第一ステップとしては、遺体の死後変化等の状況に応じた強制開口が必要になる。しかし、多くの歯科医師会等では、開口器を準備していないもしくは生体用を使用しているため「口腔内挿入部が厚く入りにくい」、「力が入れづらい」、「1クリックごとの開口幅が大きすぎる」など、簡易に安全な操作で開口できるとは言い難い現状があり、それらを理由とし、検査の省略が行われていることも確認できた。これらの問題点を改善し、確実な開口を行い、適切な資料を採取し記録に残すため、遺体検査用として比較的使用しやすいとされた開口器(ローゼルケーニッヒ型)の口腔内挿入部の厚さ、形状、開口器の大きさ、支点部の位置、ロック部の構造などに改良を加えた。顎模型で滑落防止形態の検討を、力量測定機で操作時荷重の測定を行い、試作品の改良を重ねた。最終的な開口器の形態は、口腔内挿入部厚さ1.7mm、1クリック毎の開口幅を3.4mmとした。この改良により、開口荷重は既存の約2倍に増加した。しかし、間違った使用法により、歯を損壊させてしまうこともあるため、正しい使用法の資料作成および、研修会等での啓発活動を行った。 また、採取した画像情報を歯科的個人識別に有用に活用するため、画像提示用テンプレートを作成し、歯科医師会等で使用してもらった。以上の検討から、死後資料採取の重要性、画像情報の採取の困難さを理解できたという意見がある一方、作成が煩雑であるなどの意見も聞かれ、今後のさらなる研究課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開口器の評価および啓発活動において、直ちに遺体を用いて検証することは困難なため、模擬遺体での検証を計画していた。この模擬遺体には、遺体の死後硬直状態を再現するため、強制開口が行え、開口器の間違った使用方法により歯が脱臼する等の機能の付与を企図した。この機能の実現のために、模擬遺体製作に時間を費しており、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、歯科的個人識別に有用な所見を、歯の残存状態、年齢、性別等との関連を含め探求する。この結果は、確実な死後検査実施および画像資料採取の重要性を認識させられるだけでなく、根拠に基づく照合・異同判定法の確立につながり、平時のみならず、災害時でも、遺体を正しい遺族へかえすことに寄与すると考える。画像情報の活用を含め、研究結果は遺族のグリーフケアにもつながることを啓発していく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果である開口器の評価および画像提示用テンプレートや検査機器の正しい使用方法の啓発活動において、模擬遺体での検証を計画していた。それらを行うために模擬遺体の機能付与の面で、製作期間が想定以上にかかっており、模擬遺体の費用を支払っていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
模擬遺体製作の遅延に関しては、すでに試作段階に入っており、平成28年度の研究成果である歯科的個人識別に有用な所見の付与も企図している。
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