2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K11489
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
小林 道太郎 大阪医科大学, 看護学部, 准教授 (30541180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真継 和子 大阪医科大学, 看護学部, 准教授 (00411942)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護倫理 / 組織倫理 / 理論 / 倫理研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、理論的研究と介入調査の双方を通じて、実践に利用可能な看護組織倫理の理論を提示することを目的としている。すなわち、(1)組織の倫理性:組織のどのような特徴(共有された行動パターンや考え方、コミュニケーションや意思決定の仕方)が、メンバーや組織全体の倫理的看護実践を促進/阻害するのか、(2)その変化:組織の倫理性に関わる諸特徴はどのようにして変化させられうるのか、を示すことを目指す。 計画初年度にあたる平成27年度は、介入調査として、A病院で看護師を対象とした約1年にわたる倫理研修(講義、アサーティブネス研修、倫理事例検討)を行い、対象者に質問紙調査(倫理的感受性、看護師目標達成行動、アサーティブネス)とインタビューを実施した。これらの結果から、研修により対象者にどのような変化があったかを、組織とのかかわりに焦点を当てながら検討する予定である。また比較のため、平成28年度にはB病院でも同様の研修と調査を行い、両施設の違いを検討していく予定である。 平成27年度には、研究成果として2編の論文を発表した。いずれも過去の病院倫理委員会活動に基づくものであるが、本研究のテーマである看護の組織倫理に関連の深い内容である。真継他「倫理事例検討会からみえてきた看護倫理教育上の課題」は、倫理委員会に出された事例とそのディスカッション内容から、それらの背後にある看護師たちの課題を取り出したものであり、倫理原則に関する研修等にとどまらず看護専門職者としての実践能力に着目した組織的な対応が必要であることを示唆している。小林他「病院看護部の倫理委員会における事例検討はどのように受け止められているか」は、インタビューをもとに、事例検討が看護師の考え方や行動にどのように影響しているかを具体的に示しており、倫理委員会のような看護倫理の改善に向けた活動のあり方を検討する際の手がかりとなりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、当初計画通り、A病院において約1年間にわたる倫理研修を行い、対象者に質問紙調査とインタビュー(1回目)を行った。主な研修内容は、看護倫理の基礎に関する講義、ロールプレイングを含むアサーティブネス研修、倫理事例検討である。研修および調査の実施に関して特に大きな問題はなく、おおむね順調に進行した。質問紙調査の結果についてはすでに最初の分析を終えており、この内容について平成28年5月の看護倫理学会学術集会に演題発表を申込み、採用された。インタビュー結果も現在分析中であり、追って報告をまとめたいと考えている。 当初計画に記載していた2施設目の研修・調査についても、対象施設の選定を終え、施設と連絡を取り看護部より実施の内諾を得た。引き続き計画に沿って研究を推進できる見込みである。 またこれと並行して、研究者らは、過去の病院倫理委員会活動への参加とインタビューに基づく論文2本をまとめ、発表した。これらは本研究のテーマである看護の組織倫理に関わるものであり、今後の理論研究に対しても重要な手がかりになるものと考えている。 理論研究については、英語・日本語を含めた関連書籍・文献の入手とそれらの内容の検討を順次進めている。組織倫理一般については、倫理学の他特に経営学の分野で近年議論が行われていること、また組織文化については経営学や心理学の分野で議論の蓄積があること等、今後さらに検討を進めていく上で基本となる見通しが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当初計画の通り、2施設目(B病院)の研修・調査を行う予定である。研修の方針と基本的な内容はA病院のときと同じであり、6月から研修を開始する予定でB病院看護部と調整を行っている。現在のところ特に問題なく進めることができると見込んでいる。研修は約1年かかるため、平成29年度に入って終了する。 B病院の研修と並行して、先のA病院の質問紙調査およびインタビューの結果をまとめ、そこから明らかになったことについて、平成28年度中に学会発表または論文発表する予定である。質問紙調査の結果については記述統計量を産出し、研修前後における変化をみる。また看護師の背景による差の比較、倫理的感受性と看護師目標達成行動の関連、倫理的感受性とアサーティブネスの関連について分析する。インタビュー結果は、質的帰納的に分析し、研修による変化の内容やその捉え方、促進/阻害要因等をみる。 さらにその後、B病院の研修・調査の完了をまって、A病院とB病院の比較検討を行う。両者の間の違いの有無とその理由が問題となるが、その一部は本研究の課題である組織要因の違いによるものだろう。 理論に関しては、平成27年度からの文献調査を継続するとともに、介入調査の結果を踏まえた解明を進める。最終的には、理論研究の結果と介入調査の結果とをつき合わせ、研究者間の共同討議により理論をさらに練り上げる。それらを整理して看護における組織倫理の考え方をまとめる。
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Causes of Carryover |
洋書を中心とする文献資料が当初想定していたよりも安く上がったため。 質問紙回答データ入力を業者またはアルバイトに依頼するための費用を平成27年度計画に入れていたが、実際の対象者数等からして依頼するよりも研究者自ら行った方がよいと判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文献資料は、研究の進展につれて必要な範囲がより拡大してくることが見込まれるため、前年度未使用額を合わせてこれに充てる。また講師謝金は平成27年度も当初計画より多かったが、平成28年度も同額かそれ以上になることが見込まれるため、前年度未使用額を合わせてこれに充てる。
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