2015 Fiscal Year Research-status Report
性暴力被害者支援看護師を活用するための医療システムの構築
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15K11667
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Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
境原 三津夫 新潟県立看護大学, 看護学部, 教授 (30332464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
エルダトン サイモン 新潟県立看護大学, 看護学部, 助教 (30512066)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SANE / 性暴力被害者支援看護師 / 医療システム |
Outline of Annual Research Achievements |
SANE(Sexual Assault Nurse Examiner)は1995 年に米国看護協会において特定分野として認定されて以来、米国や、カナダを中心として活躍している。米国では約20年が経過し、SANE養成プログラムの検証や実務におけるSANEの活動の成果が検証されるようになってきた。病院内でのSANEの活動に関しては、全米で統一されているわけではなく、州あるいは病院ごとに異なっている。病院あるいは検察当局が公開しているSANEの活動状況に関して、インターネットを通じて資料を入手し分析を行った。 最初に分析した資料は、2000年12月にアメリカ合衆国司法省が発表した調査報告書”The Sexual Victimization of College Women”である。性暴力被害は暗数が多く、その実態は十分に把握されていないが、合衆国における女子大生の性暴力被害をアンケートおよび電話による聞き取り調査で検討した報告書である。わが国でこのような調査を行うことが可能であるか、社会文化的側面および倫理的側面に焦点をあてて考察を行った。 次に、SANE研究の第一人者であるRebecca CampbellがSANEプログラムの効用を概説した”The effectiveness of Sexual Assault Nurse Examiner (SANE) Programs”および”Handbook on Sexual Violenc”の中で、SANEプログラムが地域社会における性暴力の抑止に果たす役割を中心にまとめた”Changing the community response to rape: the promise of sexual assault nurse examiner (SANE) programmes”を参考にし、わが国の医療システムにSANEプログラムがなじむか否か検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SANEは1995 年に米国看護協会において特定分野として認定されて以来、米国や、カナダを中心として活躍している。米国では約20年が経過し、SANE養成プログラムの検証や実務におけるSANEの活動の成果が検証されるようになってきた。2000年以降、米国におけるSANEプログラムの問題点や課題について、検証結果が研究報告として発表されるようになり、今年度はそれらの分析を行い、わが国の医療システムにSANEプログラムを導入することが可能であるか、可能である場合は導入に際して発生する問題点やその解決法について検討を行った。 検討するための資料として、2000年12月にアメリカ合衆国司法省が発表した調査報告書”The Sexual Victimization of College Women”、SANE研究の第一人者であるRebecca CampbellがSANEプログラムの効用を概説した”The effectiveness of Sexual Assault Nurse Examiner (SANE) Programs”および”Handbook on Sexual Violenc”の中で、SANEプログラムが地域社会における性暴力の抑止に果たす役割を中心にまとめた”Changing the community response to rape: the promise of sexual assault nurse examiner (SANE) programmes”を取り上げ、わが国の医療システムにSANEプログラムがなじむか否かを検討した。米国におけるSANEプログラムの概要が把握し、具体的な活動内容およびその評価を知ることで、わが国の医療システムとの相性についてシュミレーションを行うことができ、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
SANEの業務のひとつに被害者の身体的診察や性行為感染症の検査・予防がある。わが国では通常産婦人科の医師がこれらを行っている。身体的診察や性行為感染症の検査手技はそれほど難しいものではなく、一定の研修を受ければ看護師が行うことに実質的な支障はない。性暴力・性的虐待の被害者が女性の場合は、男性の産婦人科医師に診察や検査をされることで、さらに精神的な負担を課すことになる。これを避けるためには、地域の拠点となる病院にSANEを配置し、SANEが中心となってこのような診察や検査を行うことが望ましい。わが国の場合、各都道府県に少なくても1医学部が置かれており、日常臨床における看護師の多忙さを考えると、マン・パワーに恵まれている医学部附属病院にSANEの拠点を設け、性暴力・性的虐待被害者が受診した際に、院内のSANEがいつでも対応可能なシステムを作ることが望まれる。SANEの活動の場として医学部附属病院を中心とするシステム作りに関して、厚生労働省および大学病院などわが国の医療政策を担う関係者の見解を分析する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はインターネット上に公開されている論文や報告書を入手し分析したこと、また成果を発表するための学会が例年秋に開催されていることから、研究成果のまとめが今年度の学会発表に間に合わず、次年度に発表を計画したことから研究費を持ち越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、今年度の研究成果を発表する予定であり、学会発表の準備および旅費、さらに学会誌に投稿するための費用として、今年度の残額を使用する予定である。
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