2015 Fiscal Year Research-status Report
シミュレーティッドリアリティ臨地実習体験による看護実践過程教育システム開発
Project/Area Number |
15K11524
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
太田 浩子 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (30583934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 智史 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (70339547)
稲葉 竹俊 東京工科大学, 教養学環, 教授 (10386766)
松永 信介 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (60318871)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護教育学 / シミュレーション教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
看護学における臨地実習は、看護学の講義、演習により得た科学的知識・技術を実際の患者を対象に実践し、看護の統合や社会的価値を顕彰するという学習目標を達成する授業である。臨地実習の核になる実践の方法論が看護過程であり、対象の要求に的確に応えるために、問題解決の構造を取り入れた過程である。学生は、看護過程を展開するために少ない経験から患者をイメージする必要があり、机上における学習の困難さが生じている。そこで、より臨地実習に近い状況で、シミュレーション体験できる教育システム開発に取り組んでいる。平成27年度は、R.M.Gagneが、インストラクショナルデザインのなかで、学習課題分析と情報処理分析の必要性を述べていることから、学生の看護過程の学習傾向の分析とシステム導入に必要なコンテンツに関連する情報収集を行った。 看護教育の課題のひとつに臨床判断力の育成が挙げられている。臨床判断には、的確なアセスメントが必要であり、何の目的で、何をわかりたいのか、アセスメントの目的を明らかにし、ゴールが何かを見極めることが重要となる。しかし、分析した学生の傾向は、模擬患者の歩行状態や姿勢、疲れた表情など観察し援助が必要と漠然と捉える程度で、病態の理解の乏しさや観察力の浅さから、援助の具体性がなく、今後の予測もできていなかった。結果から、患者の訴えや症状から推論し、情報収集、アセスメントしたうえで援助を実行する力を育成する必要があると再確認できた。 一方、開発途中の学生の思考を可視化できるe-learningシステムは、設計者が回答をいくつか予測したうえで、学生の回答を導きだすシステムであった。学生の思考をシステム上どのように可視化していくか大きな課題であるが、学生が推論しながら学習を進めるために学生の回答を予測したうえで、学生が情報を自ら意図的に探すことができるシステム開発を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、開発するシステムに必要な情報収集と分析、シナリオ作成とコンテンツ構成としていた。倫理審査を終了し、情報収集、分析のなかで学生の傾向やコンテンツ構成に必要な方向性は見出しているが、シナリオやコンテンツ構成まで完成に至っていない。その要因として看護過程の講義演習における学生の指導に時間を要し、シナリオに導入する事例についての検討が必要になったことがある。初学者の学生が学びやすい事例は、経過が遅い慢性期の事例であるが、所属機関の学習の進度が一部変更されているため、急性期の事例展開が必要になったことからシナリオを急性期で作成した。しかし、初学者には、急性期の事例のイメージが図りにくいため補足が多く必要となってしまった。開発する教育システムは、自己学習教材として開発するため、補足が多く必要な事例では、コンテンツに多くの機能が必要となる。そのため、事例の再検討と補足する内容の検討が必要となり、コンテンツ構成まで至っていない状況となった。一方、慢性期の事例について検討を行い、学生が観察し症状が視覚的にとらえられやすいこと、文献などから学習するポイントが多く得られることを考慮し、消化器系における疾患とすることとした。学習ポイントを整理し、学生が学習するプロセスを踏まえ、シナリオを作成し、修正しながらコンテンツを確定していく予定で進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、システム開発のための材料収集、模擬患者の映像やフィジカルアセスメントに必要な映像や音声などを収集し、開発に取り組む予定である。しかし、事例のシナリオとコンテンツ構成が確定できていないため、平成28年度は、前期において、シナリオ作成とコンテンツ構成を確定し、後期には、模擬患者の撮影など材料収集を計画している。後期は、研究代表者が担当する看護過程講義、演習が進行するため、俳優による模擬患者の協力を得て、撮影が進行する予定で調整が済んでいる。臨床に近いリアリティのあるコンテンツとするために、俳優による模擬患者以外にも、学習者目線での映像とし、直接コミュニケーションをとっているかのような映像や電子カルテを閲覧しているようなコンテンツを組みいれた教育システムとしていく。それらの材料を収集し、検討しながら開発を進めていく。開発に当たっては、平成29年度にかけて進める予定としており、撮影状況を踏まえながらシステム開発を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、教育システムに導入するための情報収集とコンテンツに導入する材料を撮影する機材などの購入を予定していた。しかし、シナリオ作成とコンテンツ構成が遅れているため撮影用機材の購入と模擬患者の謝金、電子カルテなどのイラスト作成のための謝金、テキスト分析用のソフトなどの購入を控えていた状況があり、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、シナリオとコンテンツ構成が確定する予定であるため、それに伴い撮影機材や画像編集用のビデオカメラやパソコンの購入および謝金、テキスト分析用ソフトの購入予定である。また、学生の学習傾向の分析には、平成27年度分のデータ分析が残っているためデータ入力のための謝金などに使用する予定である。
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