2015 Fiscal Year Research-status Report
がん患者用の共有型看護相談モデルを基盤とした意思決定支援システムの開発
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15K11632
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
川崎 優子 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (30364045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内布 敦子 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (20232861)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん看護 / 意思決定支援 / 療養相談技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、がん看護に従事している看護師(ジェネラリスト)が活用できる「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデル(以下モデルと表記)」を作成することを目的として、以下3点について取り組んだ。 1.がん看護領域における意思決定支援研究会(以下研究会)の開催:関西(7月5日、35名)、関東(8月8日、32名)の2箇所で開催し、意思決定支援に関する研究動向、現状、課題について共有後、ディスカッションを行った。今後の対策としては、システム整備(初診から継続した意思決定支援を行うための外来‐病棟間や多職種間の情報共有シート、医療者が意思決定支援の妥当性を評価するための指標、スクリーニングツールの活用方法など)、教育体制づくり(看護師自身が自分の価値観に気づくためのワークショップ、コミュニケーションスキルトレーニング、事例検討、プログラム内容の検討など)の必要性が明確になった。 2.モデル活用に向けた解説書の作成:ジェネラリストがモデルの具体的な活用方法について理解できるよう、基礎知識編(モデルの概要説明)と実践編(事例を用いてモデルの活用方法を解説)の2部構成とした。事例としては、意思決定支援場面として取り上げられる機会の多い、挙児希望の場合の内分泌療法、造血幹細胞移植、乳房再建術などの治療選択に関する事例。また、家族の意向が異なる、治療継続により家族の介護ができなくなるという状況下で葛藤を抱きながら治療継続に迷う事例、以上5事例を取り上げた。 3.第30回日本がん看護学会学術集会における交流集会の開催:交流集会(2月20日、241名)では、①②の成果をもとに解説版の普及を行った。参加者からは、モデルの発展性として多職種で共有することにより継続した意思決定支援を行うことができることや、モデル活用のためのトレーニングの必要性などが指摘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画からの変更点としては以下の2点である。 1.調査方法の変更 当初は、既存の「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデル(以下モデルと表記)」をジェネラリスト向けの簡易版へと洗練するために、ジェネラリストを対象に意思決定支援の現状について調査を行う予定であった。しかし、がん医療におけるジェネラリストの実践状況を把握しているがん看護専門看護師の方が、組織の中でジェネラリストがモデルを活用する可能性について幅広い視点から意見が聴取できると考え、がん看護領域における意思決定支援研究会(以下、研究会)に参加したがん看護専門看護師への調査へと対象を変更した。結果、がん看護専門看護師からは、ジェネラリスト向けの解説書に事例を追加することの必要性、意思決定支援システムおよび教育体制の整備に関する課題が明確となった。 2.モデルの適応範囲の拡大 研究会では、ジェネラリストにはモデル活用の解説版を作成することの必要性、学術集会における交流集会では、多職種間で意思決定支援を共有するためのツール開発の必要性が指摘された。そのため、最終的に開発する予定の「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデルを基盤とした意思決定支援システム」に、モデルの解説書、多職種間で意思決定支援を共有するための簡易版ツールを追加することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、前年度に作成した「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデル(以下モデルと表記)」の解説書をWeb上に掲載し、研究会や交流集会で明らかとなった課題をもとに、以下3点に取り組む予定である。 1.意思決定支援システムの整備:外来‐病棟間および多職種間で意思決定支援を共有するための簡易版ツールを開発する予定である。 2.教育体制の整備:意思決定支援の教育対象を、ジェネラリスト向けとがん看護専門看護師(OCNS)および認定看護師(CN)向けに区分して、関東(7月9日)と関西(8月6日)の2箇所で研究会を開催する。ジェネラリスト版の教育プログラムは、意思決定支援にまつわる知識提供と価値観ロールプレイ(治療しない選択をした事例、医療介入を拒否する事例などを用いる)で構成する。また、CNS、CN版は、講演(多職種による意思決定支援の現状、専門職間の意思決定に向き合うスタンスや役割の違いの明確化)、モデルの解説書や簡易版ツールの普及で構成する。 3.第31回日本がん看護学会学術集会における交流集会の開催企画:①②の成果をもとに研究成果報告および普及活動を行い、次年度の介入研究に向けた準備を行う予定である。 平成29年度は、前年度までの成果をもとに「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデルを基盤とした意思決定支援システム」を開発し、臨床応用に向けた効果検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初は、既存の「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデル(以下モデルと表記)」をジェネラリスト向けの簡易版へと洗練するために、ジェネラリストを対象に意思決定支援の現状について調査を行う予定であった。しかし、がん医療におけるジェネラリストの実践状況を把握しているがん看護専門看護師の方が、組織の中でジェネラリストがモデルを活用する可能性について幅広い視点から意見が聴取できると考え、がん看護領域における意思決定支援研究会(以下、研究会)に参加したがん看護専門看護師への調査へと対象を変更した。このような調査対象者の変更に伴い、必要経費の修正が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に開催した研究会や交流集会におけるヒアリングから、ジェネラリストにはモデル活用の解説版を作成することの必要性、多職種間で意思決定支援を共有するためのツール開発の必要性が指摘された。そのため、最終的に開発する予定の「がん患者の療養上の意思決定プロセスを支援する共有型看護相談モデルを基盤とした意思決定支援システム」に、モデルの解説書、多職種間で意思決定支援を共有するための簡易版ツールを追加することとした。これらの作成に関わる経費については、平成27年度の予算残額を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)