2015 Fiscal Year Research-status Report
発話機能の定量的特徴に基づいた高齢者の口腔機能向上プログラムの開発
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15K11461
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
原 修一 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (40435194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 宏子 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (10183625)
山崎 きよ子 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20331150)
森崎 直子 近大姫路大学, 看護学部, 教授 (30438311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高齢者 / 発話機能 / 健康関連QOL / 音響学的分析 / オーラルディアドコキネシス / 未処置歯 / 横断研究 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は基礎的検討として、以下の2検討を実施した。 1.高齢者の音声と健康関連QOLとの関連性の検討:介護施設に入所する高齢者61名(平均年齢82.1±8.3歳)を対象とし、SF8 Health Survey(SF-8)日本語版による健康関連QOLと音響学的分析による音声機能との関連性を明らかにした。年齢を共変量とした共分散分析による検討の結果、 SF-8の全体的健康観(GH)の低下は、基本周期変動指数(PPQ)、振幅変動指数(APQ)、Noise-to-Harmonic ratio (NHR)各値の増加と有意な関連性を認めた。また、活力(VT)の低下はAPQ値の増加との有意な関連性を、身体的サマリースコア(PCS)の低下はAPQとNHR各値の増加との有意な関連性を認めた。介護施設入所高齢者においては、音声の音響学的要因は、身体的健康状態に関連するQOLスコアと有意な関連性を示した。 2.地域住民におけるオーラルディアドコキネシス(OD)の2年間の変化に影響する要因の検討:対象は、2013年と15年の住民歯科健診にてODの測定と歯科健診が可能であった地域住民330名(平均年齢69.3±11.1歳)。2年間において、ODが1秒あたり1回以上の減少を認めた者は20%前後、2回以上の減少を認めた者が5%前後存在し、ODは口腔機能の低下を評価するために有用な指標であると考えられた。また、未処置歯の存在は構音の連続的な運動を拙劣化させる可能性があることが示唆された。 以上より、発話機能は、高齢者の口腔機能や健康関連QOLに影響する可能性がある。我々の先行研究(Hara, et al, 2015)では、コミュニケーション満足度は健康関連QOLと関係したことからも、今回の研究結果は、発話機能の向上を目的としたプログラムを口腔機能向上プログラムに導入することの重要性を示唆していると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、地域住民および介護福祉施設より得られたデータを用い、摂食嚥下機能・認知機能と発話機能との関連性について分析をしているところである。現在までに得られた結果を元に、2016年6月末までに、先行文献と本研究で得られた結果を基に、口腔機能向上プログラムを作成し、健常者を対象として試行・修正を行う。 口腔機能向上プログラムの実施対象となる地域住民および介護施設利用者の選定等については、現在市町村担当者や介護施設施設長等との交渉を実施中である。承諾が得られ次第、具体的な日程等を調整して、口腔機能向上プログラムを実施する。 以上については、平成27年度中に確実に行う予定であったが、28年度前期にずれ込んだため、「やや遅れている」との自己評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.音声データの音響学的検討と摂食嚥下機能・認知機能・生活機能との関連性の検討 老人福祉施設に入居する高齢者約80 名を対象に、口腔機能評価、認知機能評価を行う。質問紙で、健康関連QOLを調査する。横断的検討として、口腔機能の各パラメータと、健康関連QOL、認知機能との関連性を、統計学的に検討する。また、既に所得しているデータを用い、口腔機能の年間の低下率の算出や健康関連QOL、認知機能との関連性を縦断的に検討する。 2.口腔機能向上プログラム試案の構築と試験的実施 1) プログラム試案の構築:先行研究より、エビデンスがあり、かつ高齢者が理解しやすい発話機能や嚥下機能の訓練法を探索・抽出する。予備検討として、健常者約20名を対象に、統制群、選択した訓練法を実施する実験群に分け、3 ヶ月間試験的にプログラムを実施する。訓練前・後に、口腔機能評価を行い、訓練効果を検討する。実験群の対象者には訓練後、各訓練の疲労度・苦痛度を評価する。 2)プログラムの試験的導入とプログラムの修正:宮崎県内に在住する在宅高齢者20名を対象に、準備期・口腔期訓練のみ、咽頭期訓練のみ、準備期から咽頭期訓練の3 訓練期をランダムに設定し、1 日1 回、計15 セッション程度のプログラムを実施する。訓練前、セッション中間・全セッション終了後に、口腔機能の測定を実施する。全セッション終了後、プログラムの苦痛度・疲労度と、プログラム実施における自覚的効果、行動、問題点を、質問紙を用いて調査する。各機能の訓練前、セッション中間・後の各検査の数量的変化、および疲労度等の対象者の心理的状況を総合的に判定しプログラムを修正する。 3.研究を遂行する上での課題:2.2)のプログラムの試験的導入については、研究協力を依頼する市町村と十分な連携を取りながら、転倒等の怪我予防や、血圧、心拍数の変化等、安全に留意して実施する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が年度末最終にプリンタユニットを購入した際に、予想よりも料金が安く購入でき、残金が1,135円生じた。研究協力者の森崎は、分担金100,000円のうち旅費として姫路-横浜市内(日本老年医学会総会)往復に74,800円を使用したが、当初予定していた宮崎県内での音声等のデータ収集に必要な旅費に不足が生じることとなり、森崎は参加せず、25,200円が残金となった。以上より、合計26,335円が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の設備備品費内にタブレット端末の購入が入っている。予定では120,000円の計上をしているが、購入時に予算を超過する可能性もあるため、今年度に発生した次年度使用額は、タブレット端末の購入に充てる計画である。
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Research Products
(7 results)