2015 Fiscal Year Research-status Report
がん患者・家族の主体的な生活習慣の立て直しを導く案内書の開発
Project/Area Number |
15K11645
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
三次 真理 武蔵野大学, 看護学部, 准教授 (80341535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん看護学 / ニューマンの健康の理論 / 生活習慣立て直し / 案内書 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の全体構想は、がん患者・家族が、再発や進行の予防をめざして生活習慣を見なおし、より好ましい生活習慣の立て直しに自ら取り組もうという意識と行動の転換を促進するような方略を探究し、それを医療施設内や地域社会に普及させることである。上記全体構想の一環をなす本研究の目的は、前々科研で開発した「がん患者と家族の生活習慣立て直し対話の会」支援モデルと、その活用を看護師らと試みた前科研実績から得た知見に基づき、がん患者・家族が自己の体験に潜む智慧を引き出して主体的に生活習慣の立て直しに取り組んでいけるような案内書を開発することである。今年度は、以下の3点について実施した。 1)前科研の成果を発表し、討議を通して、医療施設での取り組み拡大の推進に向けて、案内書が有効なツールとなっていくであろう点を確認した。2)本研究の枠組みである「健康の理論」の創出者であるニューマン博士と、案内書のデザインや方法論について討議し助言を得た。がん患者・家族の関心を引き付け、生活習慣の立て直しに積極的に取り組んでみようと思えるような案内書が備えるべき特徴や条件について話し合い、案内書のイメージを明確にした。3)前々科研で「生活習慣立て直し対話の会」に参加以後、主体的に生活しているがん患者から、活用している知識や考え方、また、それらを智慧に転換し、活用していくプロセスについて聞き取りを実施した。結果として、全員が知識に縛られることなく、自身の身体の声を聴き、自分に合った方法を見出して暮らしていること、ならびにその根底には、‘自分の健康は自分で守る’、‘自分の身体は自分でよく見極める’という認識があることが明確になった。案内書には、知識や方法の伝達のみならず、がんとの共生力を自ら高めていけるような内容を盛り込むことが必要であることが示唆され、これらを踏まえた案内書(案)の作成を次年度の課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、1)学会等の参加を通して情報収集と討議を重ね、本研究の意義を確認した上で、現実に即した具体的な実施方法を練り上げること、2)前々科研の参加者であったがん患者から、生活習慣立て直しの体験について聞き取りを行い、案内書の方向性を描くことであった。 学会参加のみならず、本研究の枠組みである「健康の理論」を創出したニューマン博士との討議の機会を得て、直接助言を受けることができたことから、理論的観点から研究の方向性を明確にすることができた。また、生活習慣立て直しの体験を持つがん患者の語りから、主体的な生活を送る上での智慧やその獲得プロセスについて、重要な情報を得ることができた。 これらの取り組みを通して、案内書作成の方向性を描くことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目標は、今年度描いた方向性に向かって、活用可能な案内書(案)を作成することである。 1)前々科研での取り組みである「生活習慣立て直し対話の会」に参加し、自分に適した生活習慣を見出して主体的に生きるようになったがん患者からの聞き取りを継続する。 2)上記を踏まえて、「がん患者・家族の主体的な生活習慣の立て直しを導く案内書(案)」を作成する。 3)中間成果をもって、ニューマン理論に基づく実践・研究を専門とするスカラーが集まる研究会に参加し、理論的な観点から意見交換を経て、さらに内容を練り上げる。 4)1)で聞き取りを依頼した参加者に、案内書(案)の確認を依頼し、意見を得た上で、活用可能性ならびに修正の方向性について検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は、国外からの情報収集を目指して英国の施設訪問を予定していたが、本研究の基盤となる理論を創出したニューマン博士との討議が可能となったため、出張先を米国に変更することとした。出張内容の変更に伴い、渡航日程も短縮され、結果として経緯費の支出が抑えられえる結果となった。これを受けて、次年度の活動内容を見直し、目的達成に向けて必要な計画を加えることが可能となり、予算を増額したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・ニューマンダイアログ参加費(2 人)交通宿泊費:400,000 円×2 人=800,000 円、謝礼:50,000 円、・日本がん看護学会(群馬県)参加(4 人)、参加費:9,000 円×4 人=36,000 円、交通費:1 人10,000 円×4 人=40,000 円、・日本統合医療学会(山口県)参加(2 人)、参加費:12,000 円×2 人=24,000 円、交通宿泊費:1 人60,000 円×2 人=120,000、・研究協力者、参加者との参加型討議の会開催(協力者8 人、参加者7 人、年6 回開催)、体験に基づく情報と智慧の提供への謝礼:1人1回5,000 円 15 人×6 回=450,000 円、交通費:1 人2,000 円 15 人×6 回=180,000 円、テープ起こし:1 時間10,000 円 1 回2 時間×6 回=120,000 円
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